経済社会研究所

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No.53 論文要旨

開設初期の電力スポット市場における供給入札行動 (1.1 MB)

The Bidding Behavior of a Large Generator in an Electricity Spot Market

[キーワード]
スポット市場,オークション,大規模発電事業者, 需要

山本 芳弘 手塚 哲央

わが国では、2005年4月にスポット市場が開設される予定である。スポット市場では1価格1オークションで値決めがなされ、その値が価格指標として機能することが期待されている。ところで、これまでわが国の電力産業は10電力会社による地域独占体制であったため電力会社は圧倒的な供給力を有しており、スポット市場では電力会社が主要な供給者になると考えられる。そのとき、電力会社は十分な設備容量と豊富な経験を活かして自社に有利な入札を行う結果、スポット市場での価格が発電費用を十分反映したものとはならず価格指標として有効に機能しないという懸念ある。そこで、本論文では、開設初期のスポット市場のひとつの典型的な形として、大規模発電事業者1社と多数の小規模発電事業者がスポット市場で供給入札を行う状況をオークションモデルによりモデル化し、大規模事業者の入札行動を分析する。既存の大規模事業者は新規参入の小規模事業者の入札価格をある程度推測することが可能であるとの前提のもとで、利潤最大化による大規模事業者の入札価格を求める。モデル分析の結果、大規模事業者の入札価格は発電費用から乖離すること、小規模事業者の数が大きくなると大規模事業者の入札価格は低下すること、そして、小規模事業者のみでスポット市場の全需要を供給することができれば、大規模事業者の入札価格は発電費用により近い値になることが示される。したがって、スポット市場に新規参入企業を十分呼び込むことが、スポット市場での価格が価格指標として有効に機能するためのひとつの方策であることが明らかになる。

自然災害による経済被害推計モデルの開発
−経済メッシュデータと地域間産業連関モデルを用いた被害推計−
(1.7 MB)

Estimating the economic impacts of natural disasters using the economic grid data and interregional input-output model

[キーワード]
自然災害、経済メッシュデータ、地域間産業連関分析、メッシュ別経済被害、電力供給支障

山野 紀彦 梶谷 義雄 朱牟田 善治

大規模自然災害による企業設備や生産基盤インフラの損壊は、被災地域のみならず間接的に他地域の経済活動にも多大な影響を及ぼす。このため、経済被害の軽減を目的とした「減災」目標の設定、生産基盤インフラの耐震化戦略策定には、精度の高い直接被害と間接被害の把握が必要となる。ただし、高精度な経済被害推計を行うためには、公表データよりも詳細な地域区分で経済データが必要となる。このため本研究では、小地域経済統計(メッシュデータ)と地域区分を細分化した地域間産業連関表を推計し、独自の経済被害推計システムを構築した。このモデル開発により生産設備の損壊や電力供給支障による経済被害を街区・地区単位で定量化でき、今後の「減災」対策に関する数値目標の策定や被災後のインフラ復旧順序決定等に活用できる。

地域製造業の全要素生産性に関する計量分析−生産性収束に関する統計的検討−(984 KB)

Econometric analysis of the total factor productivity in Japanese manufacturing industry

[キーワード]
地域製造業、TFP、確率的収束

大塚 章弘

経済活動のグローバル化、産業空洞化といった地域経済が直面する現状を踏まえて、地域経済の競争力を高めるためには全要素生産性を向上させることが必要とされている。そのため、本稿では地域製造業を対象として全要素生産性を計測し、その現状と構造を分析した。その結果、1980年以降の期間では、全要素生産性が持続的に成長しているとともに、それは地域的な収束を伴っていることが明らかとなった。確率的収束モデルを用いた全要素生産性の収束に関する統計的検討によると、全要素生産性は地域固有の水準に収束しているという結果が得られた。

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