経済社会研究所

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No.54 論文要旨

設備投資の断続性−工具器具有形固定資産によるハザード分析−(1.5 MB)

Lumps in equipment investment of Japanese firms: a hazard analysis

[キーワード]
断続的な設備投資、(S,s)モデル、生存分析

嶋 恵一

本稿は、日本企業の設備投資のパターンについて、いわゆる"lumpy investment"仮説に沿っていくつかの分析を行った。具体的には上場会社424社の有形固定資産明細表における項目別増加額を用いて工具器具の投資変動を見たところ、そのパターンはどちらかといえばスムーズではなく散発的にスパイク(一時点に発生する大量の投資)を伴う。欧米の設備投資の断続性に関する実証例と同様の傾向が日本のデータからも観察され、このことから、サンプル対象によっては、凸関数を仮定した設備投資モデルよりも、非線形な特徴を考慮した代替的モデルの利用が望ましいことが示唆される。
よって本稿では、設備投資はスパイクと閑散期(スパイクの谷間)とによって性格付けられるという仮説の立場から、生存分析の手法を用いて投資スパイクの発生に関連するハザード関数の推定を行った。サンプル企業の異質性を考慮したセミパラメトリック推定からは、1)ベースラインハザードはデュレーションに依存して上向きであり、またスパイクの発生に対して、2)収益性と耐用年数とによる効果が見られた。

世界石油需給に関するシナリオの比較 (1.1 MB)

A Survey of Scenario Analyses of World Oil Demand and Supply

[キーワード]
世界石油需給、シナリオ分析、温暖化、資源制約

星野 優子

本稿では、最近発表された世界石油需給シナリオをサーベイし、そのなかから、今後の国際石油価格の中長期的な動向を見通すための視座を得る。シナリオのなかには、IEAのような石油消費者の立場から描かれたものもあれば、OPEC、ExxonMobilのような生産者の立場から描かれたものもある。したがって、シナリオ分析を通じて、単なる予測の幅を見積るのではなく、異なる立場の機関・専門家が、それぞれどのような将来のイメージを持っているのかを整理することは、混迷する世界石油需給の将来を見通す上で有益である。

日本卸電力取引所の取引動向の基礎検討−2005年上半期における重回帰分析− (1.4 MB)

Preliminary Study of Market Trend of the Japan Electric Power Exchange -Multiple Regression Model of Electricity Price in the First Half of the FY2005-

[キーワード]
日本卸電力取引所,構造方程式,市場投入量

山口 順之

本研究ノートでは,取引開始から約半年が経過した日本卸電力取引所(JEPX)の公開データを用いて,構造方程式に基づく約定動向の重回帰分析を行なう。構造方程式では,内生変数をJEPXの約定価格と約定量,市場投入量とし,外生変数を燃料購入費,電力需要などとする。推定の結果,買い投入量は,約定価格1円/kWhの上昇で,78万kWh(ピーク価格)から1千9百万kWh(24時間価格)程度増加すること,および売り投入量は系統需要の1千万kWhの伸びに対して15万kWh低下することなどが明らかになった。

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