経済社会研究所

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No.59 論文要旨

業務・産業需要家における デマンドレスポンスのポテンシャルと 省エネ意識の関係に関する一検討 (566 KB)

A Study of Relation between Demand Response Potential and Attitude toward Energy Efficiency of Commercial and Industrial Customers

[キーワード]
デマンドレスポンス、業務・産業用電力需要、省エネ、アンケート調査

山口 順之

 近年、欧米を中心にデマンドレスポンス(Demand Response, DR)が注目されている。我が国においても、省 エネと並んで、DRを将来の低炭素社会の構築へ向けての一方策としてとらえ、その可能性を評価することは 重要と考えられる。しかし、DRと省エネは、どちらもデマンドサイドマネジメントの一種ではあるものの、それ らが両立するものなのか、排他的なものなのか、十分に明らかになっているとは言えない。
 本論文では、わが国の電力消費量の約3分の2を占める業務・産業需要において、省エネへの態度が、 DRにどのような影響を与えるのかについて、DRプログラムに関するアンケート調査により明らかにした。そ の結果、「自動制御を行う仕組みを設けている」、「運用ルールを取り決め、手動で対応している」、「従業員 全員に心がけるよう徹底している」といった、最大需要電力に注意を払っている需要家は、負荷削減率が高 いことが分かった。 また、オフィス・事務所では、無償の省エネ診断の負荷削減率は高いが、実施事業所は 少なめであること、工場における有償の省エネ診断と、小売店舗における省エネ推進体制の組織・活動も負 荷削減率が高いが、実施事業所は少ないことが示された。

ヒートポンプ給湯器の昼間運転による 太陽光発電逆潮流量の抑制効果に関する一考察 (404 KB)

Effect of Reducing Reverse Power Flow of Residential Photovoltaic Systems by Day-Time Operations of Heat Pump Water Heaters

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太陽光発電、逆潮流、ヒートポンプ給湯器、昼間運転

杉原 英治  畑遼 太郎  佐伯 修  舟木 剛

 将来的な太陽光発電の大量導入を想定した場合、電力系統への影響を軽減する手段の一つとしてヒート ポンプ給湯器の昼間運転が期待されている。本論文では、太陽光発電を設置した住宅において、ヒートポン プ給湯器の運転を夜間から日中にシフトすることによって、逆潮流量をどの程度減少させることが可能であるかを評価する。 特に、本研究の特徴として住宅用エネルギー消費量および全天日射量の実測データに基 づき、給湯消費量の季節変化およびPV発電量の日変化に着目して年間、月毎、日毎で逆潮流の変化を評 価する。試算の結果、今回対象としたデータでは理想的な条件のもとで、年間PV発電量(約3200kWh)のうち、 約1000〜2000kWh(PV発電量の約40〜70%)が系統へ逆潮流量する結果となり、これに対して各世帯の給湯 需要実測データに基づくHP給湯器の電力消費量(昼間運転時)は年間450〜700kWh(PV発電量の約15〜20%)に達する結果となった。 検討したHP昼間運転を導入することによって年間の逆潮流量、特に冬季の逆 潮流量を大きく削減できる可能性があることを示した。

配電系統における電圧維持制御のための 分散電源連系料金と報奨金制度の検討 (545 KB)

A Study on Economical Incentive for Voltage Profile Control by Distributed Generators in Distribution Network

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配電系統、分散電源、電圧分布制御、系統連系料金、インセンティブ

辻 隆男  坂本 憲一  大山 力  橋口 卓平  合田 忠弘  進士 誉夫  辻田 伸介

 エネルギー・環境問題の解決に向けて、我が国では大量の太陽光発電の導入が国策として推進されつつ ある。太陽光発電の導入量増加に伴う影響の一つとして、配電系統における電圧上昇問題が挙げられる。電圧適正化の方策として、系統連系インバータの無効電力制御機能の活用が考えられるが、これを実現するためには需要家に適切なインセンティブが付与される必要があり、その制度化を慎重に検討する必要がある。
 著者らはこれまでに、電圧上昇に寄与する分散電源所有者に対して「系統連系料金」を課金し、これを原資として、電圧適正化に貢献した需要家に報奨金を与える制度を提案してきた。しかし同方式ではインバー タの「空き容量」に対する考察がなされておらず、また無効電力制御が配電損失低減に寄与する効果も考慮 されていなかった。そこで本稿では、上記の影響を考慮できるようなインセンティブ制度を提案する。
 提案方式は24ノードから成る配電系統モデルを用いて検証され、各分散電源所有者に対して公平な資金配分が達成される結果を得た。

大規模太陽光発電システム実証研究
−系統安定化技術および各種太陽電池モジュール特性評価について−
(956 KB)

Demonstrative Project for Large-Scale Photovoltaic Power Generation System -Grid Stabilization Technology in Power Conditioning Subsystem and Characteristic Evaluation in Various PV Modules-

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太陽光発電システム、系統安定化、パワーコンディショナ、 太陽電池モジュール、ライフサイクルアセスメント

島陰 豊成  工藤 満  小西 博雄  宮田 博昭  伊藤 雅一  植田 譲

 太陽光発電(PV)システムの導入量拡大に対する期待が国内外において年々高まっている。本稿では、 PVシステムを取巻く状況と合わせて、山梨県北杜市で実施している大規模PVシステムに関する実証研究に おいて開発した大容量パワーコンディショナ(PCS)による系統安定化技術と各種PVシステムの特性評価に ついて述べる。
 PCSの系統安定化技術においては、PVシステムの出力変動に起因する電圧変動のみを抑制する電圧変 動抑制機能により、PVの出力変動に起因する電圧変動を0.2%程度に抑制できることを確認した。また、瞬時 電圧低下を試験的に発生させた際においてもPCSが運転継続できることを示した。さらに、交流電流高調波 において高調波ガイドラインの80%以下を各次数で達成した。
 各種PVシステムの特性評価においては、ライフサイクルアセスメント手法を用いてエネルギー投入量、エ ネルギーペイバックタイム、二酸化炭素(CO2)排出量およびCO2排出原単位を各種PVモジュールごとに明ら かにした。また、実運用環境における発電特性の評価を行い、各種PVシステムにおけるシステム出力係数 や各種損失要因を明らかにするとともに、それら特性を総合的に評価する指標を示した。

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