原子力発電のライフサイクルCO2総排出量(速報値)について

平成13年 7月10日
財団法人 電力中央研究所



 財団法人 電力中央研究所は、原子力発電方式のライフサイクル二酸化炭素(CO2 )総排出量について、再処理や高レベル廃棄物の最終処分までを含めて分析しました。
 今回の分析では、ウラン燃料の濃縮実施国を現状に合わせた上で、わが国で計画中の原子燃料サイクルが実施される場合を想定し、試算を行いました。
 その結果、原子力発電のライフサイクルCO2 総排出量は「22g-CO2 /kWh(送電端)」となりました。これは昨年3月に発表した「28g-CO2 /kWh」よりも小さな値となっています。




 電力中央研究所は平成12年3月に、電源別CO2 総排出量についての計算結果を公表しました(電中研ニュース338号参照。以下のURLでご覧になれます。

/research/news/pdf/den338.pdf)。

 この中で、原子力発電については、データが十分に得られなかったため、ウラン濃縮は全量アメリカでガス拡散法により実施すると想定し、使用済燃料は再処理しないと仮定して分析を行いました。

今回、わが国の現状と近い将来を考慮して、沸騰水型軽水炉(BWR)について再推計を実施しました。なお、加圧水型軽水炉(PWR)についても別途推計中で、早ければ8月にまとまる予定です。

 今回の計算は、1) 使用済燃料を再処理して利用するというわが国で計画中の原子燃料サイクルシナリオに基づいて、諸施設の建設、原料の採掘から発電燃料の製造、運用(発電)、再処理、放射性廃棄物の処分、廃炉まで、すべての過程を含む、2)ウラン燃料の濃縮を行う国を現状(アメリカ約7割、フランス約2割、日本約1割)に合わせ、使用済燃料は国内で1回だけ再処理する(ウラン新燃料を3分の2、混合酸化物燃料(MOX燃料)を3分の1利用)、という前提条件で行いました。

 その結果、原子力発電のライフサイクルCO2 総排出量は22g-CO2 /kWh(送電端)となることが明らかになりました。

  今回前回
  原子力発電     22g-CO2 /kWh     28g-CO2 /kWh  


 前回(平成12年3月)の公表値 「28g-CO2 /kWh(送電端)」は、ウラン濃縮(下図の[1])の全量をアメリカで行うと想定、計算しています。また、再処理など(下図の[2])の部分を含んでいません。

 今回の計算で、再処理、MOX加工、高レベル廃棄物貯蔵、高レベル廃棄物最終処分という四つの過程を新たに考慮したにもかかわらず、数値が逆に下がったのは、

1) ウラン濃縮を火力発電の割合が高いアメリカだけでなく、現状に合わせて、原子力発電の割合が高いフランスと、遠心分離法を利用しているわが国で実施するとしたために、濃縮時のCO2排出量が減少した。
2) 使用済燃料を再処理して再び発電に利用するとしたため、その分の濃縮が不要となる──からです。

07-10図

以 上   




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