財団法人 電力中央研究所

プレスリリース

2004・2005年度短期経済予測(2004年5月)
− 景気回復が家計にも波及、企業の好調は頭打ち −

平成16年5月24日
財団法人 電力中央研究所
 電力中央研究所は、最新の経済情報と電中研短期マクロモデルを用い、 2005年度までの短期経済予測(p.1)に加え、原油価格の高騰、 米国・中国経済の成長減速の日本経済への影響に関するシミュレーション分析(p.2) を実施いたしました。


<1.予測の概要>



 2004年1〜3月期の実質GDPは前期比1.4%増(前年比5.4%増) と8四半期連続の増加となった。内外需ともに堅調な伸びを示し、名目GDPも4四半期連続のプラスとなった。 輸出増を起点とした企業部門の好調に加え、期待先行ではあるが、 個人消費(前期比1.0%増)や住宅投資(同0.6%増)といった家計支出も堅調に推移している。 この結果、2003年度の実質GDPは前年度比3.2%増(名目前年度比0.7%増)と前年度実績の同1.1%増から成長を加速させた。

 ・総体的な経済活動水準を示す実質GDPについて今後を見通すと、 2004年度は前年度比2.6%増と堅調を持続するが、2005年度は同1.1%増と鈍化する。 2005年度にかけての日本経済は、企業部門の好調に家計部門の回復が加わり、 今年後半までは好調を維持するものの、来年度は設備投資の減少を主因に調整気味に推移することになる。

 需要項目別にみると、個人消費は、 雇用・所得環境が改善に向かうことから、2003年度の前年度比1.6%増のあと、 2004年度が同1.7%増、2005年度が同2.0%増と堅調を持続する。 その反面、設備投資や公共投資などの企業部門と政府部門の支出が景気の下押し要因として作用する。 2004年度の設備投資は企業収益の伸び鈍化を主因に同7.0%増と前年度の同12.4%増から伸びを低下させる。 2005年度は資本ストック調整の開始により同1.7%減と3年ぶりに減少に転じ、景気の下押し要因として作用する。 公共投資は、緊縮財政の続行により2004年度が同4.5%減、2005年度が同3.1%減と減少傾向が続く。 外需については、世界経済の成長減速による本邦輸出の鈍化と国内景気回復に伴う輸入の増加により、 2004、2005年度の外需寄与度はともにプラス0.2%ポイントと前年度のプラス0.9%ポイントから大幅に低下する。

 2004年度の消費者物価指数(総合)は、 賃金下落圧力が弱まるものの残存し、2003年度の前年度比0.2%低下の後、同0.7%低下、 2005年度は同横ばいとなりデフレの収束が視野に入るのは2005年以降となる見込みである。

 名目賃金は2004年度前年度比0.7%減と7年連続の減少となるが、 2005年度は同0.0%増と横ばいになる。完全失業率は2004年度4.8%、 2005年度4.3%と改善に向かう。

 (年度平均)は2004年度が110円/ドル、 2005年度が109円/ドルと横ばい傾向で推移する。 実質長期金利差の拡大による円安要因と累積経常黒字の積み上がりによる円高要因の綱引きとなるためである。

<標準予測要約表>
年度2003(実績) 2004(予測)2005(予測)
名目GDP(前年度比%)
実質GDP(前年度比%)
内需寄与度
外需寄与度
0.7
3.2
2.3
0.9
1.8
2.6
2.4
0.2
1.1
1.1
0.9
0.2
鉱工業生産指数(前年度比%)3.6 3.50.2
消費者物価指数(前年度比%)-0.2 -0.70.0
完全失業率(%)5.1 4.84.3
最長期国債利回り(%)1.1 1.51.6
経常収支(兆円)17.3 17.919.4
通関原油価格(ドル/バレル)29.5 31.627.7
円ドルレート(円/ドル)113.0 110.2109.4
米国実質GDP(暦年、前年比%)3.1 4.83.6



<2.シミュレーション要約>



(原油価格高騰の日本経済への影響)
 ・標準予測では、通関原油価格は、中東情勢の沈静化に伴い、 今年の秋口以降、緩やかに低下すると見込んでいる。 しかし、中東情勢の一層の深刻化による原油供給の減少を懸念する向きもある。 また、原油輸入が急激に増加している中国経済の過熱が続く可能性もある。 こうした事態が実現した場合、原油価格は標準予測以上に上振れすることになる。 ここでは、2004、2005年度の通関原油価格が標準予測に比べ50%上昇した場合の日本経済への影響を計測した。

 ・シミュレーション結果(下表(1))によれば、原油価格の標準予測比50%の上振れは、 日本の輸入価格を約8%押し上げ、企業物価を約0.4%押し上げる。 輸入価格上昇に伴う交易条件の悪化により購買力は低下し、国内需要は減少する。 この結果、名目GDPは標準予測に比べ1年目が約0.9%、2年目が約1.5%減少する。 実質GDPは1年目約0.3%、2年目約0.7%減少する。 なお、消費者物価は国内需要減少の影響を強く受け約0.1%低下する。

 ・日本経済の足どりがしっかりとする中で、 原油価格の上昇が短期に収束する場合には国内経済へのマイナスの影響は相対的に小さい。 しかし、価格高騰が長期に続いた場合は、国内民間需要の押し下げ圧力は徐々に強まり、 そのマイナス影響は無視できない。原油価格の動向は、 今後の日本経済を見る上で大きな下方リスクであり、注視する必要がある。

(中国・米国経済が腰折れした場合の日本経済への影響)
 ・中国経済の過熱抑制、米国経済の上振れ抑制を目的として、 海外の金融政策は引き締め局面に入りつつある。 標準予測ではこうした状況を踏まえ、予測期間の世界貿易数量(世界経済成長)は鈍化すると見込んでいる。 しかし、金融引き締めが行き過ぎた場合など標準ケース以上に世界経済の成長が鈍化する可能性もある。 ここでは、世界貿易数量が標準予測に比べ5%減少した場合(経済成長率が米国についてはマイナス2%ポイント、 中国についてはマイナス1%程度減速する場合に相当)の日本経済へのインパクトを計測した。

 ・シミュレーション(下表(2))では、 世界貿易数量5%の縮小は輸出数量を約1.8%押し下げる。 輸出の減少は国内生産(約0.3%減)を押し下げ、 企業の経常利益(約0.7%減)や家計の所得(約0.1%減)を落ち込ませる。 この結果、消費や設備投資など国内需要が減少し、実質GDPは1年目が約0.2%、 2年目が約0.3%標準予測に比べ減少する。

<シミュレーション要約表>
年度 標準予測 (1)原油価格50%高 (2)世界貿易5%減
20042005 20042005 20042005
名目GDP1.81.1 0.9(-0.9)0.5(-1.5) 1.5(-0.3)0.9(-0.5)
実質GDP 2.61.1 2.3(-0.3)0.7(-0.7) 2.3(-0.2)1.0(-0.3)
  民間最終消費 1.72.0 1.5(-0.2)1.4(-0.8) 1.6(-0.0)1.9(-0.1)
  民間住宅投資 1.61.1 1.6(0.0)0.4(-0.7) 1.5(0.0)0.8(-0.3)
  民間企業設備 7.0-1.7 6.8(-0.2)1.9(-0.4) 6.9(-0.1)-1.9(-0.2)
輸出数量指数 7.81.5 7.6(-0.2)1.5(-0.1) 5.9(-1.8)1.5(-1.8)
輸入数量指数 6.51.9 6.2(-0.3)1.0(-1.1) 6.0(-0.5)1.7(-0.7)
企業物価指数 0.0-0.1 0.4(0.4)-0.2(0.3) -0.1(-0.1)-0.2(-0.2)
消費者物価指数 -0.70.0 -0.7(-0.1)-0.2(-0.2) -0.7(-0.0)-0.1(-0.1)
鉱工業生産指数 3.90.2 3.6(-0.3)0.1(-0.3) 3.6(-0.3)0.1(-0.4)
全産業経常利益 6.32.1 3.9(-2.3)1.5(-2.9) 5.6(-0.7)1.8(-0.9)
名目雇用者報酬 0.61.0 0.4(-0.2)0.7(-0.5) 0.5(-0.1)0.9(-0.2)
世界貿易数量 6.54.3 5.9(-0.5)4.3(-0.5) 1.1(-5.0)4.3(-5.0)
通関原油価格($/b) 31.627.7 47.4[15.8]41.5[13.8] 31.6[0.0]27.7[0.0]
(注)単位のないものは前年度比変化率で表示。( )内は乖離率、[ ]は乖離差で表示。



詳しくは、 こちらの補足資料(PDF:148KB 全18ページ) をご覧ください。
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