財団法人 電力中央研究所

プレスリリース

西暦2450年までの地球温暖化を地球シミュレータで予測
〜超長期にわたる温暖化防止効果を検証〜

平成16年11月29日
財団法人 電力中央研究所
 財団法人・電力中央研究所(理事長 佐藤太英、東京都千代田区)は、文部科学省の「人・自然・地球共生プロジェクト」に参加し、「大気海洋結合モデルの高解像度化」を担当するなかで、地球シミュレータを用いて西暦2450年までの地球温暖化を予測した速報結果をとりまとめました。
 この研究は、大気中のCO2濃度を安定化させる対策が実施された場合でも、温暖化防止の効果が現れ、気候が安定化するまでには数百年から数千年もの非常に長い時間を要するのではないかという、IPCC第3次評価書(2001)で指摘された定性的予想に対して定量的に検証し、温暖化防止に役立つ科学的知見を蓄積することが目的です。
 2100年までの気候予測や気象予測については、同じく地球シミュレータを使って他の研究チームが実施し、順次結果が公表されています。しかし、本研究のようにCO2濃度の安定化を気候安定化と関連づけた研究は、超長期のシミュレーション計算が必要であり、計算科学分野のテーマとしても解決すべき課題が多く含まれているため、これまでに実施された例はありませんでした。
 本研究では、IPCCの特別報告書にある、2100年までの「経済格差縮小世界」シナリオ(A1B)と「環境持続可能世界」シナリオ(B1)の2種類をベースに、2100年以降にCO2濃度を安定化させる5つのシナリオを想定し、米国大気研究センターが中心となって開発し、当所が改良した全球気候モデル(大気海洋結合モデル)によってシミュレーションを行っております。
 「経済格差縮小世界」のシナリオ(A1B)では、CO2濃度の安定化(750ppm)がなされた後も気温が長期にわたって依然上昇し、その間に北極海の海氷が消滅することが懸念され、国連気候変動枠組条約第2条の条件(気候システムに"危険な影響"を与えない)に合致しない可能性が示唆されます。しかし、熱塩循環(深層海流)は減少するものの、氷河期のような急激な気候変化が生ずる可能性は少ないと予測されました。
 これらの結果は、IPCC第4次評価書(2007)のとりまとめにおいて学術的に貢献でき、京都議定書以降の長期的な温暖化防止の国際交渉に役立つことを期待しています。
 なお本研究は文部科学省から受託研究として、当研究所の環境科学研究所・丸山康樹上席研究員らの研究グループと米国の研究者が協力して実施したものです。


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※ 本件は、文部科学記者会、科学記者会、エネルギー記者会でリリースしております。

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