エネルギー未来技術フォーラム 「電力自由化時代の電気事業」

研究成果発表

需要家ニーズにもとづく電力自由化の評価

(財)電力中央研究所
社会経済研究所 蟻生 俊夫


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社会経済研究所の蟻生と申します。私からは、基調報告、そして先ほどの特別講演の福本様を受けまして、「需要家ニーズにもとづく電力自由化の評価」と題して報告させていただきます。

まず私の位置づけです。電力自由化といいますと、どちらかいいますと電力会社とか制度の話が中心になりがちです。しかしながら自由化というのは、まず何よりもお客様、消費者、事業家のため、そして社会全体のためというのが最も重要な視点であると思います。また自由化を議論する場合には、欧州、そしてアメリカ等が先進的な事例として紹介されており、ここではアメリカ、欧州の事例を参考に、需要家の視点から自由化を考えるというかたちにしたいと思います。そして最終的に、日本にとって自由化というものがどうあるべきか、基本的には需要家に対応して電力会社が期待に応えること、役割を果たすことが最終的に需要家にとって望ましくなり、そして社会全体にとってもよくなる。そういう視点でまとめていきたいと思います。

またここでは、一般電気事業者とPPSと分けてありますが、あくまでも需要家の視点で考えていきます。そして、厳密にPPS、一般電気事業者と分けるのではなく、電力会社と総称して呼んでいくようにして話を進めたいと思います。

まず自由化を考えるにあたって、評価項目について考えていきます。基調報告の教訓1にありましたように、電力は特殊な財というかたちが定着しています。それは電気がなかなか区別できないということです。そしてまず何よりも自由化の評価といった場合には電気料金、いかに安くなったか。自由化イコール電気料金の低下という議論がありますように、どちらかというと電気料金の部分が注目されがちです。しかしながら、ほかの商品のマーケティングなどを見てもわかるように、電気の特殊性を踏まえて評価項目を考えていくと、ここに信頼度、サービス、そしてイメージと四つがあります。すなわち、電気料金以外の評価項目も重要な要因として挙げられると思います。

私の報告では、最初に申しましたように欧州やアメリカの事例を参考に、まず需要家の評価の基準となるべき満足度について述べ、そして四つの評価項目である信頼度、電気料金、サービス、イメージの順に述べていきたいと思います。

まず需要家満足度についてです。先ほど福本様から経験に基づく詳しい話がありました。実は私もイギリスに何度か行っているのですが、エナジー・ウォッチの話もよく知っています。5月にイギリスに行っていろいろ議論していましたら、最近はむしろお役所のエナジー・ウォッチよりも、ここにあるようなuswitch.comが、もっとポピュラーでいいよと紹介されて、今日はこの話から紹介したいと思います。

これはイギリスの郵便番号、イギリスの場合はAとかWとかアルファベットが入っていますが、それを入力することによって自分のエリアにある電力供給先、料金メニュー、満足度、年間削減額、支払額と、先ほどの福本様のお話にもありましたが、電力会社によってかなりの違いがあることがわかると思います。これは無料で検索できますので、皆さんもぜひ一度試しに入力してみてください。すると、それなりにいろいろなサービスが出てくると思います。またここでのポイントとしては、この真ん中にありますように、需要家満足度がその紹介メニューの中に出てくることです。

これは満足度の順番でソートすることも可能ですので、私は満足度で電力会社を選びたいというニーズがあれば、それによって、たとえばアトランティック・エナジーでは、この810のreviewsというのは、810人が評価して満足と答えたという割合が70%あるというものです。この満足度の結果によって電力会社を選べる、そういうかたちがイギリスではできるわけです。


またこれはアメリカでも同様です。アメリカの場合は、一般家庭と同様に、ユーティリティ・ビジネス・カスタマーとありますので、事業所に対しても、これはJ. D. Powerという民間の市場調査会社が毎年満足度を調査して100を基準にしてランキングを出しています。地域ごとに自分の選びたい電力会社の満足度を見て、そして事業所も一般家庭も毎年この評価をもとに電力会社を選択できるかたちになっています。したがって、電力会社にとって需要家による満足度が選択の基準になりつつあることがわかると思います。

ここで日本の満足度を考えていきたいと思います。ちょっとポンチ絵的ですが、ここにあるのは、二つの満足度を挙げています。これまで電力会社は、どちらかというと、基本的には停電がないとか、事故がないという目的のもとで安定供給を中心に提供してきました。その結果として、ゼロでない、要するに不満がないという状態に対して、ずっと努力してきました。逆にこの右側の満足しているというのは、気づかなくなっている。たとえば停電がないこと、それはいいのですが、これは満足ではなくて、不満がないという状態になっていて、逆に停電がないことが結果として遠い存在になっている。いま自由化の世界で需要家が選ぶ時代においては、事業所の場合には基本的には不満でないうえに、満足している。たとえば価格が安いとか、顧客サービスが充実しているとか、イメージがよいとか、そういうさまざまな要因で満足してもらう、気づきを持たせることが大事なのではないか。

そしてわれわれも先ほどのJ. D. Powerとかイギリスの調査ではありませんが、やはり電力会社にとっては世論調査ではなくて、しっかりとお客様満足度、需要家満足度を調査する必要があると考えて、日本のみならずアメリカ、イギリス等まで需要家の調査を実施しています。本日は一番最近の調査として、アメリカの一般家庭、ここではあくまでもニューヨークとかペンシルベニアとか全面自由化を導入した州に絞っていますが、そういった調査と、先ほど福本さんも話題にしたイギリスの調査、そして比較の対象として日本の調査、ここでは日本の場合、一般家庭のみならず事業所の調査もしていますので、そのへんの結果についても今日は紹介いたします。また、さらにこういった定量的な調査だけではなく、最近、たとえばイギリス、ドイツ、フランスであれば、8件ぐらい事業所を対象に、実際にインタビュー調査を行っていますし、またこの9月、本当に最近ですが、7件ぐらいの事業所を対象に、私が一人でいろいろとインタビューをしてきました。このへんの結果についても今日は報告したいと思っています。

まず国内のアンケート調査に基づく満足度の結果です。ここでは最初に二つの満足度を紹介しましたが、「不満でない」というところで、満足、やや満足、どちらともいえない、要するにここでは5段階評価といって、満足度を五つの尺度で聞いて、そこで満足、やや満足を集計した結果です。ですから、ここでは不満とやや不満と答えた人以外の割合になっています。つまりこれは不満でない割合です。

そしてここでは、一般家庭、事業所については低圧、高圧、そして特別高圧の特高、PPS事業所は、実際にPPSにすでに移った事業所です。実際の件数はわれわれの調査では27件ほど回答していますが、その27件の平均値になっています。このような五つの種別でもって満足度を見たものがこれです。

そうすると見てもわかりますように、価格では若干劣るかもしれませんが、過半数のいずれの種別においても需要家が満足と答え、不満でないと回答していることがわかります。ただし、ここでやや満足、そして満足、要するに満足していると限定した場合にはこのような状況です。一気に状況が変わります。特にご覧のように価格、そしてサービス、PPSのイメージなども含めてかなり満足度が下がっていることがわかると思います。

実際に先ほど紹介したようなイギリスとかアメリカの場合、満足しているという場合にはあくまでもどちらともいえないを除いたものの満足度が中心になっていますので、日本の電力会社にとってこういった価格、サービスの面をいかに上げるかというのが大きな課題として挙げられます。これはいずれの種別においても重要な課題としていえるということがわかると思います。

また先ほど紹介がありましたように、どちらともいえないというのが結構大きな割合です。このちょっとした差をいかにお客様、需要家との接点で変えていくか、そういったところが需要家の満足度の向上において大きなポイントになっているというのが、この図を見てわかるとおりです。

先ほどの話は、どちらかというと一つひとつの満足度の絶対値ですので、ここではさらに全体の中でそれぞれの、たとえば電気料金と信頼度のどちらが重要かについて考えてみたいと思います。ここでは単純に、電気料金の安さ、そして供給信頼度の高さ、の2つのうちどちらがどれだけ重要ですかという質問を実施してみました。

これが今回、国内の一般家庭から事業所までの調査で出てきた結果です。これを見ると、右側の青いほうは、電気料金の安さよりも、われわれは供給信頼の高さのほうがより重要ですと答えた人が多いことを示しています。見てもわかりますように、ほとんどの需要家が電気料金の安さよりも信頼度が高いということを表明しています。

ちょっと別の話を2点ほど紹介しますと、似たような質問で、たとえば電気料金が半額になったときに、どれだけの停電時間の上昇が許せますかという質問をしてみました。そうすると半額、要するに1億円の電気料金が5000万円になったとしても、約4割のお客様が1分未満と答えています。別の数字で見ても、こういった4割の方が供給信頼度の低下を許せないというところからもわかると思います。

また最近の調査で、実はこれをドイツとかイギリスでも実施した結果によりますと、日本と似たような結果ですが、イギリスとドイツの場合、この真ん中のあたりの同程度というのが多くなっています。つまり、日本のほうが、イギリスやドイツと比べ、電気料金の安さよりも信頼度の高さの方が大きい、強い、そういう傾向がこういう調査からも明らかになっていました。

これは先ほど首席研究員の矢島の基調報告で紹介したものですが、電気料金と信頼度、それ以外にもサービスと電気料金、イメージと信頼度といったようなかたちで、四つですから4×3=12、6とおりの一対比較を行って、最終的にこのようなウェイとを出すことができました。これを見ることによって、要するに電力サービスに期待する要因、評価は、まずは何よりも信頼度、そして電気料金、イメージ、サービスといった順になっていることがわかると思います。

ここで、われわれは別の調査で実際の事業所の経費に占める電気料金の割合を調べてみました。そうすると、もちろん業種によって差がありますが、だいたい1%です。ですから経費の1%である電気料金をさらに安くするというよりも、むしろ全体にとって大きな影響を及ぼす信頼度をしっかりと維持することのほうが需要家にとって大きな要因になる。そういう意思決定がこういう回答にも表れているのではないかと思います。

また電気料金とサービスを比べてみた場合に、1割の電気料金の低下と1割省エネで削減することも同値です。もしかしたら最近の環境志向の高まりから、うちは省エネを1割ほど達成した、そのほうが需要家にとって大きな評価があるかもしれません。さらに自由化になると安全な供給先と契約したいということがあります。安定して供給できる事業者を見つける取引費用をいかに削減するかということが重要です。そういう面で見た場合、イメージがいいところ、知名度がいいところとは安心して契約できるといった個々の意思決定がこのような結果に反映していると考えられます。

そこでまず最も重要となる、先ほどの福本様の講演にもありましたが、信頼度について今日は見ていきたいと思います。

これは若干薄くしていますが、2003年8月14日のクリーブランドの4時半ぐらいの写真です。何となくわかると思いますが、これは北米大停電があった当時の写真です。これはご存じのように日本のエリアほどの非常に大きなエリアで、そして需要規模としては東京電力さんと同じぐらいの規模で停電が起こりました。このときに電中研では実際に停電を受けた需要家に対してかなり大規模な調査を実施しました。それぞれの業種に対してどれぐらいの停電時間があり、かつその被害が、たとえば売上げのロス、製品のダメージなどがどの程度あったかをより具体的に、詳細に調査しました。

これがその結果です。先ほども言いましたように、停電時間はまちまちですが、全体の平均停電時間は18時間ほどありました。そしてアメリカの場合、3時間から6時間ぐらいで一気に被害がほかの業種も含めて増えていって、この全体の平均値を出すと810万円ほど、要するに平均で18時間ぐらいのアメリカの大停電においては、1事業所当たり890万円ぐらいの被害があったことがわかりました。

これがもし日本であったらどうでしょう。先日、同じ8月14日に首都圏の大停電がありましたが、それ以上の規模で技術的に停電があるということはなかなか起こりえないというところです。またわれわれもそういう実態調査はなかなか難しいと思っています。ですからここでは先ほどの最初に紹介したような一般事業所へ、実は家庭もやっていますが、調査においてこのような瞬低、10分未満の停電があったとそれぞれの停電時間の幅を与えて、あくまでも営業時間に起こったというときにどれぐらいの被害があるかを推定して、予想して、回答してもらって集計したものがこれです。

まず瞬低ですが、その場合、化学とか電気機械で何となくイメージがつくと思いますが、数百万ぐらいのオーダーで被害が起こることがわかります。さらにほかのそれぞれの時間帯ごとに見てみますと、こんなかたちでアメリカの場合にはだいたい3時間ぐらいで被害が上がっていきましたが、日本の場合は10分から1時間未満、このあたりで一気に被害が増えていく。またある人から数字が間違っていませんかといわれたのですが、これはその前のグラフで見てもわかると思うのですが、アメリカと比べて0が一つ違っています。要するに、日本の被害がかなり大きいことがこの絵からもわかるかたちになっています。

実際、先ほどの18時間で810万円ほど被害があったという話をしました。それぞれの時間帯ごとに被害の状況がわかるわけで、それを集計していくと日本の場合、1時間から3時間未満の時間帯で被害があったときに、ちょうど北米大停電と同じぐらいの850万円ほどの被害があることがわかりました。これはあくまでもそれぞれの事業所が推計していますので、どちらかというと少し多めに回答しているのかなというところがあるかもしれません。ただし、そのへんを若干差し引いたとしても、被害の状況がアメリカに比べて非常に大きいことがわかると思います。

これはやはり先ほどの基調の報告でもありましたが、情報化社会とか、さらには日本の場合、さまざまな業種が電力に依存する社会になっていますので、そういった影響がアメリカ以上に非常に大きい。先ほどの福本さんのお話でもそうですが、日本とアメリカの状況が求める期待値、価値観が違いますので、そういうものを反映した結果ともいえると思います。

また、こういった被害の大きさは、それぞれの事業所の停電対策の違いにあると容易に想像されます。アメリカと日本、同様の調査で見てみた場合に、非常用発電機とかUPSの設置の状況が、日本とアメリカでかなり違っている。ですからこの結果として、大停電のようなものが起こった場合に、被害が非常に大きくなるという傾向があるというものです。

ちょっと余談になりますが、北米大停電のときに私は実際に米国に出向いていろいろインタビューを実施しました。かなりの事業所は非常用の発電機を持っていました。ただしあのときには先ほど紹介しましたように18時間とか1日とかの長い時間だったので、非常用の発電機があったとしても、まずはメンテナンスがうまくいかなくて動かなかった。だから結局損害が出たとか、さらには3時間を超えて、燃料のディーゼルがなくなって、結局止まってしまって稼動できなかったという失敗談などもいろいろと聞いています。あれだけの長時間の中では、アメリカでも相当の被害であったことが出てきています。

またこういった被害の対策を集計してみると、結論からいうと、日本とアメリカで比べてみた場合に、日本の事業所はこういった対策をしていないというのが過半数を占めていますので、先ほどの被害がかなり違うことが容易に想像されることになります。ですから原則として自己責任で信頼度対策をすることも考えられるわけですが、先ほどの福本様ではないですけれども、基本的にもともとのレベルが高いので、たとえば5000万円の非常用発電機を入れたとしても、結果的にずっと停電は起こらないなら、それが使われないことになります。そのため、一部の事業所を除き、それが費用対効果としてうまく働かない、つまり日米で大きな違いがあることがわかります。

ですから日本の場合の電力自由化の議論は、まず価値観という話もありましたが、アメリカと日本と、これは欧州もアメリカに近いようなかたちで停電がありますので、対策はアメリカと似たようなものですので、そのへんの違いをしっかりと踏まえたうえで制度を設計しなくてはいけないということがいえると思います。

ただし、本日、ここにお集まりの多くの方がお気づきのように、実はこの供給信頼度は、電力の自由化の中での選択要因とはなりえません。すなわち同じネットワークにつながっている事業所、いわゆるPPSとか東京電力さんにつながっている需要家にあっても、停電があった際には同じように停電します。ですから基本的には需要家は、電気料金、そしてここにありますサービス、そしてイメージ、こういったところで選択するかたちになるわけです。ですからいまの話は、まず自由化を議論するにあたっての大前提の信頼度をしっかりと押さえたうえで、そして次の電気料金とかイメージをしっかりと考えていく必要があると思います。

そこでいよいよ選択要因としての電気料金について考えていきたいと思います。まず電気料金の評価ですが、これについては基調報告のほうでかなり詳しく、いろいろなデータも出しましたので、私のほうからちょっと視点を変えて電気料金の評価を二つの視点で試みたいと思います。

まず一つ目は、大口需要家の評価です。よく電力自由化のメリットとかデメリットを議論する場合に、大口需要家はウィナー、すなわち勝者といわれることが多いと思います。そこで私はこの5月に、これはイギリスのグラスゴーの市役所ですが、ここには水道とか交通とかいろいろな施設がありますので、そういったさまざまな施設を持っている事業所や大学にそれらについてインタビューを行いました。

だいたい共通するのは、もともと購買を担当しているようなエンジニアが電力の自由化以降にそれを専門に担当しています。ですから1〜2名が電力の調達を担当するようになっています。といっても自由化の議論、電力の議論、これからあとにうちの栗原のほうから信頼度の話もしますが、これらは非常に難しい内容です。ですからなかなか一般にはエンジニアでも理解できない。というわけで、このようにエネルギー調達連合、コンソーシアムというものに加入して、そして電力を調達する手法がとられています。

ここにあるのは、実際、入会金1200ポンドですから、24万円ほど、そして1回の契約処理、要するに1件電力を決めるにあって、1000ポンド、20万円ほど払って、そして電力を選択しているという状況です。ただイギリスの場合は、前の特別講演にありましたようにいまビッグ6というかたちで寡占化が進んでいますので、格差がそれほど大きくなくなっている。そういうデメリットについても指摘しています。

またこれはドイツのアルミ工場です。ご存じのようにアルミは非常にたくさんの電気を使います。この施設でも年間に2TW/hを使うと話をしていました。これはもともと、自由化前はRWEから一括して、ある程度安く電気を購入していました。そして自由化以降も、やはり電力は非常にたくさん使いますから、これをしっかりと安定的に安く購入しなくてはいけません。そして、電力取引所から調達したり、電力会社と面会していろいろ購入したり、そういう取り組みを実施しました。

そして、いまでは1カ月に20種類以上、と言いましても、ほかにもいろいろな調達があるので、それほど多くないと担当者はおっしゃっていましたが、これぐらいの処理をするようになっています。ただし問題は、やはりこれまでと料金を比べてみると、もちろんいろいろな契約、交渉をしているので、全般的に市場よりも安くなっているかもしれませんが、自由化以前と比べたら電気料金のコストは大きく上がっていることでした。このへんにかなり不満を述べているのが印象的でした。

フランスはどうでしょう。フランスでも大口需要家はすでに自由化しています。ここでの話として共通で出てきたのは、事業所ですので単に価格で決めるのではなくて、まずは与信、安全性、健全性、そして安定供給などを踏まえて最終的に電気料金にもとづき1社に絞り込む。またこれはフランスのカルフールという大きなスーパーマーケットですが、やはり自由化に伴って市場料金の移行を決定しました。ただ当初は市場料金のほうが安かったのですが、いまでは規制料金に比べて市場料金が7割ほど高いという状況です。これが元に戻れないという状況ですので、結果的に、長期的に見るとむしろ市場料金のほうが規制料金よりも高くなってしまうという疑問を投げかけていました。このへんのフランスの制度については、来年の全面自由化を控えて見直される予定ですが、短期間ではなくて長期で見た場合の問題点が指摘されています。

またアメリカの場合はどうでしょう。ここではシカゴのトリビューンとかアメリカのデパート、これはニーマン・マーカスの写真です。ニーマン・マーカスは、日本でいえば三越みたいな全国に展開する高級デパートです。ここでは自由化にあたって、やはり専門の担当者が必要ということで、実はTXUエナジーという電力会社から新規に電力の購買を担当する担当者をリクルートしました。その方、1名が専門的に電力を担当するようになっています。

この担当者とずっと議論している中で出てきた言葉が非常に印象的だったので、皆さんにも贈りたいと思います。まず私は電力会社サイドと需要家と両方知っている。まず需要家にとって重要な視点は、やはり電力のマーケットをしっかりと知ることという、単純な話です。逆に電力会社の視点から見た場合、まずは自分のお客様、know your customers、カスターを知ることという話をしていました。電力会社が需要家を知っていると思ったら、実は需要家サイドから見たらそうではないですよ。ちょっと話が違いますが、インベスター・リレーションなども、株主の対応など実際によく知っている人が対応することで評価が変わるという話もありますので、このへんは改めて考える必要があるということを、ここで参考として挙げたいと思います。

最後に事例として、アメリカのマンハッタンにあるたくさんのビルと契約している不動産会社とか、米国の半導体の会社、工場などにもインタビューしてみました。ここではさまざまな契約があるわけですが、共通しているのは、まずはしっかりとコンサルタント、電気は非常にコストもかかるし、変動が大きいのでしっかりと専門的な分野の方に頼みたい。そしてテキサス・インストルメンツという工場であれば、実際に全米で展開するため、調達するために、今回の自由化に当たって調達を専門にする部署として8名ほど置いている。この8名の方が1年間ずっとかけて最終的に1社に絞り込むというかたちで取り組んでいます。

要するに、それぞれ欧米の需要家を見ると、自由化以降、電気料金の面でいろいろあるかもしれませんが、まずは何といっても調達のために、それなりにいろいろなコストを使っているというのが印象的なところです。

そこでまとめですが、最後の部分にあるように、自由化において電力会社も変わって、いろいろ提案してくれ、サービスも変わりつつある。でも自由化とはと考えると、要するにまだまだ自由化は否定しません、でも需要家の期待は電気料金の低下がありますので、そのへんからすると疑問を投げかける、そういうところが需要家の声の集約として挙げておきます。

こうした声の背景は、ここにあるように、これは基調報告でありましたものと同じ絵ですが、電気料金の水準が最近特に2000年以降、大きく上がっていることを反映しています。先ほどの大口需要家が電力会社に対して期待するサービスはどんなものか、いろいろインタビューしていると、だいたい共通するのは、とにかくこれから電気料金がどういう水準になるのかをしっかりと予測してほしい、これがあれば一番ありがたいという議論をしていました。

要するに、これからまだまだ上がるのであれば、いまのうちに10年、20年と長期で契約するのが得策でしょうし、逆に下がるのであれば、短期で契約して乗り換える。またずっとフラットであれば、先ほど言いましたようにいろいろな意味でコストを使っているのを簡略化して契約する。こういうさまざまな選択肢があるわけですが、そこで皆さん迷っているという状況になっています。

そういう中で特に大きな需要家に対しては、たとえばスポットとかいろいろな取引がありますが、こんなかたちで必要な電気の調達にあたって、20年、10年、5年、季節、スポットというかたちでさまざまな量を、さまざまな種別でもって契約して、そしてこれはたとえば複数の電力会社と契約して、そして必要な電気の量を調達する、こういう取り組みに変わりつつあります。もちろんこのためには、いわゆるポートフォリオとか金融ビジネスの手法を使いますので、事業としてもかなり大規模です。あるところは、こういう部署に5人ほど置いて、そこに専門に取り組む。逆に電力会社もこういうサービスを実施して、これを有料で需要家に提供するというかたちも出てきています。

ただし、こういうサービスを使用するのはかなり大規模な事業所ですので、中規模な工場等で利用するのはなかなか難しい。これはユーティリエックスのウェブサイトです。いわゆる事業所に対して、電力の購買やリスクマネージメント、長期の電力の技術とか、そういったことを紹介するコンサルタント、もしくは情報提供を利用するというサービスが、一般には主流になりつつあります。

というわけで、大口需要家の視点から自由化というものを聞いてみた場合に、まずはやっぱり信頼度が日本と同様に重要です。話をまとめますと、まず信頼度はそれほど変化がないのでオーケーだ、ただし、電気料金の面は期待とあまりにも外れていたので問題だというのが皆さん共通するところでした。価格変動のリスクに対応が必要、そしていろいろなサービスがあるので、それを無料でも有料でも使わないと、相当な被害を伴う場合がありますので、そのへんをしっかり活用する必要がある。またフランスの事例にありましたように、自由化というものを短期で見るのではなくて、価格の面で見ても長期で見ないとなかなか自分のところのメリットがわからない。そういうところが全体のまとめです。

また特にアメリカの電力会社の場合、来年、移行料金から市場料金に移ります。ですから来年以降、一般家庭も含めて、この電気料金の動向はさらに変わる予定です。こういった電気料金の面からの調査は、継続的により長期でウォッチしていかなくてはいけないとわれわれとしても思っているところです。

次に一般家庭について見ていきたいと思います。一般家庭については、自由化以降、いま現在40%電力会社の変更が進んでいます。これは公表されたデータですが、その内訳はなかなかわからないと思って、われわれは最近、独自に最初に紹介しましたようにイギリスで大規模なアンケートを実施して、その回数や内訳についてさまざま調査を実施しました。これがその結果です。これを見ると、イギリスの場合、基本的には無料で、かつ変更しようと思えば毎月のようにいろいろな電力会社を乗り換えることができます。しかし実際に動いている人は、1回、2回ぐらいで、先ほどの福本様場合は、ブリティッシュガスに移りましたので1回変更になるのかもしれませんが、基本的にはそれほど動いていないというのが現実です。

また変更している理由を見ると、先ほどの福本様の講演にありましたように、ほとんどがガスの供給先の変更をしているからというかたちで、また固定電話の変更の経験があるとか、要するに変更に積極的で、もともと関心が高いような需要家がイギリスの変更の例でも説明できるという状況です。

さらに、複数動いている人に対して、元に戻ったかどうかについて聞いたのがこれです。そうするとここの中の1割ほどが元に戻っているという需要家になっています。ですから頻繁に乗り換えるのは本当にごく少数であるというのがわかると思います。

また実際、先ほど大口需要家のインタビューをしてきたという話をしましたが、最後に、ではあなたの場合、一般家庭でどれぐらい変更していますかと聞いたところ、2名ほどが非常に積極的な方でした。ただ、その積極的な変更の2名も、4回ほど変更して、最終的に元に戻ったという状況です。なぜかというと、やはりいまいろいろな電力会社がデュアルフュエル・サービス、たとえばガスと電気と一緒になったサービス、そして長期の契約、またあとから紹介しますが、エアマイルのポイントと一緒になるようなサービス、スーパーマーケットと一緒のサービス、そういうプログラムを実施するようになって、なるべく長期で契約したほうがお客様にとってもメリットがあるという気づきがこういう状況にもなっている理由です。


最近、イギリスの電力会社では、こんなかたちで若干変化が表れているのが料金メニューです。いまはそれぞれの電力会社が多様なメニューを提供するという状況になっています。ここに挙げているのはイギリスのサザン・エレクトリック、これはどちらかというと、先ほどのブリティッシュガスとは逆に、私の視点からいいますとお客様満足度で非常に高い評価を得ている電力会社です。こういったサザン・エレクトリックでは、支払方法とか使用形態、料金メニューというかたちでさまざまな選択のメニューを用意しています。ここで見てもわかるように、デュアルフュエルとか、要するにガスと電気を提供する、またエアマイルというかたちなど、需要家に対してさまざまなメニューから自由に選択できるようにしているのがわかると思います。

これはイギリスだけではなくて、アメリカも同様です。最近訪問したTXUエナジーの場合でも全面自由化を受けてさらに移行料金が終わりますので、来年度に向けて11の新しい一般家庭に向けたメニューを公表しています。より自由化が進展する中では、電力と電力の競争、そして新しいメニューの開発というかたちに移りつつあるのが現実です。

こういった状況は、まずはもともと大口も一般家庭も最初はいろいろなところで競争があって、イギリスでは14の電力会社にガスが参入してというかたちでしたが、結果としてブリティッシュガスを含めてビッグ6、ドイツも同様で最初は8電力会社があったのが、いまではRWEとかE.ONも含めたビッグ4、フランスの場合はEDFというかたちです。電力会社の供給先が減っているという状況です。これはアメリカでもM&Aの進展とともに同様です。

その結果、当初は電力間の競争で、さらにガスと電気の競争で、安い電気料金があったわけですが、いまでは、むしろサービスも似たようなものになっていますので、それぞれのサービスの質でいかに変えるか、いわゆる品揃えというよりも、むしろその中身、サービスの質、品質、そしてブランドの競争に移りつつあるというのが現実です。

次に顧客サービスについて説明したいと思います。顧客サービスについては、われわれが調査していますと、単にお客様との接点というよりも非常に広い意味合いがあると思いますので、ここに紹介したような料金とか需要家対応、そして広報・社会貢献、こういったかたちで広く考えています。


これについて当所が実施した一般家庭の満足度のアンケートで、電気料金の算出根拠からウェブサイトの情報提供まで、満足度について10項目について調査した結果がこれになります。これを見てもわかるように、日本の場合、満足度は電気料金の算出根拠とか、電気の安全のアドバイス、このへんについては非常に高い満足度が出ていますが、ウェブサイトの情報提供ままだ不満でないというよりも、まだまだどちらとも言えないが多いという状況がわかると思います。

これに対してアメリカとイギリスの結果を合わせたものがこれです。ここで一番注目されるのは、やはり担当者の対応のよさと連絡のしやすさが日本と大きく開きがあるということだと思います。この理由は非常に簡単で、先ほど福本様から説明があったように、まずはコールセンターの対応のよしあしというところになると思います。

私もいろいろとインタビューしていると、福本様の場合は、逆に悪い例だったのかもしれませんが、私の場合は、やはりこのコールセンターのオペレーターが非常によかったからということで電力会社を選択する人がいて、それがそのまま契約につながっているというのが多数見られます。こういう状況でそれぞれの電力会社もこのオペレーターの質の向上に相当力を入れています。もともとこのコールセンターというのは効率重視で、支店とか営業所を閉じて、そして先ほどインドの話もありましたが、いかに安くするかということだったのですが、いまはお客様との重要な接点、特にイギリスは先ほど話がありましたように、いろいろなミスが多いので、そのミスに対していかに的確に対応するか、そういうところで評価が変わってきます。こういった接点を大事にしていることになります。

そういう接点はもちろん重要だと思いますが、しかし、それをすぐに日本に当てはめるというのは、価値観とか文化も違いますからなかなか難しい面もあると思いますので、われわれ電中研では、それぞれのサービスに対する重要度を別に評価して、そこでニーズを調査しています。これを見ると、やはり需要家が期待するサービスとしては、検針票などの表示、温室効果ガスの削減、省エネのアドバイスなどに対してニーズ、重要度が強いということがわかります。このへんのサービスをしっかりと提供することによって、効果的に満足度を上げることができるのではないかと考えられます。

また今回、満足度と重要度と二つ聞いていますので、この二つについてより効果的にサービスを提供するにあたって、われわれ電中研では、たとえばここにAからDの四つのサービスがあった場合に、重要度と満足度があれば、より重要なのは、どちらかというと重要度ではBとDが一緒になるかもしれませんが、やはり重要であっても満足度は低いものがより重要なサービス、優先順位の高いサービスとして挙げられると思っています。

そこでこの5と1のポイントからの距離に着目して、この場合であればDのところが一番重要であるというかたちでサービスを絞り込んで、その優先順位でもってサービスを提供することが得策なのではないかという提案をしています。これは一般家庭のサービスをプロットしたものです。こういったところを集計していくと、このようなかたちで分析の結果、やはり満足度が若干低くて、それに対する重要度が高いサービスとしては、一般家庭の場合は、上手な電気の使い方支援プログラムとか、選択しやすい契約メニューが挙がってきました。ですからこのようなサービスを提供することが満足度を上げることに有効なサービスであるということになります。


さて最後に、4つめとしての企業イメージについて見ていきます。企業イメージについては、さまざまなアプローチによる評価が考えられますが、今日は2つ紹介します。一つはブランド価値、そしてもう一つはロイヤルティという側面です。まずイメージの評価にあたって、ブランド価値の話をしてみたいと思います。

これは値下げに対してどれぐらいの割合で替えるかという割合を示したものです。これを見てもわかりますように、一般家庭であえば1割の値下げで19%、ちょっと飛びますが、PPSに移った事業所は56%ほどが1割で替えるという話をしています。これであれば、先ほどの電気料金の評価になるわけですが、ここでは、この1割で替えるというお客様は、おそらくその替える寸前でもってイメージとかサービスとか、それに対する評価をしていると考えますので、ここではその面積に着目しました。これはPPSの場合ですが、サービスとかイメージの総合的な評価としてブランド価値とか、これはお客様から見た評価ですので、そういう価値を計算してロイヤルティを定義することにしました。

最近、ソフトバンクの話が話題になっていますが、要するに安ければ移るという話もあるかもしれませんが、要するに安くなることに加えて、やはりKDDIとかもいずれは安くなるだろうという期待値、期間、さらにサービスという面があるわけで、値下げ率ともう一つ、どれぐらいの期間、お客様がいまの電力会社を待つかということを考えて、かけ合わせることによって金額としてのブランド価値が出てくると考えました。

これが最終的な結論です。一般家庭とPPSを比較するために、たとえば一般家庭の1万円の人であれば3万円、1カ月10万円払っているとすれば40万円というかたちで、要するにそれぞれの月数の支払額で金額を割って、そして月数分で比較しやすいようにしたものです。これを見ると一般家庭とか低圧の事業所において自由化の範囲になっていない需要家において高いブランド価値を持っていることがわかると思います。こういったブランド価値はまだ検討中ですが、基本的に先ほどの携帯電話とか通信とか、ほかの事業にも適用できると思いますし、またこういうブランド価値をしっかりと定量化することによって次のサービスの評価につなげていくことがこれから求められていくと思います。

最後にロイヤルティの話です。これまで満足度をいかに上げるかが重要な視点になっていました。その中では、基本的にはこの満足度が高ければ継続率も当然のように高いという暗黙のうちの期待があるわけです。ただ、実際にフランスとかほかの電力会社の事例を見ると、逆にそうではないというのが一般的になっています。ここにありますように、満足度が高いにもかかわらず、結果としてそのまま残らないでほかに移ってしまうという状況です。ですからいまの電力会社の取り組みとしては、満足度を必要条件にして、十分条件としての継続率、ロイヤルティをいかに高めるかというところにポイントが出てきています。

最終的に、満足度が高くて、ロイヤルティが高いお客様は、いまの電力会社を待って、そして助言して、サポーターとなるわけですから、ある意味でこのロイヤルティの高いお客様は、いわゆる電力会社にとっていいパートナーになるわけです。そういうところで社会全体としての便益の改善をしていくことが期待できるのかなと思っています。

それをどうやって上げるかが最後のポイントです。ロイヤルティは、さまざまな満足度、そしてサービスから構成されると考えています。結果的にいろいろな要因からなると思っています。結論になりますが、一般家庭であれば相談窓口としての専任の担当者、広告やCM、パンフレットや郵便物、別の言葉でいえば需要家と電力会社の間のコミュニケーションの課題がすべて挙がっています。要するに、よりよきコミュニケーションが取れていれば、結果としてブランド価値、ロイヤルティが高まっていく。その結果として省エネのサービスというものも利用しやすくなるわけで、それが満足度の向上につながっていく。こういう電力会社と需要家の関係は、両方にとってウィン・ウィンの関係になるわけで、そういうところがこれからも期待されます。

またいまCSRが、実はISOの規格の段階でも動いています。こういう電力会社と需要家の間のコミュニケーションが実現すれば、いわゆる電力会社と重要なステークホルダーである需要家とのいい意味でのコミュニケーション、対話ができるわけで、これらの改善にもロイヤルティの改善がつながっていくと期待しています。



最後にまとめになります。やはり何といっても信頼度が重要です。価格の面では大口ほど電気料金の水準ですが、基本的にはそのときのリスクの重要性、そして大口需要家のスイッチングコスト、いわゆるスイッチングのためのコストの大きさが明らかになりました。またサービスの重要性、最終的には需要家と電力会社のコミュニケーションが全体として社会に対していい意味での影響を及ぼすというところを示したのではないかと思います。

また最後になりますが、やはり需要家の視点は最新、そして継続的な調査が大事だと思っています。このへんをわれわれは今後も継続的に調査して、自由化、そして電気事業のあり方を積極的に研究していきたいと思います。ご清聴、どうもありがとうございました。

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(財)電力中央研究所広報グループ