エネルギー未来技術フォーラム 「電力自由化時代の電気事業」

開会挨拶



理事長のでございます。高いところからまことに僭越でございますが、開会の挨拶をさせていただきます。本日はお忙しいなか、私ども電力中央研究所のエネルギー未来技術フォーラムにかくも大勢の方々においでいただきまして、まことにありがとうございます。またひごろは私どもの活動に対しましては、深いご理解と温かいご支援を賜り、重ねて御礼を申し上げます。

今回のフォーラムは25回目になります。第1回が当研究所創立30周年にあたります昭和57年、1982年でしたから、四半世紀の長きにわたってこの会を継続してまいったことになります。これはひとえに皆様方のご支援とご理解によるものと深く感謝をしております。

さて、皆様ご承知のとおり、昨今のエネルギー情勢は非常に波乱に満ちた様相を呈しております。2003年の秋から急騰を始めた原油価格が、昨年6月にはついに1バーレル60ドルを突破し、80ドルを伺うほどとなってまいりましたときには、第三次オイルショックの到来かと世界の注目を集めたところであります。この背景には中国、インドという人口大国の著しい経済成長に伴うエネルギー資源への利用拡大や中東地域での政情不安の長期化による石油生産力不足、あるいはメキシコ湾岸地方で大型ハリケーンによる石油精製設備の被害などが複合しており、ここに投機的な資金の石油市場への流入ということも喧伝されておりました。

ほかにもサハリンの天然ガス開発にはロシア政府がストップをかけたとか、東シナ海の大陸棚では石油資源の開発にかかわる国境争いが表面化したり、加えて北朝鮮の核実験の実施は世界中に衝撃を与えました。わが国の周辺を見ただけでも、エネルギーにかかわる難問が山積しているところです。

このような中で、先進国が化石燃料への依存を続けることは急激に難しくなってきております。今後わが国のエネルギーセキュリティをいかにして確保するかは、換言すればわが国の国運をかける課題ともいえます。また最近、超大型台風や未曾有の集中豪雨によって大きな被害が起きていることは記憶に新しいところです。これが地球温暖化の影響かどうかの科学的判断はもう少し時間が必要なのかもしれませんが、21世紀中は炭酸ガスによる地球温暖化は避けられないというのが私どもの研究所の専門家の見解です。温暖化が、厚さが地球の半径の1000分の1とか2とかしかない非常に薄い幕の大気圏において、大気の対流メカニズムが激変するということは容易に想像できるわけです。地球温暖化についての科学的な判決が出るまで待つのではなく、いますぐに全世界が炭酸ガスの排出を削減し、温暖化の進行を軽減することに取り組まなければならないと思います。

電力中央研究所では、地球環境問題の解決とエネルギーセキュリティを両立させることは最重要課題として研究に取り組んでいるところです。

さて一方、皆様ご承知のとおり、わが国では電力について一九九六年、平成八年に卸売り分野を対象とする部分自由化が導入され、その後徐々に小売分野で自由化が対象範囲を拡大してきました。来年4月からは一般家庭を対象とする全面自由化の検討が開始される予定です。私は電力自由化を進めるにあたっても、地球環境問題の解決とエネルギーセキュリティの確保をどう調和せるかが大前提になると考えております。

このような観点に立ち、今回のエネルギー未来技術フォーラムでは「電力自由化時代の電気事業」というタイトルの下に、サブタイトルを「自由市場・地球環境・安定供給の調和を求めて」として開催させていただくことにいたしました。現在、競争時代に対する反省は若干起こっているという印象ですが、本日の発表では欧米、および日本でのこれまでの自由化の流れをレビューし、自由化が何をもたらしたのか、またどんな教訓を学ぶべきか、それを踏まえて日本に相ふさわしい日本型電力自由化というのはどういうものなのか、そのときの電気事業の役割として何が求められるのかなどについて基調発表をさせていただきます。

次に、自由化時代では、需要家に顔を向けた電力経営が一層求められます。当研究所では自由化先例の欧米諸国とわが国で需要家ニーズに基づく電力自由化の評価について調査を行ってまいりました。発表1では社会全体にとって便益をもたらす電力自由化と電気事業の姿について研究成果を発表させていただきます。

また長期的に電力の信頼度を確保することは自由化時代にあっても変わらないサービスの基本となります。先週来、発生しました番号ポータビリティ制度の発足により、混乱が起こっているようですが、あれが電力に起こった場合、影響は計り知れないものではないかと考えております。電力の信頼度を支える技術は、目に見えない技術で、専門家以外には非常に理解が難しいものですが、いくらかでもご理解いただけるようにと工夫しましたので、発表2では信頼度を支える電力技術と自由化時代に引き起こされる電力技術の高度化についてご説明いたします。

発表3では、電力自由化、地球環境、エネルギーセキュリティという3本のエネルギー政策を調和させるためには、技術開発が大きなカギを握ることは間違いないと思われます。電力自由化の下で、炭酸ガスの排出削減と電源のベストミックスを調和させる技術開発について発表させていただきます。

ご紹介が最後になりますが、本日は特別講演として、毎日新聞社経済部の副部長でいらっしゃいます福本容子様にお願いいたしました。福本様は2001年からロンドン特派員として英国に滞在されたご経験がおありですが、そのときに体験なさった英国の電力自由化を中心に、ジャーナリストとして生活者という視点も合わせて、興味深いお話を伺えればと考えております。新聞社という非常にお忙しい仕事の中で、私どものフォーラムでのご講演をお引き受けいただきまして、改めて深く感謝申し上げる次第でございます。

そして本日の私どもの発表が、今後皆様方がそれぞれの立場で電力自由化について、さらには地球環境やエネルギーセキュリティとの関係をご理解いただくうえで、いささかでも参考にしていただくことにつながれば、社会の中でお役に立ち、頼れる研究所を目指しております私どもにとっては大変ありがたいと思っております。

それでは長時間にわたりますが、ご静聴いただき、何らかのご参考にしていただけることを期待いたしまして、開会の挨拶にさせていただきます。ありがとうございました。


(財)電力中央研究所広報グループ