休憩中の覚醒度推移がその後の作業成績に及ぼす影響の実験的評価



背景


巨大システムにおける監視業務などの長時間の単調作業は,覚醒度が低下しやすくエラーにつながりやすい。その予防策のひとつとして短時間休憩がある。HFCでは,効果的な休憩方法の資質として,1)覚醒度の低下する方法を取る,2)深く寝入らない,3)終了直前に覚醒度を上げるための方策を行う,等の条件を見出した。これらの条件を現場に導入するためには,どの程度まで覚醒度を低下させる休憩を取るのが良いのかなど,より具体的な資質の提案が望まれる。


目的


休憩中の覚醒度推移の違いがその後の作業に及ぼす影響や,覚醒度上昇方策の効果を調べることで,効果的な休憩方法の資質に関する条件を実証・精査する。


主な成果


8名の被験者に,コンピューターを用いた単調な課題を100分間行わせ,中間に15分間の閉眼または閉眼+音楽休憩を挿入した。さらに覚醒度を上げる方策として冷たいタオル+扇風機の風を休憩終了直後に与える群を設けた。課題成績,脳波,被験者の内観から,主に以下のような結果が得られた。

(1)休憩中の脳波の推移については,θ(4-7Hz)・α2(11-13Hz)・β1(14-20Hz)帯域の変化の違いが,休憩後の課題成績に影響していることが分かったため,これらの帯域に着目したところ,以下の3タイプ(図1)に分類できた。

  • ① タイプ1:θ波が休憩前半から増加,α2・β1波は休憩中盤より終了まで右上がりに増加するタイプ。睡眠深度としては,第2段階(眠ったという自覚が出来る程度の深さ)に相当。
  • ② タイプ2:θ波は休憩前半から増加するが,他2帯域の変化はない。睡眠深度としては,第1段階(まどろむ程度)から第2段階への移行期に相当。
  • ③ タイプ3:θ・α2・β1波とも変化なし。睡眠第1段階と中途覚醒を繰り返すタイプ。


(2) 上記タイプと休憩後の課題成績との関係を分析したところ,タイプ3のみ課題時間の推移に従って成績が低下した。また,タイプ3に比べ,タイプ1の方が有意に成績が良かった(図2)。


(3) 脳波変化タイプ別に,覚醒度を上げる方策の有無と休憩後の課題成績推移との関係を分析したところ,タイプ1のみ,方策有り群の方が休憩後の課題時間を通して成績が良かった(図3)。

上記の結果から,効果的な休憩とは,休憩開始後早々に覚醒度が低下し,睡眠第2段階に至る程度の睡眠が得られるものであること,そして,その効果は覚醒度を上げる方策によって助長されることが分かった。


[関連報告書]





(図1)


(図2)


(図3)