【背景】
これまでの低線量・低線量率放射線の生体影響研究の成果から、同じ量の放射線を受けても、わずかずつ長時間かけて受けた場合と短時間で受けた場合とでは影響に違いがあることがわかってきました。
そこで、当所は、これを視覚的に表現する方法として「線量?線量率マップ」を提案し、所内研究や連携研究等のデータを整理しました。その結果、「放射線照射によって障害が発生した領域」、「照射によって何も影響が見られなかった領域」、さらにこれら2つの領域の間に、生体に障害を与えることなく「生体に有益な効果が認められた領域」のあることが明らかになりました。(図1)
図1 所内研究・連携研究等のデータによる線量―線量率マップ
【目的】
この線量―線量率マップを放射線によるリスク分析のための手法として活用するため、さらに多くのデータによりこの領域分けの信頼性を高め、データ分析のための汎用性の高い手法として確立していきます。
【主な成果】
- 大量のデータを線量―線量率マップ上にプロットし、様々な条件を指定して該当するデータのみを表示することができるツールを作成しました。
- このツールを用いて、実験動物の放射線発がんに関する所外の文献データを整理・分析し、次の知見が得られ、線量―線量率マップが、放射線によるリスク分析のための有効な手法であることを示しました。
(得られた知見)
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- 新たな文献データの整理結果と従来の線量―線量率マップの領域分けは矛盾しない
- 障害の種類、発生部位ごとの分析により、肉腫では比較的高い線量―線量率域まで生体防御機能の増強が見られる
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※線量―線量率マップの詳しい解説は電中研ニュース401でもご覧いただけます。
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