電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

C20005

タイトル(和文)

欧州における産業用ヒートポンプの市場概観と開発動向

タイトル(英文)

Market overview and development trends of industrial heat pumps in Europe

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
近年、欧州では脱炭素化に向けた高効率な産業電化技術として産業用ヒートポンプ 注1)が注目されている。産業用ヒートポンプの研究開発が活発化しているだけでなく、多数の製品が市場に登場し、導入事例も報告されてきた。これらの情報は日本における産業用ヒートポンプの研究開発や普及拡大に向けた活動の参考になると考えられるが、日本国内ではほとんど知られていない。

目  的
欧州における産業用ヒートポンプの市場概観(製品と導入事例)ならびに開発動向を把握し、体系的に整理するとともに、日本における今後の活動への示唆を得る。

主な成果
1. 欧州における産業用ヒートポンプの市場概観
(1) 16メーカから30種類の産業用ヒートポンプが製品化されている。供給温度は100°C未満の製品の割合が多いが、160°C供給が可能な製品もある(図1)。
(2) 食品産業への導入事例が比較的多く、冷温同時利用の形態が多く見られ、中でもノルウェーの乳製品工場ではオール電化を達成している(図2)。
(3) ヒートポンプの導入にあたっては、コンサルティング会社が工場のエネルギー分析を行い、ヒートポンプの仕様やプロセスへの統合方法を提案している事例が見られる。
2. 欧州における産業用ヒートポンプの開発動向
(1) 100~200°Cまでの供給が可能な高温ヒートポンプの開発と実証が活発化している。
(2) 乾燥工程を対象としたプロジェクトが多く見られ、5つの乾燥工程用ヒートポンプの開発および実証プロジェクトが進行中である(表1)。
(3) 産業用ヒートポンプの開発と実証、および市場投入前の性能評価と信頼性確保を目的として、大容量高温ヒートポンプの性能評価が可能な試験設備が2つ整備された。
3. 産業用ヒートポンプ普及拡大に向けた日本への示唆
(1) 欧州のコンサルティング会社のように、工場のプロセスとヒートポンプに関する両方の知見を有し、工場とメーカの間で活動できるプレイヤが必要である。
(2) 日本の研究開発プロジェクトでは機器開発までのR&Dが主流だが、開発段階からユーザも参画した、実証試験までを含めたRD&Dが必要である。
今後の展開
当所が保有する産業用高温ヒートポンプの性能評価が可能な試験設備やエネルギー解析技術を活用し、産業用ヒートポンプの開発と実証に積極的に関わっていく。

注1)日本では一般的に生産工程でモノの加熱に用いられるヒートポンプと定義されるが、本報告では欧州でよく見られる工場排熱を熱源とした地域熱供給用途のヒートポンプも対象とする。

概要 (英文)

Industrial heat pump is recognized as a highly efficient industrial electrification technology for decarbonization. Currently, 30 industrial heat pumps, which are supplied by 16 manufacturers, are available on the market in Europe. A heat pump that can supply the temperature of up to 160 degree C has already been commercialized, however most of the products are limited to the supply temperature of less than 100 degree C. Some case studies of industrial heat pump applications have also been reported. Breaking down by industry, introduction case in food or beverage industry is the most in number. In particular, TINEs new dairy in Norway succeeded in full electrification of all processes from -1.5 degree C to 95 degree C by effectively using heat pumps in the form of simultaneous heating and cooling. Regarding the development trends, 5 RD&D projects of high temperature heat pumps for drying processes are ongoing. Also, 3 RD&D projects of steam compressors are in progress for the purpose of the applications to mechanical vapor recompression, steam supply heat pump or high temperature heat pump with water refrigerant. Furthermore, two test facilities were constructed to evaluate the performance of large-capacity high-temperature heat pumps. In this way, the development and demonstration of industrial heat pumps are being strengthened in Europe.

報告書年度

2020

発行年月

2021/01

報告者

担当氏名所属

甲斐田 武延

エネルギーイノベーション創発センター カスタマーサービスユニット

キーワード

和文英文
産業用ヒートポンプ Industrial heat pumps
市場概観 Market overview
開発動向 Development trends
導入事例 Case studies
欧州 Europe
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry