電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

EX21015

タイトル(和文)

臨海地域および山間地域において大気暴露させた塗装鋼板の劣化挙動

タイトル(英文)

Deterioration Behavior of Painted Steel Sheets Exposed to the Atmosphere in Coastal Area and Mountainous Area

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
経年塗装鉄塔の塗装劣化の評価は、現場では主に目視で行われているが、鉄塔の重要度によっては表面に劣化が顕在化する前に定量的に評価する必要がある。当研究所では、これに適した方法として交流インピーダンス法の検討を進めてきた[1-4]。さらに、塗装劣化を予測するためには、短期間で塗装劣化を評価できる試験法の確立が求められる。そこで、鉄塔に使われている多種の塗装鋼板を促進劣化させて評価した[5]が、実鉄塔の屋外環境に近い大気暴露試験で長期にわたり劣化させた塗装鋼のデータとの比較が不可欠である。
目  的
塗装劣化に対して海塩の影響が大きいと予想されるため、関東地方の臨海地域と山間地域において鉄塔用塗装鋼板の長期暴露試験を行い、劣化データを取得する。
主な成果
塗装鋼板(ポリウレタン樹脂下塗塗料1層)と塗装めっき鋼板(亜鉛めっき上にエポキシ樹脂下塗塗料1層 / ポリウレタン樹脂塗料2層)注1)の大気暴露試験を10年間以上にわたって実施した。試験板は塗装表面が東西南北の各方位を向くように垂直に、上を向くように水平に、計5面に設置した。暴露期間中に、交流インピーダンス法により単一周波数(1 kHz)でのインピーダンスZ1kHzを測定し、以下の劣化データが得られた。
1. 塗装劣化に及ぼす環境因子(海塩)の影響
臨海地域での塗装鋼板のZ1kHzは、どの設置面においても山間地域よりも早期に低下した(図1)。臨海地域のZ1kHzが塗替え基準(3×105 Ω・cm2)注2)に達するまでの時間は、垂直方向の中で最も劣化が早かった南面で山間地域の半分以下となった。塗替え基準に達した塗装表面には、目視では確認が難しい0.5 mm以下の膨れや発錆が確認でき(図1)、臨海地域は海塩の付着により早期に塗膜下の腐食が進行したため、山間地域よりも塗装劣化が早かったと考えられる。
2. 塗装仕様による劣化時期の違い
1層塗りの塗装鋼板は数年で劣化した。一方で、塗装めっき鋼板は亜鉛めっきと3層塗装により防食性が高く、山間地域の南面では塗替え基準に達したものの、いずれの暴露地域においても劣化の進行は遅く(図2)、塗替えは10年間以上必要ないと判断された。
今後の展開
蓄積した暴露試験の結果と促進劣化試験の結果を比較し、促進試験法の確立を行う。

概要 (英文)

To decide the time to repaint of steel towers, it is necessary to estimate the paint deterioration and establish the accelerated deterioration method by expanding the evaluation data. In this study, the painted steel sheets (a layer of polyurethane resin) and the painted galvanized steel sheets (epoxy resin (under paint) / double-layers of polyurethane resin) were exposed to atmosphere in the coastal area and the mountainous area over 10 years to clarify the effect of environmental factors (sea salt) on the paint deterioration. During the exposure period, the degree of paint deterioration was evaluated from measurement of the impedance at frequency of 1 kHz Z1 kHz. The Z1kHz of the painted steel sheets in the coastal area decreased faster than that in the mountainous area on any installation side. The time for the Z1kHz of the painted steel sheets facing south to reach the repainting standard in the coastal area was about half of that in the mountainous area. Small blisters of 0.5 mm or less and rusts were observed on the painted surface after the Z1kHz of the painted steel sheets reached the standard of repainting. Thus, it is suggested that the painted film in the coastal area deteriorated earlier than that in the mountainous area because the corrosion under the paint film expanded due to the adhesion of the sea salt in the coastal area. While the painted steel sheets deteriorated in a few years, it was judged that the painted galvanized steel sheets do not need to be repainted for over 10 years.

報告書年度

2021

発行年月

2022/06

報告者

担当氏名所属

前田 真利

エネルギートランスフォーメーション研究本部 エネルギー化学研究部門

キーワード

和文英文
塗装鉄塔 Painted steel tower
塗膜劣化 Degradation of paint film
交流インピーダンス法 AC impedance method
塗膜下腐食 Under film corrosion
大気暴露試験 Atmospheric exposure test
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