電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

EX22001

タイトル(和文)

遠心鋳造ステンレス鋼に対する複数方式のフェーズドアレイ超音波法のきず検出性の比較

タイトル(英文)

Comparison of flaw detectability among different phased array ultrasonic techniques for centrifugally cast stainless steel

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
遠心鋳造ステンレス鋼(CCSS)は,加圧水型軽水炉の一次系配管に用いられており,その溶接部は,定期的に超音波探傷試験(UT)を実施する対象となっている.しかし,粗大結晶粒による超音波の散乱および減衰,音響異方性による超音波伝搬経路の屈曲により,CCSSに対するUTは他の材料に比べて難度が高い.この課題を解決するUTの手法として,フェーズドアレイ超音波法(PAUT)注1)が有効とされている.これまで各素子に適切な時間遅延を与えて励振させ,その遅延で受信波形を合成する従来のPAUTが用いられている.近年,新たなPAUT手法として 1素子の送信と全素子の受信を素子数分繰り返すことで得られる全波形から探傷結果を再構築するFMC/TFM注2),および複数の素子で平面波を送信しFMC/TFMの方式で受信と探傷結果の再構築を行うPWI注3)が提案された.
目  的
CCSS試験体に対して、等方性材と仮定して従来のPAUT,FMC/TFMとPWIをそれぞれ適用し,これらの PAUT手法の差異を,最も基本的な探傷能力の指標であるきず検出性について明らかにする.
主な成果
1. CCSS試験体に対する各PAUT手法の適用
曲率付きCCSS試験体(図1)と平板状CCSS試験体(図2(a))を従来のPAUT,FMC/TFMとPWIでそれぞれ探傷した.従来のPAUTを基準にエコー強度とSN比を求めた結果,FMC/TFMとPWIの両者とも従来のPAUTに比べて,SN比が低下することが分かった(表1).
2. 各PAUT手法のきず検出性の差異
(1) FMC/TFMでは,従来のPAUTで検出できたきずの一部を検出できなかった(表1).この原因は,FMC/TFMでは1素子の送信で励起された超音波エネルギーが,従来のPAUTに比べて低いことにあると考えられる.
(2) PWIのきず検出性は,受信波形の位相情報を用いた画像処理 (従来のPAUTでは,各素子の受信波形を個別に記録していないので適用できない)を適用する前では従来のPAUTと同等である(表1).前出の処理を適用した後には,PWIは従来のPAUTよりもきずの識別性が大幅に向上し(図2),従来のPAUTでノイズから識別し難いきずをPWIで識別できるようになると考えられる.なお,CCSSが強い音響異方性を有することから、探傷結果の再構築にその異方性を考慮に入れることでPWIの検出性をさらに向上できると考えられる.

概要 (英文)

Cast stainless steel (CSS) is widely used in nuclear power plants, particularly PWR primary coolant systems. The JSME Fitness-for-Service Code requires periodic in-service inspection of welds in such systems by ultrasonic testing (UT), but anisotropy and heterogeneity of CSS hinder flaw detection and sizing. Besides conventional phased array ultrasonic technique, FMC/TFM and PWI proposed recently are considered the most promising techniques to overcome such difficulties. In this report, we tried to clarify the difference of flaw detectability among these three kinds of phased array ultrasonic techniques (PAUTs) by using flat centrifugally cast stainless steel (CCSS) specimen and curved CCSS specimens. We introduced notches and side-drilled holes (SDHs) in the flat CCSS specimen and notches or fatigue crack in curved CCSS specimens and we used a 64-element linear array probe mounted on an angled wedge. Main results obtained from experiments are as follows.
(1) Under same gain, echo intensities by FMC/TFM and PWI are much higher than those by the conventional PAUT, however, the result of SN ratio is opposite.
(2) Flaw detectability of FMC/TFM is inferior to that of the conventional PAUT for CCSS.
(3) Without post-process by using phase coherence factor (PCF), flaw detectability of PWI is equivalent to that of the conventional PAUT for CCSS.
(4) Making use of PCF, SN ratio of echoes by PWI are much superior to that by the conventional PAUT, therefore, it is expected that more reliable UT results can be obtained by PWI than by the conventional PAUT.

報告書年度

2022

発行年月

2023/03

報告者

担当氏名所属

林 山

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

東海林 一

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

キーワード

和文英文
遠心鋳造ステンレス鋼 Centrifugally Cast Stainless Steel
非破壊検査 Nondestructive Examination
フェーズドアレイ超音波法 Phased Array Ultrasonic Technique
FMC/TFM FMC/TFM
PWI PWI
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