電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

EX22002

タイトル(和文)

多項ロジスティック回帰を用いたきず判定機械学習プログラムの開発 -ステンレス鋼溶接部の応力腐食割れ検出への適用-

タイトル(英文)

Development of flaw detection machine learning programing code using multinomial logistics regression - Detection of stress cracking in stainless steel welds-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
政府は安全の確認された軽水炉を積極利用する方針を示したが,東日本大震災以降の軽水炉の長期停止の影響もあり,再稼働後の供用期間中検査で超音波探傷試験(UT)を行う熟練の試験技術者が不足する懸念がある.特に,損傷事例のあるステンレス鋼配管溶接部の応力腐食割れ(SCC)のUTによる検出は高い技量と経験が必要とされている.これに対し,練度の低い試験技術者でも検査結果の信頼性を損なわないよう支援する道具として機械学習を利用するアイディアがある.実際の自動探傷結果を用いた機械学習結果を基に,探傷結果を判定させ,きずの有無や健全性に疑義のある箇所の抽出ができれば,きず判定を行う上での有益な補助情報となり,信頼性を確保・向上できる可能性がある.
目  的
UTデータ(Bスコープ注1)データ)を対象として,機械学習の基本的な分類手法であるロジスティック回帰注2)を用いて,きずの有無を判定するプログラムを開発する.開発したプログラムにSCCのUTデータを用いて機械学習を実行し,訓練データ数に応じて,どの程度の判定精度が得られるかを検討する.
主な成果
1. ロジスティック回帰を用いた機械学習プログラムの開発
UTできずを検出する場合,幅のある超音波ビーム(本報では10 mm幅)を用いることから,超音波ビームが全てきずに当たっている「きず有り部(F)」・一部がきずに当たっている「遷移部(T)」・きずに当たっていない「きず無し部(N)」の3値に分類する機械学習プログラムを開発した(図1).
2. 開発したプログラムによるきず判定精度の検討
SCCを付与した試験片から採取したデータセット [1]を用い,訓練データ数を変化させて,それに応じたきず判定精度を計算した.きず有り部(F)ときず無し部(N)をそれぞれ逆に回答する重大な誤答は800個程度の訓練データを与えることで0%となった(図2).きずの有無や健全性に疑義のある箇所の抽出には誤答はあるが,これらはデータ分類をした境界付近(きず有り部と遷移部 ,きず無し部と遷移部)でのみ生じている(図3).実際の探傷では,きずは長さを持っているため,これらの誤答はその隣のデータでカバーでき,見逃しには至らない.これらから,十分な数の訓練データを与えることで,試験技術者がきず判定を行うための補助情報として、十分な判定精度が得られると考えられる.
今後の展開
開発したプログラムを,異なる対象部位に対して適用可能であるかを確認していく.

概要 (英文)

The government has indicated a policy of positively utilizing light water reactors whose safety has been confirmed.However, there is a concern that there will be a shortage of the test engineer of ultrasonic testing (UT) under the influence of the long-term shutdown after the Great East Japan Earthquake. In particular, UT detection of stress corrosion cracking (SCC) in stainless steel pipe welds, which has been damaged, requires a high level of skill and experience. Therefore, there is an idea to use machine learning as a tool to help even unskilled test engineers to maintain the reliability of test results. If machine learning program code can extract the presence or absence of flaws and areas with questionable soundness, it will be useful auxiliary information for making judgments, and it may be possible to secure and improve reliability. We have developed a program code to determine the presence or absence of flaws from B-scan images using logistic regression, which is a basic classification method of machine learning. By executing machine learning using UT data for SCC in the developed program code and providing a sufficient amount of training data, it is possible to obtain sufficient judgment accuracy as an alarm device that prevents test engineers from overlooking.

報告書年度

2022

発行年月

2023/03

報告者

担当氏名所属

神田 昂亮

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

東海林 一

エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門

キーワード

和文英文
機械学習 Machine learning
ロジスティク回帰 Logistic regression
人工知能 Artificial intelligence
超音波探傷試験 Ultrasonic testing
非破壊検査 Non-destructive testing
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