電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

EX22011

タイトル(和文)

未利用バイオマスの利用拡大を目指した ダイレクトバイオマス燃料電池の開発 ―バイオマス模擬燃料による発電特性―

タイトル(英文)

Development of direct biomass fuel cells for effective use of unutilized biomass - DBFC performance using simulated biomass -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
カーボンニュートラルの取り組みに向け、近年、バイオマス発電所が多く建設される一方で、輸送コストの観点から未利用のまま処分されるバイオマスが多く存在する。これらの未利用バイオマスを有効利用するためには、小型かつ低コストで高効率な発電システムが望まれる。そのシステムを具現化できる技術として、ダイレクトバイオマス燃料電池(Direct Biomass Fuel Cell, DBFC)を提案した。このDBFCは、ボイラやガス化炉を必要とせず小型化が可能であり、バイオマスを構成する固体炭素と揮発成分の化学エネルギーから、直接、電気エネルギーに変換できるため、高効率発電が期待できる。
目  的
バイオマス燃料を模擬した発電試験により、揮発ガスの成分および炭化物の形状がDBFC発電特性へ及ぼす影響を調べる。
主な成果
固体炭素として活性炭を用い、バイオマスから発生する揮発ガスの模擬ガス(N2, H2, H2O, CO2の混合ガス)を供給して発電試験を実施し、以下の点を明らかとした。
1. 電極近傍のガス成分の影響
電極近傍にH2がない場合、電極材料であるNiが酸化されるため出力電圧が急激に低下する。このため電極材料の保護の観点から一定濃度以上(本試験では1.7%程度)のH2が必要である。一方、H2濃度が高いほど、H2による発電反応が進むため出力電圧は高く、同様にH2O濃度が高いほど炭素との水蒸気ガス化反応(C+H2O→CO+H2)により発生するH2の濃度が高くなるため出力電圧が高くなる。
2. 燃料形状の影響
粒子径の小さい活性炭燃料ほど、電極との接触面積が大きく、また比表面積が大きくガス化反応が促進されH2の濃度が高くなることから、出力電圧は高くなる。しかし、燃料の流動性注 )が低くなるため、反応容器内でブリッジ注 )を作り易くなり、安定した発電が難しい。この結果から、流動性が高く、比表面積の大きいヤシ殻活性炭を選定し、発電試験を行った結果、既存の溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)と同レベルの出力密度で、安定した連続発電が可能になった。
今後の展開
実バイオマスによる発電試験を行い、バイオマスから発生するタールや不純物ガスの影響等を評価しつつ、DBFCの有用性を示す。

概要 (英文)

In order to achieve carbon neutrality, a compact, low-cost, and highly efficient power generation system that can effectively utilize unused biomass is desired. We propose direct biomass fuel cell (DBFC) as a technology that can realize this system. DBFC can be miniaturized because it does not require a boiler or gasifier. In addition, since the chemical energy of solid carbon and volatile matter that composed biomass can be converted directly into electrical energy, highly efficient power generation can be expected. In this report, the possibility of DBFC is discussed through power generation tests using simulated biomass. Three types of activated carbon with different particle sizes were used as fuel, and the gas containing several percent of H2, H2O and CO2 was supplied into the vessel to simulate the volatile components of biomass. It was found that continuous power generation was possible when several percent of H2 was contained in the vessel. In addition, the smaller the activated carbon particle size was, the higher the output voltage of the DBFC was. However, the activated carbon having a small particle size tended to form bridges in the reaction vessel, and hence stable power generation was difficult. Therefore, the fuel must be fluid (angle of repose < 40). Considering this result, a power generation test was performed using activated carbon, which has fluidity and a large specific surface area. As a result of the tests, DBFC was able to generate electricity at a high-power density, which allowed it to generate stably and continuously.

報告書年度

2022

発行年月

2023/05

報告者

担当氏名所属

河瀬 誠

エネルギートランスフォーメーション研究本部 エネルギー化学研究部門

井戸 彬文

エネルギートランスフォーメーション研究本部 エネルギー化学研究部門

キーワード

和文英文
ダイレクトバイオマス燃料電池 Direct biomass fuel cells
バイオマス Biomass
溶融炭酸塩 Molten carbonate
活性炭 Activated carbon
発電試験 Power generation test
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