電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD21025

タイトル(和文)

長寿命設備を想定した運用実績に基づく故障統計解析手法の検討

タイトル(英文)

Study of statistical failure analysis for long life equipment based on operation data

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
先進諸国において電力流通設備の高経年化対策は重要課題であり、アセットマネジメント技術導入による合理的な対応が志向されている。日本でも2023年度からの託送料金制度見直しに合わせ、電力広域的運営推進機関(OCCTO)により「高経年化設備更新ガイドライン」[1]が策定され、リスク評価に基づく更新物量算定手法が導入されるが、このような「リスク評価」を行うためには対象設備の故障率を精度よく推定する必要がある。その経年特性を把握する方法の一つに故障や稼働実績といった設備運用データの統計解析がある。ただし、解析対象には、長期間の運用が可能で幅広い設備量経年分布を持ち、高信頼度かつ予防保全を前提とするという特徴があるため、故障統計解析を実施する上での留意点を明確化しておく必要がある。
目  的
幅広い経年分布の設備群を仮定し、運用実績シミュレーションデータをサンプルとした故障率推定を実施する。また事故・更新実績調査事例を用いて予防保全的更新実績を加味した推定例を示す。以上を踏まえて解析実施上の留意点を明確にする。
主な成果
1. 運用実績シミュレーションデータによる故障率推定
図1の設備量経年分布を仮定した設備を5年間運用した場合の故障発生を乱数により模擬し、その結果から故障特性をハザード解析注1)により求めた。図2にシミュレーション時に設定した故障率の「真値」と、5回分のシミュレーション結果から求めた「推定値」を示す。推定値はシミュレーション実施のたびに真値の周りにばらつく。真値に近い推定値を得るためには適切に調査された運用実績データ注2)を増やしてばらつきを抑えるよりほかなく、長期間にわたるデータ蓄積が不可欠である。
2. 事故・更新実績調査を活用した故障特性推定例
過去に実施された調査事例注3)を用い、事故実績と更新実績を合算注4)して故障特性の推定を行った。特高・高圧ケーブルに対する推定結果を図3に示す。例えば経年30年時点では更新実績を考慮した場合の故障率は考慮しない場合の約26倍となるなど、影響が大きいために更新実績・理由の調査、合算は必須と考えられる。

以上を踏まえ、運用実績データに基づく統計解析を行う上での必須調査内容と留意点を表1にまとめる。

注1)耐久試験等での故障データから故障特性を統計解析し、ワイブル分布関数に当てはめる解析手法で、試験途中での打切を含むデータに対応する手法として知られる。
注2)調査実施年度における1年単位での設備量経年分布と故障発生経年分布は必須。その他、表1を参照。
注3)「関東東北産業保安監督部管内電気主任技術者会」にて2008年度に加盟する約200社に対して実施された10年分の設備事故・更新実態調査[2]。
注4)予防保全的更新は経年劣化に伴う故障の顕在化を抑え、高経年設備の事故を減らすため、事故実績のみに基づく故障特性評価は過小評価となる。ここでは更新された設備は一律5年後に故障に至るものであったと仮定、更新経年+5年を擬似的に故障発生経年とみなし、事故実績と合算した。更新判断から実際に故障するまでの猶予として見積もる期間は更新理由の調査や設備特性から個別検討することが望ましい。
[1] OCCTO, 高経年化設備更新ガイドラインの策定および公表について, https://www.occto.or.jp/kouikikeitou/guidelines/20211217_guideline.html , (参照 2022-01-06)
[2] 「絶縁診断に基づく電力機器のアセットマネジメント」, 電気学会技術報告 No. 1243 (2012)
図1 仮想設備量経年分布(計12340台)            
図2 推定故障率と真値の比較
図3 特高・高圧ケーブルの事故・更新実績に基づく故障特性推定結果
表1 故障統計解析に用いる運用実績データに関する必須調査内容と留意点

概要 (英文)

In developed countries, to operate and maintain aged power equipment are very important issue, and rational measures by utilizing the asset management techniques are being pursued. In Japan, the Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operator (OCCTO) has introduced an evaluation method of renewal planning based on risk analysis. In order to carry out such a risk analysis, it is necessary to accurately estimate the failure rate of the equipment to be evaluated. One of the methods to understand the aging characteristics is the statistical analysis of equipment operation data such as failures and operating results, but there are some points to be considered when applying this method to equipment that can be operated for a long period, has a wide age distribution, and is expected to have high reliability with preventive maintenance. This report presents the procedure of statistical analysis by using simulated data of operation results with wide age distribution, and the points to be considered when carry out this analysis. In addition, examples of failure rate evaluation that takes into account the results of preventive renewals are presented.

報告書年度

2021

発行年月

2022/05

報告者

担当氏名所属

高橋 紹大

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
アセットマネジメント asset management
リスク評価 risk analysis
故障率 failure rate
ハザード解析 hazard analysis
運用実績 operation data
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry