電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD21032

タイトル(和文)

着氷雪がいしの着雪特性およびフラッシオーバ特性の評価-人工着雪課電実験による放電進展様相と耐電圧特性の検討-

タイトル(英文)

Evaluation of Snow Accretion and Flashover Properties of Snow Accreted Insulators - Study of Discharge Development and Withstand Voltage Characteristics by Artificial Snow Accretion Energizing Tests -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
2005年12月、新潟県下越地方で発生した雪害事故を契機に、当所では、雪害事象に対応した研究を開始した。その一環の塩雪害注 )に関する研究として、これまで現地着雪観測や実規模がいしの着雪課電実験等により、着雪特性や電気絶縁特性の評価を行ってきた。上記の着雪課電実験では、フラッシオーバの前駆現象として放電様相の変化が確認されていたが、その放電進展メカニズムは明らかになっていない。また、実線路における塩雪害事故として、活線状態で着雪が発達しフラッシオーバに至る「課電先行型」の事故と、一旦停電した状態で着雪が発達し、再送電時にフラッシオーバに至る「着雪先行型」の事故がある。一方、これまでの着雪課電実験では、実験上の制約から「着雪先行型」での実施にとどまっており、適切な雪害対策の実現のためには「着雪先行型」と「課電先行型」の耐電圧特性の違いを明らかにする必要がある。
目  的
人工雪を用いた着雪課電実験により、着雪がいしの放電進展メカニズムを明らかにするとともに、着雪・課電プロセスの違いが耐電圧特性に与える影響を明らかにする。
主な成果
1. 着雪がいしの放電進展メカニズムの解明のための検討
着雪がいしを模擬した磁器板試料注 )に対して、電圧(30kVrms)を印加し(着雪先行型)、課電中の放電進展様相を分光器により観測した。その結果、部分放電発生時は、空気中の窒素注 )に由来する発光のピーク(波長300~400 nm)が認められ、これは雪内部の空気層におけるボイド放電であると判明した。その後、放電の継続に伴い融雪が進むと、一部でギャップ部が形成され、そこに局部アーク放電が発生する。この放電については、窒素およびナトリウムに由来するピーク(波長590 nm付近)が認められ、これは融雪に伴う沿面放電であることが明らかとなった。
2. 着雪・課電プロセスの違いが耐電圧特性に与える影響
配電用がいし2種に対し、従来の「着雪先行型」に加え、新たに「課電先行型」による着雪課電実験を行い、人工雪の導電率と耐電圧の関係を評価した。その結果、「着雪先行型」に比べ、「課電先行型」の方が10~30 %程度耐電圧が低くなることが分かった。「着雪先行型」の場合、放電に伴う融雪によりギャップの拡大が進むと、それ以降はフラッシオーバに至らないが、「課電先行型」では、雪が継続して吹き付けられるため、フラッシオーバの機会が多くなり、結果として「着雪先行型」よりも耐電圧が低くなったと考えられる。以上より、着雪・課電プロセスの違いが耐電圧特性に与える影響が明らかになり、実線路の事故形態を考慮した塩雪害対策の検討が可能となる。

今後の展開
人工雪を用いた着雪課電試験と実使用環境との等価性の検証を行う。

概要 (英文)

In December 2005, Japan experienced a major outage in Niigata Kaetsu area due to a large amount of wet snow mixed with sea-salt accreted on several transmission insulators. Observation of the discharge development of snow accretion insulators and flashover test of snow accretion insulators considering the state of snow accretion and electricity imposed on them were carried out. As a result of the flashover test of the snow insulator, partial discharge occurred in the initial stage of voltage application.

報告書年度

2021

発行年月

2022/06

報告者

担当氏名所属

三好 雅仁

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

本間 宏也

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
架空送電線 Overhead line
着雪 Snow accretion
がいし Insulator
フィールド観測 Field observation
フラッシオーバ Flashover
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