電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD22013

タイトル(和文)

電気自動車熱管理システムの考案とサイクルシミュレーションによる性能分析-その1:冷却・冷房モード-

タイトル(英文)

A proposal of thermal management system for electric vehicles and performance analysis based on cycle simulation - Part 1: Cooling mode -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
電気自動車(EV)の熱管理はEV の航続距離、寿命、安全性における重要な課題である。そこで、当所ではこれまでに、バッテリや、モータ、インバータを最適に温度制御しつつ、快適な車内温熱環境を省電力に実現するための熱管理のコンセプトモデルを提案した[1]。
目 的
車室、バッテリ、モータとインバータの熱を統合したEV熱管理システムを考案する。さらに、冷却・冷房についてサイクルシミュレーションによる性能分析を行う。
主な成果
1.省電力なEV 熱管理システムの考案
既提案のコンセプトモデルをもとに、圧縮機や熱交換器などを組み合わせたEV熱管理システムを設計した。システムは必要な温度レベルの違いにより冷媒回路とクーラント回路から構成した(図1)。省電力での除湿を可能とする吸着剤塗布熱交換器や、蓄水能力のある高分子塗布熱交換器を採用した点に特徴がある。本システムの冷却・冷房モードは以下の工夫により徹底した省電力を実現する(図2)。なお、加熱・暖房モードは別報する [2]。
・ ヒートポンプの蒸発器で車室還気を冷却と除湿
・ 除湿で生じた凝縮水をバッテリ熱交換器へ導き、外気と接触して蒸発、蒸発熱で降温された冷気でバッテリを冷却
・バッテリ熱交換器として高分子塗布熱交換器(PCHE)を利用する。PCHE の蓄水により、凝縮水が発生しない時間帯でもバッテリ冷却が可能
2.冷却・冷房モードのシミュレーション分析
考案システムの冷却・冷房モードでの性能をシミュレーションにより分析した。
・外気温25~45℃で、車室を25℃に冷房しつつ、発熱負荷が0.5kW[3]のバッテリを40℃以下に冷却可能(図3)。さらに、車室とバッテリの両方をヒートポンプで冷却する場合と比べ、圧縮機消費電力を1 割削減
・PCHE に400g の蓄水があれば、ヒートポンプ起動無しで駐車中の40℃のバッテリを34℃に冷却可能
・急速充電器(20kW, 30kW)で10kWh および15kWh 充電したバッテリを蓄水のみで40℃以下に冷却可能(図4)。急速充電器(50kW, 90kW)の場合は、蓄水と冷媒回路の両者により40℃以下に冷却可能
関連報告書:
[1] GD21011「電気自動車の熱管理システムに関する研究開発-熱管理システムのコンセプトモデルの提案 -」(2022.04)
[2] GD22014「電気自動車熱管理システムの考案とサイクルシミュレーションによる性能分析-その2:加熱・暖房モード-」 (2023.05)
[3] C20003「電気自動車の熱管理システムに関する研究開発-搭載バッテリーの発熱特性の検討-」(2021.01)

概要 (英文)

A thermal management system for electric vehicles is proposed in this study. The system can provide the required heat flows for climate control of cabins under various weather conditions, the thermal management for batteries, motors and invertors. It consists of two circuits: one refrigerant circuit to thermally manage cabins and batteries, one coolant circuit for inverters and motors. The system can be classified broadly into two modes: cooling and heat modes. In this report, the cooling mode is focused. One of the advantages of this system is the ability to cool batteries using the evaporation latent heat of water. The water is a byproduct of the heat pump during the cabin cooling process, which means no extra electric energy is consumed due to battery cooling. Calculation results show that the electric power consumption of the system declines by 10% compared to a reference system (the cabin and battery are both cooled by the refrigerant circuit). Another characteristic of this system is the adorption of a polymer coated heat exchanger (PCHE), in which the polymer is utilized to store water. The stored water of the PCHE makes it possible to cool battery without extra electrical energy consumed during parking and charing processes. Simulation results show if there are 400g water stored, the battery temperature can be controlled under 40degree celsius during these charging processes: 10kWh, 15kWh and 25kWh charing capacities using 20kW, 30kW and 50kW fast chargers, individualy.

報告書年度

2022

発行年月

2023/05

報告者

担当氏名所属

張 莉

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

東 朋寛

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

齋川 路之

グリッドイノベーション研究本部

キーワード

和文英文
電気自動車 Electric vehicle
熱管理システム Thermal management system
空調 Air-conditioning
バッテリ Battery
ヒートポンプ Heat pump
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