電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23011

タイトル(和文)

EV充電に対するピーク負荷抑制方策の提案-充電シフトと系統用蓄電池の併用によるピーク抑制の評価-

タイトル(英文)

Proposal of peak load suppression measures for EV charging -Evaluation of peak suppression with a combination of charge shift and storage battery-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
電気自動車(EV)の充電により系統大でピーク負荷が発生する恐れがある。当所のシミュレーション評価でも注1)、急速充電の集中によりピークが発生する可能性が示されており、電力系統側の設備投資注2)を回避するためにもピークを抑制する必要がある。このようなピークの抑制には、充電シフトや系統用蓄電池注3)(以降、蓄電池)の活用が効果的だが、具体的な抑制方策は提案されていない。

目  的
充電シフトと蓄電池を活用したピーク負荷抑制方策を提案する。さらに複数のケースを想定し、交通シミュレータ[1]を用いてピーク抑制効果を評価し、方策を具体化する。

主な成果
充電シフトと蓄電池を併用するピーク負荷抑制方策を考案した。ピーク抑制量の目標値に対して、まずは充電シフトによって抑制し、残りを蓄電池によって抑制する。
1. 充電シフトによるピーク抑制効果
愛知県に4万台のEVが普及している状況を想定し、表1に示す各ケースについて充電負荷カーブを算出した。その結果、充電シフトによってピーク抑制を実現するには、適切なタイミングとシフト量があることが分かった。
・金曜午後に充電しきい値注4)を変化させるケース6注5)におけるピークを基準として、残りのケースのピーク抑制効果を評価した。
・基準ケースに対してピーク抑制効果が現れたのは、木曜日に充電しきい値を40%に上げるケース12のみであった(図1、図2)。
・水曜日に充電しきい値を60%に上げるケース9では、金曜のピークは抑制されるが、水曜に基準ケースと同等のピークが生じ、結果的に抑制にならない(図1)。
2. 蓄電池の併用によるピーク抑制の検討
充電シフトに加え、蓄電池を併用する方策をシミュレーションにより検討した。
・ケース12に対して、66MWhの蓄電池を導入すれば、充電行動の変化が無いケース5と同等のピークまで抑えられることが分かった(図3)。
・ケース6で、ケース5と同等のピークまで抑制するには、107MWhの蓄電池が必要となる。
・両ケースの比較から、1kWhあたり31円の充電インセンティブで充電シフトを行った場合に、蓄電池の容量削減費用 (107MWh - 66MWh = 44MWh)と等しくなる。
・ダイナミックプライス等により、上記インセンティブを下回る料金インセンティブで充電シフトが行えれば、蓄電池設置よりも低コストでピークを抑制可能となる。

注1)高木雅昭,池谷知彦:「電気自動車の搭載電池の大容量化と急速充電器の高出力化によるピーク負荷への影響」,電学論B, Vol.143 No.2, pp.1-9 (2023)
注2)供給力が不足する場合には発電機の増設、送電線や配電線の容量を超過してしまう場合には、送配電設備の増強が必要となる。
注3)蓄電池の充放電制御は、その時の系統状況を考慮して一般送配電事業者が実施するものと想定する。ただし、一般送配電事業者は蓄電池を所有することが出来ないため、市場を通して調整力を調達することとなる。
注4)EVはSOCが充電しきい値を下回ったら、充電ステーションに向かい、SOCが80%になるまで急速充電を行う。
注5)ケース6以降では、充電行動の変化を再現するために金曜午後の充電しきい値を上げている。充電しきい値を上げることで、より多くのEVが充電ステーションに向かうため、結果として大きなピークが発生する。

関連報告書:[1] L09009「充電インフラ検討用次世代自動車交通シミュレータの開発-電気自動車導入に向けた基本解析機能構築-」(2010.06)

概要 (英文)

Recently, the capacities of on-board batteries and the outputs of quick chargers have been increasing. Increase in the battery capacity allows EV owners to charge more freely; however, charging may concentrate at a certain time such as on Friday afternoon, when EV owners charge in preparation for weekend use of EVs that drive relatively long distances. In the previous study, we evaluated the impact of quick charging on peak load at the system level and showed that a large peak occurs when charging behavior changes at a specific timing. To simulate the change in charging behavior, we set up cases that the charging thresholds are raised to 60 percent on Friday afternoon. In this study, we propose a method of dispersing peak loads by charging once before Friday with incentives to promote charging. Three patterns were assumed to trigger charging incentives: Tuesday, Wednesday, and Thursday; two patterns to raise charging thresholds to 60 percent and 40 percent.
Through the analysis targeting Aichi Prefecture, we obtained following findings. (1) If the charging threshold is raised to 60%, the peak suppression effect remains for about two days. However, this measure cannot be used as a peak load suppression measure because a peak nearly equal to the reference case occurs when the charging threshold is raised to 60%. (2) If the charging threshold is raised to 40%, the peak suppression effect remains only about one day. Thus, only cases where the charging threshold is raised to 40 percent on Thursday afternoon shows a suppression effect on Friday's peak. The peak suppression effect on the reference case results in about 15 percent. (3) The economic value of the peak suppression effect of charging incentives is calculated as 31 yen/kWh.

報告書年度

2023

発行年月

2024/05

報告者

担当氏名所属

高木 雅昭

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

池谷 知彦

企画グループ

キーワード

和文英文
電気自動車 Electric Vehicle
急速充電 Quick Charging
ピーク負荷 Peak Load
交通シミュレータ Traffic Simulator
蓄電池 Battery
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry