電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23015

タイトル(和文)

潮流計算プログラムLoad Flow Analyzerの開発-L法の課題を踏まえた解析機能の拡張-

タイトル(英文)

Development of Load Flow Analysis Program 'Load Flow Analyzer' -Functional Enhancement based on the Issues of the Current Program 'L-method'-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
当所既開発の電力系統総合解析ツール(CPAT: CRIEPI’s Power System Analysis Tools)の潮流計算プログラム(以下,L法)は,わが国の電気事業の解析業務において幅広く活用されている。しかし,L法は,長年の開発によりプログラムが複雑化し,機能拡張が難しくなっている。また,L法では,解析するための入力データを設備単位で設定できないことや,PSS/E注1 )等の海外製解析ツールと比べ,Volt-Var制御注2 )が模擬できないなどの課題を抱えており,新たにプログラムを開発する必要がある。
目  的
L法の後継となる潮流計算プログラムLoad Flow Analyzer(以下,LFA)を開発し,その動作検証を行う。また,L法の課題を踏まえて解析機能の拡張を行う。
主な成果
1. L法の後継プログラムLFAの開発と動作検証
L法の入力データ設定の課題注3 )に対処するため,入力データは設備単位で設定可能とし,プログラム内部でノード・ブランチデータを生成することで,設備と解析のデータ管理を分離する設計とした。この設計をもとに,可読性の高いオブジェクト指向言語であるC#注4 )を用いてLFAを開発した(表1)。検証として,電気学会標準系統モデル等を用いて,LFAとL法の計算結果の比較を行い,結果が一致することを確認した(表2)。
2. L法の課題に基づくLFAの解析機能の拡張
(1)Zero Impedance(ZI)ブランチ模擬機能
実設備に含まれる遮断器や断路器(以下,遮断器等)を解析で扱う場合注 5),L法では微小なインピーダンスのブランチ(以下,微小ブランチ)として模擬されるが,数値計算上で誤差の影響が懸念される注6 )。そのため,LFAでは遮断器等をインピーダンスがゼロのブランチ(以下,ZIブランチ)として扱うことを可能とした。計算においては,ZIブランチの接続関係を三角化行列注7 )に反映することで,従来の計算処理を大きく変更せず,ZIブランチを縮約した系統の計算が行えるように改良した(図1)。PowerWorld Test系統注8)を用いて機能の検証を行い,微小ブランチで模擬した場合と比べて,ZIブランチで模擬する場合は数値誤差を抑えられていることを確認した(表3)。
(2)潮流計算でVolt-Var制御を模擬する機能
LFAにおいて,L法に実装されている電圧制御機能(電圧一定制御,ドループ制御)に加えて,Volt-Var制御の模擬を可能とした。簡易な系統モデル注9)を用いた検証の結果,当該設備が監視点電圧に応じて,不感帯や遅相・進相で異なるドループ特性に切り替わり,この特性に従った無効電力が出力されていることを確認した(図2)。

概要 (英文)

Load flow calculation program 'L-method' included in CRIEPI's Power System Analysis Tools (CPAT) has been widely utilized as a standard tool in the electric industry in Japan. However, many years have passed since the initial development, and the program have issues related to maintainability and extensibility. Therefore, we have been developing the load flow calculation program as a new tool that can flexibly respond to analysis needs. This report shows the analysis functions implemented in the renewed version of the load flow calculation program (Load Flow Analyzer; LFA) and its verification.
To deal with the issue of the 'L-method' concerning the input data, LFA is designed to separate data management for equipment and analysis by allowing input data to be set on an equipment basis and automatically generating node and branch data before the calculation. Then, we developed LFA based on the design in C#, an object-oriented programming language. Moreover, we developed the new functions based on the issues of the current program. These functions are as follows.
(1) The function of modeling zero impedance branch for dealing with node-breaker model data
(2) The function to reflect the effects of Volt-Var control in the results of load flow solution
We confirmed that the results of the current program and LFA agree using sample power system models, and the new functions properly calculate the simulation results.


報告書年度

2023

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

野本 悟史

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

小関 英雄

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
CPAT CRIEPI's Power System Analysis Tools
潮流計算 Load Flow Calculation
静特性解析 Static Analysis
ゼロインピーダンスブランチ Zero Impedance Branch
Volt-Var制御 Volt-Var Control
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry