電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23017

タイトル(和文)

電力系統動特性解析プログラムDyna Analyzerの開発-Y法後継プログラムの設計と数値積分手法の検証-

タイトル(英文)

Development of Power System Dynamic Analysis Program "Dyna Analyzer" -Design of Y-method Renewal Program and Verification of Numerical Integration Method-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
当所既開発の電力系統統合解析ツール(CPAT:CRIEPI’s Power system Analysis Tools)は,わが国の電気事業の実務において幅広く活用されており,電力系統の解析ツールのデファクトスタンダードとなっている。再生可能エネルギー電源の導入拡大といった変化を続ける電力系統の解析ニーズに将来にわたって対応できるよう,今後ともCPATの解析機能の高度化を継続していく必要がある。しかし,CPATの主要機能であるY法(動特性解析プログラム)はレガシーなプログラミング言語を使用しており,プログラム構造が複雑であることからモデルや解析機能の追加に多大な労力を要するため,それらの問題を解決したリニューアル版プログラムの開発を行う必要がある。
目  的
Y法と同等の解析機能および計算精度を持ち,拡張性・可読性の高いプログラム構造を有するリニューアル版の動特性解析プログラムを設計・開発する。
主な成果
1.Y法後継プログラムの設計
Y法の後継となるリニューアル版プログラムDyna Analyzer(以下,DA)の開発言語にオブジェクト指向プログラミング言語C#注1)を採用した。可読性の高いプログラム構造とするため,クラス構造を設備,制御,解析の3つに分離し,計算処理は各々に紐づけるように設計した(図1)。これにより,データと処理がまとまった各クラスを個別に管理でき,他のリニューアル版プログラムとの共通化も容易に行うことができる。
2.Y法の数値積分手法の数値的安定性に関する検証
Y法の特徴的な解析手法である短い時間領域の現象に対応した数値積分手法(以下,微分的解法)をDAに再実装するため,数値的安定性の観点から検証を行った。微分的解法は,ラプラス変換表現の微分要素sを伝達関数にて近似し,RK4注2)で解析する手法である(図2)。短い時定数を持つ一次遅れブロックを例にステップ入力の検証を行った結果,単にRK4で解く場合には数値的不安定になる条件であったとしても,微分的解法では安定に解析可能であり,数値的安定性に優れた手法であることを確認した(図3)。
3.DAとY法の比較による動作検証
開発したDAの動作検証を行うため,電気学会WEST10機系統モデルおよび直流設備を含む簡易系統モデル注3)で交流送電線3LG-Oを発生させた。その結果,DAとY法の解析結果が一致することを確認した(図4,図5)。
注1)C#は広く使われているプログラミング言語であり,コンパイル言語かつメモリ管理が容易であるため採用した。
注2)陽的4段4次のルンゲ・クッタ法。DAで発電機などの動特性解析における基本的なモデルの数値積分計算はRK4で行う。
注3)2つの無限大母線と自励式交直変換器による直流系統で構成された電力系統モデル。

概要 (英文)

CPAT (CRIEPI's Power system Analysis Tools), widely utilized within Japan's power industry, requires continuous enhancement of its analytical functions due to the increasing integration of renewable energy sources. The main function of CPAT, known as the Y-method (dynamic analysis program), employs a legacy programming language and a complex structure, prompting the development of a renewal version. Consequently, the Dyna Analyzer (DA) was developed to provide analysis capabilities and computational accuracy comparable to the Y-method, with added improvements in programming extendibility and readability.
DA utilizes the object-oriented programming language C#, dividing its class structure into equipment, control, and analysis categories to enhance readability and manageability. Additionally, DA re-implements Y-method's distinctive numerical integration method and verifies its numerical stability, confirming stable analysis under conditions that typically induce numerical instability. Operational verification involved comparing DA with Y-method using the IEEE WEST10 machine system model and a simplified system model including DC equipment. This comparison showed consistent analysis results, confirming DA's effectiveness and reliability.

報告書年度

2023

発行年月

2024/05

報告者

担当氏名所属

河村 集平

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

菊間 俊明

グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門

キーワード

和文英文
動特性解析 Dynamic Analysis
オブジェクト指向言語 Object-oriented Programming Language
数値積分手法 Numerical Integration Method
直流系統 DC System
数値的安定性 Numerical Stability
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry