電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23019

タイトル(和文)

雷電磁パルスの影響を考慮した配電線雷サージ解析手法の開発(その3)-解析ツールLiCATの開発と実配電線への適用-

タイトル(英文)

Development of Lightning Surge Analysis Method for Distribution Lines (Part 3) -Development of Lightning Surge Analysis Tool LiCAT and Its Application to Real Distribution Lines-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
我が国の高圧配電線(以下,配電線)は,耐雷機材が密に設置されている場合が多いため,誘導雷よりも直撃雷による雷事故の占める割合が高い。直撃雷に対する配電線の耐雷性能評価には,XTAPやEMTP注1)による回路解析が広く用いられるが,これらの解析では,落雷時に発生する雷電磁パルス(以下,LEMP)注2)の影響は考慮されてこなかった。一方,これまでに,FDTD法注3)等による数値電磁界解析を用い,配電線直撃雷においてもLEMPが雷事故率に大きな影響を与える場合があることを明らかにするとともに,回路解析においてLEMPの影響を模擬可能な直撃雷サージ解析手法を開発してきた[1]-[3]。開発手法を用いて,多数の機器が存在し面的な広がりをもつ配電線の解析モデルの作成や解析を容易に実行するためには,利便性の高いグラフィカルユーザインターフェース(以下,GUI)を備えた解析ツールの開発が必要である。
目  的
回路解析においてLEMPの影響を考慮可能で,GUIを備えた解析ツールの開発を行うとともに,開発したツールを配電線雷サージ解析へ適用する。
主な成果
1. LEMPの影響を考慮可能な解析ツール LiCAT の開発
回路解析においてLEMPの影響を考慮可能な雷サージ解析ツールLiCAT注4)を開発した。LiCATは,配電線雷サージ解析のための解析モデルとして,以下に示す項目を設定可能であり,配電線モデルの作成および解析が容易に実行できる注5)(図1)。
・配電系統:架空地線,高圧配電線,低圧配電線を位置座標で指定することにより任意の構成で設定可能
・配電機器:各電柱におけるがいしのフラッシオーバ,避雷器/避雷装置や柱上変圧器モデルおよび接地抵抗値を設定可能
・LEMPの計算:任意の雷放電路形状,大地パラメータを設定可能
・雷撃条件:任意の雷電流波形,雷撃点(配電線および大地)を設定可能
2. LiCATの配電線雷サージ解析への適用
LEMPの影響を考慮した解析では配電線の構成(線路の分岐や雷撃点と線路の位置関係)によって雷サージ発生様相が変化する。一例として,逆流雷による避雷器損傷および誘導雷による変圧器破損が同時に発生した事例注6)についてLiCATを用いて解析した。LiCATによるLEMPの影響を考慮した解析は,逆流雷による避雷器通過電流が増加することに加え,従来の回路解析では再現不可能であった誘導雷による雷過電圧様相を再現するなど,より実現象に即した精緻な解析が実現可能であることを明らかにした(図2)。

注1)eXpandable Transient Analysis Program,Electromagnetic Transients Programの略。接点解析法に基づく回路解析プログラム。
注2)Lightning electromagnetic pulseの略。雷撃に伴い発生する電磁パルスで,配電線に誘導電圧(誘導雷)を発生させる。
注3)Finite Difference Time Domain法の略。時間領域における数値電磁界解析手法の一種。
注4)Lightning channel and Line topology considered Circuit Analysis Toolの略。
注5)解析を行う回路解析プログラム本体は抵抗,インダクタンス,キャパシタンス等の集中定数素子や分布定数線路等の雷サージ解析に必要な素子を備えており,ユーザがこれらを用いて作成したモデルを追加した解析を行うことも可能である。
注6)電気協同研究 第40巻第6号に記載の事例を参考に,低圧柱への直撃雷によって配電線へ逆流する雷電流(逆流雷の一種)によって,高圧配電線で事故が発生した箇所の過電圧/過電流を評価した。

関連報告書:
[1] H20007「雷放電路からの誘導の影響を考慮した配電線直撃雷フラッシオーバ解析」(2021.08)
[2] GD22003「雷電磁パルスの影響を考慮した配電線雷サージ解析手法の開発(その1)―直撃雷サージ解析手法の開発―」(2022.11)
[3] GD23004「雷電磁パルスの影響を考慮した配電線雷サージ解析手法の開発(その2)―傾斜・屈曲した雷放電路の模擬手法の開発―」(2023.10)

概要 (英文)

Direct lightning strikes are the main concern for lightning protection design of medium voltage distribution lines in Japan. Recent studies have shown the lightning electromagnetic pulse (LEMP) impacts on direct lighting performance, and we have proposed an analysis method of a direct strike considering the LEMP influence by electromagnetic transient analysis. A powerful and easy-to-use analysis tool is important for diffusion of lightning surge analysis based on the proposed method, and we developed the lightning surge analysis tool named "LiCAT" (Lightning channel and Line topology considered Circuit Analysis Tool). The developed tool has graphical user interface to assist creation of analysis distribution line models and make it easy to perform lightning surge analysis of complex distribution lines. In this report, the developed tool was applied to the actual lightning fault case caused by direct and indirect lightning. The results show that the developed tool can reproduce the lightning fault aspect which is impossible to reproduce with conventional electromagnetic transient analysis.

報告書年度

2023

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

石本 和之

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

山中 章文

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

立松 明芳

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
配電線 Distribution lines
雷電磁パルス Lightning electromagnetic pulse
直撃雷 Direct lightning
誘導雷 Indirect lightning
回路解析 Electromagnetic transient analysis
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