電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23021

タイトル(和文)

雷電磁パルスの影響を考慮した配電線雷サージ解析手法の開発(その4)-直撃雷に対する雷事故率計算手法の改良-

タイトル(英文)

Development of Lightning Surge Analysis Method for Distribution Lines (Part 4) -Improvement of the Direct Lightning Outage Rate Calculation Method-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
架空地線および避雷器・避雷装置が密に取り付けられた高圧配電線(以下,配電線)では,直撃雷が雷事故の主因となる。XTAP やEMTP 注1)による回路解析に基づく直撃雷事故率計算手法[1]では,雷撃に伴い生ずる雷電磁パルス(LEMP)注2)の影響や雷放電路の形状,雷電流波形の特徴が十分に考慮されていない等の課題があった。一方,これまでに,直撃雷により発生する雷過電圧に対するLEMP の影響を明らかとし[2],回路解析において任意形状の雷放電路から生ずるLEMP の影響を模擬し得る直撃雷サージ解析手法および解析ツールLiCAT 注3)を開発した[3]–[5]。LEMP が雷事故率に与える影響を精度よく評価するには,従来の回路解析に基づく雷事故率計算手法を改良する必要がある。
目 的
従来の回路解析に基づく雷事故率計算手法[1]に改良を加え,LEMP の影響,さらには,屈曲した雷放電路や雷電流の特徴を模擬した各種雷電流波形を考慮可能とし精緻化を図る。改良手法を用いて雷事故率計算を実施し,フラッシオーバ率注4)に対するLEMP の影響を,大地抵抗率および避雷器施設間隔を変数とし詳細に評価する注5)。
主な成果
1. LEMP の影響を考慮可能な直撃雷サージ解析手法による雷事故率計算手法の改良
従来の直撃雷事故率計算手法を改良し,LEMP の影響を考慮した雷事故率計算を実施可能とした(図1)。さらに,屈曲した雷放電路モデルおよび多変量対数正規分布に基づく雷パラメータの計算と雷電流の特徴を模擬した各種雷電流波形を導入し,雷事故率計算手法をより実現象に即した精緻なものとした。
2. 配電線フラッシオーバ率に対するLEMP の影響の詳細評価
改良した雷事故率計算手法により,フラッシオーバ率に対するLEMP の影響を,大地抵抗率および避雷器施設間隔を変数とし評価した。これによると,大地抵抗率が低くかつ避雷器施設間隔が大きな場合に,LEMP 考慮の有無でのフラッシオーバ率の比は大となる(図2)。しかし,我が国で一般的な避雷器施設間隔,例えば200 m(5 柱に1 柱)以下では,LEMP 考慮の有無でのフラッシオーバ率の比は小となる注6)。すなわちこの結果は,我が国の配電線ではLEMP がフラッシオーバ率に与える影響は小さく,従来の回路解析による雷事故率計算結果およびこれに基づく耐雷設計の妥当性を示すものである。一方,避雷器によるフラッシオーバ率の低減効果(図3注7))については,従来手法では避雷器が施設されていない線路でのフラッシオーバ率が小さく見積もられるため,避雷器によるフラッシオーバ率の低減効果もLEMP を考慮した場合と比べ低く見積もられることとなる。
注1)eXpandable Transient Analysis Program,Electromagnetic transients programの略。接点解析法に基づく回路解析プログラム。
注2)Lightning electromagnetic pulse の略。雷撃に伴い発生する電磁パルスで,配電線に誘導電圧(誘導雷)を発生させる。
注3)Lightning channel and Line topology considered Circuit Analysis Toolの略。LEMP の影響を考慮可能な回路解析ツール[4]。
注4)関連報告書 [5] の手法で雷事故とされるがいしのフラッシオーバ・径間フラッシオーバ・耐量超過/累積処理エネルギーによる避雷器焼損のうち,発生頻度が高くLEMP の影響も大きな,がいしのフラッシオーバを取り扱った。
注5)この他に,雷電流波形・雷パラメータの統計値・屈曲した雷放電路の,フラッシオーバ率への影響を評価した。
注6)フラッシオーバの発生は,がいし間電圧の波高値に左右される。がいし間電圧は主に,①コンクリート柱・架空線の分布定数線路特性,②接地電位上昇,③LEMP による誘導電圧により定まる。3 要素の寄与度は例えば大地抵抗率に依存し変化するが,避雷器が十分密に施設された線路では,避雷器の効果によりがいし間電圧が抑制されるため,LEMP 考慮の有無でのがいし間電圧の差は小となり,したがってフラッシオーバ発生率の差も小となる。
注7)避雷器無しの棒グラフに記載した値は,大地雷撃密度1 フラッシュ / [km2 ・ 年] を仮定した場合の,線路100 km当たりの多相フラッシオーバ年間発生回数の計算結果である。

概要 (英文)

Direct lightning strikes to overhead medium voltage (MV) distribution lines are the main concerns for Japanese distribution systems. In this report, we improved the lightning outage-rate calculation program and evaluated the impact of several factors on the lightning outage rate. The improvements for the program are as follows: (i) inclusion of the direct lightning surge analysis method incorporating the lightning electromagnetic pulse (LEMP) impact on the basis of Lightning channel and Line topology considered Circuit Analysis Tool (LiCAT); (ii) rigorous calculation of lightning parameters considering their statistical characteristics and inclusion of realistic lightning current waveforms; (iii) inclusion of a tortuous lightning channel model. Using the improved program, the impact of the following factors on the lightning flashover (FO) rate (this report focused on the FO occurrences and did not consider the arrester failure) was evaluated: LEMPs, lightning current waveforms, lightning parameters, soil resistivities, arrester intervals, and tortuous lightning channels. The representative outcomes are summarized as follows: (i) the LEMP impact on the FO rate is significant for lines with low soil resistivity and large arrester intervals; (ii) the LEMP has a minor impact on the FO rate for lines with close arrester intervals, which are common in Japanese MV lines, regardless of the soil resistivities; (iii) the reduction of the FO rate owing to the surge arrester installation are underestimated by conventional lightning outage-rate calculation programs not considering the LEMP impact.

報告書年度

2023

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

山中 章文

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

石本 和之

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

立松 明芳

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
配電線 Distribution line
雷電磁パルス Lightning electromagnetic pulse
回路解析 Electromagnetic transient analysis
雷事故率計算 Lightning outage rate calculation
避雷器 Surge arresters
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