電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23031

タイトル(和文)

水車発電機固定子巻線の運転中部分放電診断による実発電機での異常診断事例-巻線表面と鉄心間の接触不良による異常の検出-

タイトル(英文)

Example of Fault Diagnosis of Stator Winding of Actual Hydro Generator by On-line Partial-discharge Diagnosis - Detection of Fault due to Poor Contact between Winding Surface and Iron Core -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
運転中部分放電診断に基づく水車発電機の固定子巻線注1)の管理手法は,個々の固定子巻線で発生する部分放電をトレンド管理することにより,経年劣化傾向を把握でき,固定子巻線の適切な更新時期を見極めることができる[1]。しかし,固定子巻線では内部絶縁の経年劣化だけではなく,巻線表面の摩耗,鉄心ずれ,鉄心過熱,巻線エンド部の汚損等の異常現象も生じる。そのため運転中部分放電診断を実適用する上では,固定子巻線の劣化現象と異常現象を見極めることが重要となる。その一環として当所では固定子巻線の異常現象を模擬しその現象や測定信号の特徴を把握する取り組みを実施してきた[2]。しかし,これまで実発電機の運転時に固定子巻線の異常が診断された事例はほとんどなく,運転中部分放電診断における固定子巻線の異常検出の実効性は明確ではない。
目 的
固定子巻線に異常が疑われる発電機に対し運転中部分放電診断を適用し異常種別の同定を試みるとともに,再現実験により異常種別の同定の妥当性を評価し,運転中部分放電診断による固定子巻線の異常診断の実効性を明確にする。
主な成果
1. 運転中の発電機で測定された異常事例
発電機の固定子巻線に対して運転中部分放電診断(図1)を適用した結果,固定子巻線の絶縁が正常である場合に測定される位相分解部分放電(PRPD)パターン注2)とは異なった雲状のPRPD パターンが100kHz 帯の測定周波数帯でのみ測定された(図2)。この雲状のPRPD パターンに対し,前報[2]で作成した固定子巻線の異常判定のためのデータベースと照合したところ,巻線表面と鉄心間での接触不良によるPRPD パターンと一致した。
2. 再現実験による異常種別の同定の妥当性評価
コイル表面と鉄心間での接触不良を模擬した試料注3)(図3)を用いた再現実験において,測定周波数帯を高くすると,雲状のPRPD パターンの大きさは小さくなる傾向を示した(図4)。このため,実機において100kHz 帯で測定された雲状のPRPD パターンの大きさは350kHz 帯以上の測定周波数帯を選択すると減少しノイズレベル以下となり測定できなくなったものと推定される。別途実施した固定子巻線の解体調査では,固定子の巻線のライン側に配置された一部のコイルの低抵抗塗料が消失し,コイルの絶縁部が露出していることが確認された。このことは,巻線表面が摩耗し,巻線表面と鉄心間に隙間が生じていたことを示すものである。これらより,固定子巻線の異常判定のためのデータベースによる異常種別の同定の妥当性が確認された。
以上より,運転中部分放電診断による固定子巻線の異常診断の実効性が明確となった。
注1) 本報告では,鉄心に挿入して結線された状態を「巻線(Wi ndi ng)」と,これを切り出した状態を「コイル(Coil)」という用語で区別して用いる。
注2) PRPD(Phase-resolved partial-discharge)パターンとは電圧位相角に対する部分放電電荷量,発生頻度の情報を表すパターンである。なお,発電機運転時に固定子巻線はその絶縁内部のボイドで部分放電(ボイド放電)が発生することを許容した設計がなされており,ボイド放電の大きさが1 万pC より小さい場合は固定子巻線の絶縁は正常と判断される。ボイド放電の発生位相角は,発電機の電圧位相角のゼロクロス付近からピーク付近であり,正極性と負極性の部分放電の大きさは同じである。
注3) 供試コイルの下面と模擬鉄心(下部)に数100µm の絶縁シートを挟み,供試コイルの表面と模擬鉄心(上部)とのギャップを400µm とし,コイル表面と鉄心との接触不良を模擬している。絶縁シートは,供試コイルの下面を完全に模擬鉄心から絶縁するために設置しており,接触不良は供試コイルの上面で模擬している。
関連報告書:
[1] GD23020 「運転中部分放電診断を活用した水車発電機固定子巻線の管理手法の提案」(2024.7)
[2] GD21034 「水力発電機固定子巻線の保守点検への機械学習手法の導入に向けた基礎検討―固定子巻線異常判定のためのデータベースの構築―」(2022.7)

概要 (英文)

Stator windings of hydro generator are exposed to combined thermal, voltage, environmental, and mechanical stresses, which deteriorate the insulation layer and insulation performance. On the other hand, various stator faults occur in the stator. The stator faults are accompanied by the occurrence of partial discharges, which may lead to dielectric breakdown depending on the type of faults. Conventional diagnostics of insulation degradation in off-line may miss the occurrence of stator faults. To prevent breakdown accidents due to stator faults, it is desirable to apply on-line partial-discharge diagnostics, which enables trend management of the occurrence and progress of stator faults. This report presents a case study of detection of stator faults in operation of generator. The type of stator faults is identified based on reproducible experiments. The possibility of detecting stator windings in the diagnostics of insulation degradation in off-line is discussed. From the above, the effectiveness of on-line partial-discharge diagnostics is clarified.

報告書年度

2023

発行年月

2024/07

報告者

担当氏名所属

倉石 隆志

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

宮嵜 悟

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

金神 雅樹

グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門

キーワード

和文英文
水力発電機 Hydro Generator
固定子巻線 Stator Winding
運転中部分放電診断 On-line Partial-discharge Diagnosis
部分放電 Partial Discharge
巻線の異常 Winding Faults
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