電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD23033

タイトル(和文)

ヒートポンプで利用する環境熱の再生可能エネルギーとしての位置づけの整理

タイトル(英文)

Organization of status of renewable ambient heat harnessed by heat pump systems

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
ヒートポンプを用いた温熱供給は、大気熱や地中熱などの環境熱を利用することで、投入動力比で数倍の温熱を供給できる。IEA(国際エネルギー機関)やEU(欧州連合)では、ヒートポンプで利用する環境熱の内、温熱に関しては再生可能エネルギー(再エネ)と位置づけ、定量化・統計化を進めている。一方、わが国では環境熱を再エネとして位置づけるものの、定量化・統計化には至っていない。
目  的
ヒートポンプで利用する環境熱の内、温熱が再エネと位置づけられている根拠を熱力学的に示す。また、温熱量の定量化・統計化に関する海外および日本での動き、および定量化・統計化の意義を整理する。
主な成果
1. ヒートポンプが利用する環境熱(温熱)が再エネである根拠
ヒートポンプが利用する環境熱(温熱)は、環境が持つ太陽光等が起源の内部エネルギーが熱源であり、この環境熱は「永続的に利用可能」なため再エネとみなされる。熱力学的には、ヒートポンプはこの再生可能な環境熱の利用により、投入動力比で数倍 注1)の熱供給が可能となっている(図 1)。
2. ヒートポンプで利用する環境熱を再生可能エネルギーとする国際的な動き
・ ヒートポンプで利用する環境熱を再エネと位置づけたのは、2009 年 の EU 指令とわが国のエネルギー供給高度化法が先駆けである(表 1)。
・ EUでは 2019 年のエネルギー統計から、ヒートポンプで利用する環境熱(温熱)を再エネに含めており、再エネ導入の政策目標に、環境熱を含めている。
・ IEAでは 2020 年からヒートポンプで利用する環境熱(温熱)を再生可能な熱に含め、 2023年には世界の環境熱の利用量を推計・公表した。統計上では、熱供給事業で利用する環境熱をエネルギー統計の一次エネルギーに計上している。
・ 日本では 2023 年の参議院環境委員会で、ヒートポンプを再生可能エネルギー利用技術と明確化することについて「様々な整理とか検討が必要な課題だというふうに認識」との政府答弁があり、今後の定量化・統計化への動きが期待される。
・ なお、ヒートポンプによる冷熱供給に関しては、EUでは 2022 年から冷熱の一部を再エネと見なして定量化を開始したが、IEA では冷熱を再エネに含めておらず、取り扱いが分かれている。
3. ヒートポンプで利用する環境熱の定量化・統計化の意義
ヒートポンプで利用する環境熱の定量化・統計化は次の意義を持つと考えられる。
・ ヒートポンプによる環境熱の供給というエネルギー利用実態と、エネルギー統計が整合する。環境熱の供給と断熱等によるエネルギー負荷低減が分離可能になる。
・ わが国の家庭用ヒートポンプ給湯機の累積販売台数 900 万台以上に代表される低炭素化のための環境熱利用の実績を、国際的に定量的にアピールできる。
・ 将来の再エネ目標に環境熱を組み込むことで、熱部門の低炭素化、輸入化石燃料の削減、およびエネルギーセキュリティの向上が促進される。
今後の展開
国内外の関係機関と連携して、ヒートポンプで利用する環境熱の定量化・統計化に必要な数値の整備を進める。
注1) ここでは二次エネルギー基準のエネルギーバランスを考えている(図1)。

概要 (英文)

Heat pumps supply several times more energy than the input power because they harness ambient heat existing in the ambient such as air, water, and ground. International Energy Agency (IEA) and European Union (EU) have positioned ambient heat harnessed by heat pumps as renewable energy and have quantified and statized the data. The purpose of this report is to summarize the reasons why the ambient heat is positioned as a renewable primary energy and the benefits in quantification and statisticization of ambient heat. The obtained results are as follows. The ambient heat harnessed by heat pumps is the heat retried from the internal energy of the ambient, which is thermal energy originating from sunlight incidence, etc., and can be utilized permanently. Thus, the ambient heat is recognized as renewable energy. The quantification and statisticization of ambient heat harnessed by heat pumps are considered to have the following significance. (1) The energy statistics including the ambient heat can be consistent with the actual energy uses and can separate the supply of ambient heat by the reduction of the heat loads by thermal insulation. (2) Japan can appeal the achievements of the large amount of the renewable ambient heat supplied by heat pumps to reduce carbon emissions, such as the cumulative sales of more than 9 million residential air-to-water heat pump water heaters. (3) The policy target such as the renewable shares including ambient heat will promote renewables heat including ambient heat leads to the low-carbon heat sector, the decrease in imported fossil fuels, and the improvement of energy security.

報告書年度

2023

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

山本 博巳

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

齋川 路之

電力中央研究所

キーワード

和文英文
環境熱 Ambient heat
ヒートポンプ Heat pump
再生可能な熱 Renewable heat
大気熱 Air-source heat
エネルギー統計 Energy statistics
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