電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

GD24001

タイトル(和文)

需要側機器による無効電力補償の地点別価値評価手法の提案-太陽光発電大量導入時の電圧上昇対策-

タイトル(英文)

Proposal of Evaluation Method for Locational Value of Reactive Power Compensation by Demand-side Equipment - Voltage Stabilization under Large-scale Penetration of PV Systems -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 太陽光発電(PV)からの逆潮流による配電系統の電圧上昇問題に対して、需要側に設置された機器注1)(以降、需要側機器)を用いた無効電力補償が提案されている[1]。これまでの研究で需要側機器の費用対効果等は明らかとなった。ただし、需要側機器による効果は連系点によって異なるため、活用を促進するには地点別(ノード別)の評価が必要である。

目  的
 需要側機器による無効電力補償の地点別の費用対効果(地点別価値)評価手法を提案する。更に、地点別価値と無効電力補償に必要な容量との関連性を評価する。

主な成果
1.需要側機器の地点別価値評価手法
 地点別価値を、同等の効果となるSVCのコストに基づき定義した(図1)。その上で、系統モデル(図2)を用いた数値計算により、以下の手順で地点別価値を算出する手法を考案した(図3)。
① 全需要家ノードにPVが設置されていると想定し、電圧逸脱解消に必要な需要側機器の設備容量を算出する[1]。
② 需要側機器の設備容量を1ノードずつゼロ注2)にし、電圧逸脱解消に必要なSVCの増加容量をノード単位で算出する注3)
③ 需要側機器の設備容量をゼロとした時のSVCの増加コスト注4)を需要側機器の設備容量で割った値を、当該ノードの地点別価値とする。
 なお、上記の手法では、設備容量をゼロにする順番によって当該ノードの地点別価値が変わるため(図4)、全ての順番の平均値として評価する必要がある。
2.地点別価値と無効電力補償に必要な容量との関連性評価
配電線のこう長等の条件を変化させた時の地点別価値と必要容量を数値計算により算出した。
・ノード間で比較すると、高圧線の末端に近いノード程、需要側機器の必要容量は大きくなるが、地点別価値としてはほぼ差が無い(図5, 6)。
・配電線のこう長が短い程、需要側機器の必要容量は小さく、地点別価値は高くなる。一般的にはこう長が短い程、電圧逸脱は発生しにくくなるが、一旦発生すると必要容量が小さくても地点別価値としては高くなるケースがあることを示した。
 以上より、需要側機器の系統貢献度を評価する際は、地点別価値と必要容量の二つの観点が必要であることが分かった。今後は、これらを明示的に考慮した評価指標を考案する。

注1)インバータを含む機器に関しては、交流側に発生する電圧を制御することで所望の無効電力を補償することができるので、需要側機器の候補となる。なお、本報告では、PVは需要側機器に含めていない。
注2)潮流計算においてノードは系統上の接点を表し、本報告においては、需要家ノードは需要家端を意味する。また「設備容量をゼロとする」は需要側機器を撤去するか無効電力補償機能を無くすことを意味する。
注3)需要側機器の設備容量をゼロとする順番については、需要側機器が設置されたノードの順列全てを評価対象とした。例えば、需要側機器が4ノードに設置された場合、4!=24パターンが評価対象となる。
注4)耐用年数22年と利子率4%、300kVAのSVC1台当たりの費用1,500万円から3,460円/kVA/年と算出。

関連報告書:
[1] Y15007「PV大量導入時における無効電力補償装置の費用対効果分析手法の開発-複数の電圧上昇対策の組み合わせの考慮-」(2016.04)

概要 (英文)

Since the Japanese government enforced the feed-in tariff scheme, the installed capacity of photovoltaic (PV) systems has been increasing rapidly. Reverse power flows from PV systems cause voltage-rises in distribution networks. As for the voltage stabilization with reactive power, SVC (Static Var Compensator) has been installed in the high-voltage distribution networks until now. On the other hand, an idea of reactive power compensation using demand side equipment in the low-voltage side is proposed as a promising alternative. This report proposes an evaluation method for locational value of reactive power compensation by demand-side equipment. First, assuming a PV penetration rate of 100%, we calculate the capacity of the demand-side equipment when only the demand-side equipment is used for countermeasures for voltage rise. Then, we evaluate the substitution effect of the demand-side equipment for SVC by each node based on the capacity increase of SVC when the capacity of the demand side equipment is set to zero one node at a time. We obtained following findings. (1) As a result of evaluating the locational value by distinguishing the order in which the capacity of the demand-side equipment is set to zero, at the first order, the nodes closer to substations have higher locational value; after the second order, the nodes closer to the end of the high-voltage line tend to have higher locational value. (2) The locational values change depending on the order in which the capacity of the demand-side equipment is set to zero; therefore, it is desirable to evaluate the locational value as an average value of all orders without distinguishing the order. (3) As a result of evaluating the locational value by point without distinguishing the order in which the capacity of the demand-side equipment is set to zero, the nodes closer to the end of high-voltage lines, the larger capacity of the demand-side equipment is required, but as for the locational value, there is almost no difference between the nodes.

報告書年度

2024

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

高木 雅昭

グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門

キーワード

和文英文
太陽光発電 Photovoltaic Generation
需要側機器 Demand Side Equipment
SVC SVC
無効電力 Reactive Power
地点別価値 Locational Value
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