電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD24004
タイトル(和文)
発電機電圧に高調波電圧が重畳する場合の水車発電機固定子巻線の部分放電特性
タイトル(英文)
Partial discharge characteristics in stator winding of hydrogenerator under harmonic voltages superimposed on generator voltages
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
大型回転機では主絶縁に耐部分放電特性に優れたマイカが使用され,部分放電の発生を許容した絶縁設計がなされている。発電機固定子巻線注1)の絶縁診断では部分放電に着目し,部分放電電荷量の推移から絶縁破壊電圧の推定や絶縁劣化診断,PRPDパターン注2)から絶縁劣化や異常の原因の判断を行っている。 一方,昨今のパワーエレクトロニクス機器の増加により,電力系統内で高調波電圧が観測されている。商用周波数の電圧波形(以下,基本波電圧)に高調波電圧が重畳することで,部分放電の発生頻度,部分放電電荷量,及びPRPDパターンといった部分放電特性が変化する可能性がある。このため,高調波電圧重畳による固定子巻線の部分放電特性への影響を把握する必要がある。
目 的
基本波電圧に高調波電圧を重畳させてコイルバー注1)の部分放電を測定し,高調波電圧による部分放電特性への影響を解明する。また,発電機電圧に高調波電圧が重畳した実水車発電機で固定子巻線の部分放電を測定し,コイルバーの部分放電の測定結果と比較する。さらに,高調波電圧重畳下の固定子巻線の絶縁診断の留意事項を示す。
主な成果
1.高調波電圧の重畳がコイルバーの部分放電特性に与える影響の解明
実機で想定されるような高調波電圧の次数や割合注3)を変化させた電圧を基本波電圧に重畳してコイルバーに印加し,部分放電を測定した(図1)。高調波電圧の振動に同期して部分放電が発生し,PRPDパターンが変化しており,また,高調波電圧の次数や割合の増加に伴い,部分放電の発生頻度は増加するものの,最大放電電荷量注4)への影響は小さかった(図2)。以上のことを表1にまとめる。
2️.発電機電圧に高調波電圧が重畳した実発電機における部分放電測定事例
特殊な事例注5)ではあるが,電力系統に接続された負荷で発生した周波数が2~4 kHz 程度の高調波電圧が発電機電圧に重畳した水車発電機の固定子巻線で,部分放電を測定した(図3)。コイルバーの部分放電の測定結果と同様に,高調波電圧が重畳した場合,PRPDパターンが変化するものの,最大放電電荷量への影響は小さかった。
3. 高調波電圧重畳下の固定子巻線の絶縁診断の留意事項
高調波電圧の最大放電電荷量への影響は小さいため,絶縁破壊電圧の推定や絶縁劣化診断に最大放電電荷量が利用できる。一方,PRPDパターンから絶縁の劣化や異常の原因を判断する際には,高調波電圧の次数や割合が小さい日に診断する注6),もしくは発電機を電力系統から切り離して発電機を単独運転させて診断する等の対応が必要である。
注1)一巻のコイルを鉄心に設けられた溝に複数本入れ三相回路を成すように接続した状態を巻線と呼び,実験用にコイ
ルを加工したものをコイルバーと呼ぶ。
注2)Phase-resolved partial discharge pattern の略で部分放電の電荷量や頻度を発生位相角に対応させて表示したものである。
注3)高調波電圧の含有する商用周波数 (50 Hz, 60 Hz) の整数倍の周波数を次数で表現する。また,商用周波数の交流電圧
の振幅に対する高調波電圧の振幅を振幅比と呼ぶ。
注4)国内で慣例的である部分放電が交流電圧1 サイクルあたり1 パルス以上発生する中で最大の電荷量とし𝑞𝑞maxと称す。
注5)一般に150 Hz, 250 Hz のような周波数の低い高調波電圧が観測され,2 ~4 kHz 程度が観測された特殊な事例である。
注6)具体的な測定条件は,高調波電圧の次数が11 次以下で,割合が2%以下である。
概要 (英文)
Harmonic voltages are generated due to non-linear loads in power systems. Harmonic voltages superimposed on the fundamental waveform cause higher and steeper voltage, which can lead to partial discharges (PDs) occurrence in power apparatus. In this paper, to clarify the influence of harmonic voltage on PD characteristics of stator windings of hydrogenerators, we investigate the effect of harmonic order and ratio on PD behavior using a coil bar, which is extracted from the stator windings. As a result, harmonic voltages change the phase-resolved PD (PRPD) pattern. Furthermore, the PD magnitude is not affected by the harmonic order and ratio. We also measure PDs of hydrogenerator windings under the superimposed harmonic voltage on the generator voltage, which is compared by the measurement results of the coil bar.
報告書年度
2024
発行年月
2024/12
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
中村 信 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
倉石 隆志 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
宮嵜 悟 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
高調波電圧 | Harmonic Voltage |
部分放電 | Partial Discharge |
水車発電機 | Hydrogenerator |
固定子巻線 | Stator Winding |
絶縁診断 | Insulation Diagnosis |