報告書番号

GD24033

タイトル（和文）

CVケーブル絶縁体の絶縁破壊強度に及ぼす熱劣化の影響に関する実験的検討

タイトル（英文）

Experimental Study on the Effect of Thermal Aging on Electrical Breakdown Strength of XLPE Cable Insulator

概要 （図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております）

背　　景
交流用CVケーブルの主な劣化要因は水トリー現象注1）であり，その発生や進展を抑制する方策が開発・採用されてきた注2）。実際，遮水構造や乾地部布設のCVケーブルは，湿地部布設のCVケーブルに比べて水トリーの進展による絶縁性能の低下が緩やかであることが報告されている注3）。このため，これらのケーブルでは長期間の運用が期待されるが，長期運用に伴い水トリー現象以外の劣化現象が顕在化する可能性が懸念される。その一つに熱劣化による電気絶縁性能の低下が考えられる注4）。そこで，熱劣化させたCVケーブル絶縁体の交流絶縁破壊強度を簡易な電極系で測定し注5），熱劣化のCVケーブルの電気絶縁性能への影響を検討する必要がある。
目　　的
熱劣化させたCVケーブル絶縁体の交流絶縁破壊強度の測定に用いる簡易な電極系を提案する。また，その電極系を用いた測定結果から，熱劣化によるCVケーブル絶縁体の交流絶縁破壊強度への影響を実験的に検討する。
主な成果
1. 熱劣化させたCVケーブル絶縁体の絶縁破壊強度の測定に用いる簡易な電極系の提案
加熱試験の容易さや絶縁体の外部への露出状態の観点から，ケーブル絶縁体をシート形状に加工することなくケーブル形状のまま恒温槽内で加熱することにした上で(表1)，熱劣化させたCVケーブル絶縁体の交流絶縁破壊強度の測定に用いる簡易な電極系を検討した(表2)。その結果，絶縁体加工の容易さや熱的影響の面から，加熱後のケーブルからシート状試料を切り出し，球－平板電極間に挿入してエポキシ樹脂でモールドした電極系を測定に用いることにした(図1)。この電極系の検証のため，表面が平滑なPETシートの交流絶縁破壊強度を当該電極系で測定したところ，測定結果は文献でのPETシートの測定値と同程度でそのばらつきも小さいことを確認した(表3)。
2. 熱劣化によるCVケーブル絶縁体の交流絶縁破壊強度への影響の実験的検討
過酷な酸化条件である大気雰囲気下注6）で，酸化防止剤の消失後まで加熱したCVケーブル絶縁体注7）の絶縁破壊強度を上記の電極系で測定した(図2)。その結果，絶縁破壊強度の大きな変化は現れなかった。酸化防止剤の消失後，ある程度継続して加熱されたとしても，CVケーブル絶縁体の絶縁破壊強度に大きな影響を及ぼさない可能性がある。
今後の展開
実際の運用状況を想定した条件で加熱したCVケーブル絶縁体の絶縁破壊強度を測定し，熱劣化によるCVケーブルの電気絶縁性能への影響を検討する。

注1）絶縁体中の水分が，異物，ボイド，半導電層表面の突起などによる局所的な高電界部に集まることで，絶縁体中にトリー状の欠陥が形成される現象。
注2）例えば，製造過程にて絶縁体での水分残留を抑制する「乾式架橋方式」や，運用中にて絶縁体への水分浸透を防ぐ遮水構造の一つとして「アルミラミネート遮水層」などが開発・採用されてきた。
注3）川原他，電気学会論文誌A, Vol. 137, No. 11, pp.639-644 (2017) や，髙橋他，電気学会 誘電・絶縁材料／電線・ケーブル合同研究会，DEI-25-077, EWC-25-015 (2025)。
注4）CVケーブル中心導体に電流を流すと導体が発熱する。なお，導体の常時許容温度は90℃，短時間許容温度は105℃。
注5）CVケーブルの絶縁破壊試験には，ケーブル端末部での絶縁破壊を防ぐ処理や大容量の高電圧電源が必要である。また，JIS C 2110-1:2016に記載の固体絶縁材料の交流絶縁破壊試験法では，部分放電が結果に影響する可能性がある。
注6）シースは酸素の透過を阻害するため，今回のように，シースを除去したケーブルに対する大気雰囲気下での加熱試験は，実際のケーブルに比べて過酷な酸化条件となる。
注7）大気雰囲気下・140℃で最大2500時間程度まで加熱した後に，化学分析(酸化開始温度の測定)によって酸化防止剤の残存具合を推定。1200時間程度の加熱で酸化開始温度は下げ止まり，酸化防止剤が消失した状態であると推定 [1]。

関連報告書：
[1] H17006「導体通電加熱により熱ストレスを付与した実機 CV ケーブル絶縁体の様相変化に関する考察」（2018.05）

概要 （英文）

Although it is well known that the main deterioration cause of XLPE cables of rated voltage of and less than 77 kV is water tree deterioration, it is reported that water tree deterioration is suppressed in XLPE cables laid in dry conditions or those with a water-barrier layer. Therefore, thermal deterioration is a candidate for the deterioration cause of such XLPE cables for the long-term operation. In order to understand the influence of thermal deterioration on the electrical insulation performance of the XLPE cable, it is important to measure the electrical breakdown strength of the thermally aged XLPE material itself. In this study, a measuring method of the electrical breakdown strength of a XLPE sheet sliced from the thermally aged XLPE cable with a sphere-plane electrode system molded with an epoxy resin was investigated. Firstly, in order to confirm that the molded sphere-plane electrode system is useful to measure the breakdown strength of the sheet sample itself, the breakdown strength of PET sheet whose surface is very smooth was measured. As a result, the measurement value was consistent with a literature one that was under McKeown electrode system. Then, the breakdown strength of XLPE sheets sliced from XLPE cable thermally aged in an oven at 140 degree celsius until their initial oxidation temperatures bottomed out were measured. As a result, their breakdown strength did not change with heating time so much. These results suggest that the electrical insulation performance of XLPE cable is not much deteriorated under the thermal deterioration.

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