電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD25027
タイトル(和文)
直流送電を介した電力変動の伝搬を抑制する制御の基礎的検討-直流送電両端の変換器キャパシタを活用した同期発電機への影響緩和-
タイトル(英文)
A Fundamental Study on Control Methods for Suppressing the Propagation of Power Disturbances through HVDC Transmission - Mitigation of the Impact on Synchronous Generators Using Converter Capacitors at Both Ends of an HVDC System -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
大量導入した再生可能エネルギー(以下,再エネ)の電力を消費地へ送る形態として,直流送電が注目されている。特に,小規模系統に再エネが大量導入され,その電力を大規模系統に直流で送電する場合,受電端側の大規模系統で事故が発生して直流送電の潮流が制限されると,送電端側の小規模系統では需給不均衡により系統の周波数が急変する懸念がある注 1)。一方,モジュラーマルチレベル変換器(MMC)注 2)のキャパシタを充放電し,電力の急激な変動の伝搬を抑制するバッファ制御が検討されている注 3)。しかし,既存のバッファ制御において,直流送電両端のMMCのキャパシタを十分に活用しながら,同期発電機への影響を抑制した先行研究は無い。
目 的
同期発電機への影響を効果的に抑制するため,直流送電両端のMMCを活用したバッファ制御を提案し,妥当性を瞬時値シミュレーションにより検証する。
主な成果
1. 直流送電両端のMMCを活用したバッファ制御の提案
各MMCで,端子間の電力変動(事故前後の電力の差分)の伝達関数を関数 F_1 又は F_2 で実現可能にするバッファ制御を提案した(図1)。本制御では,事故系統側端子の電力変動を検出し,関数 F_1 又は F_2 に応じてMMCのキャパシタのエネルギー指令値を変更する。加えて即応性を高めるため,非事故系統側端子の電流をフィードフォワード制御で補正し,MMCのエネルギーの変動を補償する(図2)。直流送電両端のMMCに与える関数 F_1 及び F_2 を結合すると,直流送電全体の伝達関数は F≅F_1 F_2となる(図3)。この結果,各MMCの F_1 及び F_2 を調整してMMC間に配分するエネルギーを調節しつつ, F に応じて直流送電を介した電力変動の伝搬を抑制可能にした注 4)。
2. 2端子直流送電を用いた瞬時値シミュレーションによる検証
瞬時値シミュレーションで検証用モデル(図4)を作成し,提案制御を検証した注 5)。ここで F_1 及び F_2 は,蓄積されるエネルギーが両端のMMC間で等配分されるように決定した注 6)。バッファ制御が無い場合は,事故発生により当該交流系統側の電力 p_ac1 は零になり,その結果,非事故系統側の電力 p_ac2 も零になる(図5)。一方,提案したバッファ制御の場合,直流送電両端のMMCのキャパシタのエネルギー w_1,w_2 を増加させて電力変動の一部を吸収し,非事故系統側の電力 p_ac2 の変動を抑制できた。これにより,非事故系統の同期発電機の電気出力の変動及び周波数の変化率(RoCoF)を抑制できた。
注1)慣性をもたないインバータで連系している再エネ電源や直流送電の容量が系統容量に対して大きい,すなわち,並列されている同期発電機の合計容量が系統容量に対して小さい場合に本懸念はより顕著になる。
注2)単位変換器を直列接続して高耐圧,大容量を実現する交直変換器。MMC(Modular multilevel converter)と呼ぶ。
注3)例えば交流側で急激な電力変動が発生した際には,一時的にMMC内部のキャパシタで電力変動の一部を吸収することで,MMCの直流側での電力変動を抑制できる。本稿ではこのような手法をバッファ制御と呼ぶ。
注4)許容されるMMCのエネルギーの変動範囲であれば F_1 , F_2 は独立に決定でき,キャパシタの充放電を調整できる。
注5)一例として同期発電機1機の単純な系統を想定し,バッファ制御が無い場合と比較して系統の等価的な慣性定数が大きくなるように直流送電全体の伝達関数F を決定している。なお,この場合の関数F は定数となる。
注6)ここでは,2端子直流送電の両端のMMCの仕様は同じとしており,蓄積されるエネルギーを等配分することで片端子への偏りを回避し,両端のMMCのキャパシタを十分に活用できる。
概要 (英文)
This paper examines buffer control using converter capacitors in a two terminal HVDC transmission system that interconnects two AC power systems. In a two-terminal HVDC system, when a fault occurs in one of the AC systems and power transmission is halted, power disturbance arises in the other, non-faulted AC network. This disturbance becomes more significant as the capacity of the HVDC increases, causing rapid variations in the electrical output and rotational speed of synchronous generators in the non-faulted system, which in turn lead to abrupt changes in system frequency.
To address this issue, this paper proposes a method that suppresses the power disturbance in the non-faulted system by applying a buffer control scheme in which a portion of the power disturbance is absorbed by the capacitors of the converters constituting the HVDC system. The validity of the proposed method is verified through electromagnetic transient (EMT) simulation, confirming that it can suppress rapid changes in the electrical output and rotational speed of synchronous generators.
報告書年度
2025
発行年月
2026/04
報告者
| 担当 | 氏名 | 所属 |
|---|---|---|
主 |
榎本 光芳 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
共 |
菊間 俊明 |
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 |
キーワード
| 和文 | 英文 |
|---|---|
| 直流送電 | HVDC |
| モジュラーマルチレベル変換器 | MMC |
| 交流事故 | AC fault |
| バッファ制御 | Buffer control |
