電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
GD25034
タイトル(和文)
火山灰の付着による送電用がいし絶縁性能への影響評価(その3)-ポリマーがいし耐火山灰特性の評価およびリスク評価システムの提案-
タイトル(英文)
Influence of volcanic ash deposits on insulating performance of transmission insulators: Part 3 - Evaluation on applicability of polymer insulators and proposal of risk assessment system -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
架空送電線においては、火山噴火時のトラブルとして、火山灰に起因するがいし絶縁性能の低下による電気事故注1)が懸念されることから、その影響範囲を見極め、設備対策あるいは洗浄等の復旧対応策の要否を判断する必要がある。当所では、これまで磁器がいしを対象に、実際の火山灰試料(阿蘇山降灰、2016年10月採取)を用いた人工降灰試験注2)を実施し、同じ降灰条件でも、がいしの種類や設置角度注3)が変わると降灰付着量や湿潤時のフラッシオーバ電圧(FOV)が異なること、ならびに、降灰量の増大に伴いFOVは低下するが、降灰付着量にはがいしの種類ごとに上限値があり、FOVも下限値を持つことなどを確認してきた[1~3]。一方で、近年、適用拡大が進むポリマーがいしについては検討がなされておらず、その耐火山灰特性を把握する必要がある。
目 的
実火山灰を用いた人工降灰試験から、ポリマーがいしの耐火山灰特性を評価する。また、実際の火山噴火を想定し、がいしの絶縁性能低下リスク推定と洗浄対策検討が可能となるリスク評価システムを提案する。
主な成果
1. ポリマーがいし耐火山灰特性の評価
阿蘇山降灰を用いた人工降灰試験により、磁器がいしを比較対象として、ポリマーがいしの火山灰付着特性およびFO特性を評価注4)した。その結果、磁器がいしに比べて胴径が細く、笠先端が鋭角であるポリマーがいしは、単位漏れ距離当たりの降灰付着量が少なく(図
1)、降灰量の増大時に問題となるFOVの下限値注5)も高くなることが確認され(図2)、降灰環境下におけるポリマーがいしの適用可能性が示唆された。
2. 降灰付着時のがいし洗浄効果の確認
がいしへの降灰付着による絶縁性能の低下リスク増大への現場対応の一つとして、がいし洗浄による絶縁性能の回復効果(洗浄効果)を検討した。その結果、ブラシ等を用いた乾式洗浄による降灰除去範囲の割合が高くなる(電極間の全笠間数に対する洗浄笠間数が多くなる)ほどFOVは高くなり、洗浄効果も高くなることが確認された(図3)。
3. 降灰付着時の絶縁性能低下リスク評価システムの提案
これまでの実験結果をもとに、実際の火山噴火を想定し、がいしの絶縁性能低下リスクや洗浄対策の要否を提示する基本計算アルゴリズムを構築し(図4)、PC上で実行可能な簡易型のリスク評価システムを提案した。降灰種類に応じて、「付着し易さ」と「電解質濃度」を選択入力することにより、「想定降灰量」に対する対象設備の「危険度(印加電圧と想定FOVの差)」や、「推奨洗浄レベル(洗浄割合)」が一覧表として示される。
注1)例えば、2016年10月の阿蘇山噴火に伴い、九州電力(当時)管内の66 kV送電線および変電所がいし設備への降灰付着により、約27000戸に最長5時間半の停電が発生した。
注2)がいし表面を水洗いした後、上方から乾燥火山灰を落下させ、降灰を付着させることで、各試料への降灰付着特性を評価した。また、降灰付着試料に対し注水時のFO特性を評価した。
注3)実環境で想定されるがいしと降灰源(風向)の角度を、火山灰試料を垂直に落下した際の試料設置角度で模擬し、水平置きを「0°」、笠上面への降灰を「+」、笠下面への降灰を「-」とした。
注4)供試したがいしは、77kV用ポリマーがいし、250S懸垂がいし、5A長幹がいしである。ポリマーがいしについては、撥水性が喪失された過酷条件を模擬し、表面処理により事前に撥水性を除去して試験を実施した。
注5)磁器懸垂がいし、磁器長幹がいし、ポリマーがいしのそれぞれで最もFOVが小さくなる設置角度で評価した。
関連報告書:
[1] H18016「火山灰の付着による送電用がいし絶縁性能への影響評価-降灰付着特性と注水フラッシオーバ特性-」(2019.05)
[2] NR22007「がいしへの降灰付着解析モデルの開発と付着特性の評価」(2023.04)
[3] GD23008「火山灰の付着による送電用がいし絶縁性能への影響評価(その2)-降灰量と絶縁低下の関係-」(2024.04)
概要 (英文)
Transmission lines have often suffered flashovers caused by volcanic ash deposits on the insulators. Understanding of the influence of volcanic ashes on insulating performance and construction of mitigation and/or restoration measures against the flashover incidents are needed. We have investigated the properties of volcanic ash deposition on some porcelain insulators and their flashovers in wet condition by some artificial tests using actual volcanic ashes.
In this research, we evaluated the properties of volcanic ash deposition and flashovers of polymer insulators as a comparison with porcelain insulators. Because the polymer insulators showed smaller ash deposition and higher flashover voltage than the porcelain insulators, it was confirmed that polymer insulators had sufficient applicability to the transmission lines in active volcanic regions. Also, cleaning of specified ratio of ashes deposited on the insulators by a brush was clearly effective to resume insulating performance of the insulators. Finally, we proposed a risk assessment system which could estimate the flashover risks of the insulators during volcanic eruptions and indicate required clean level of ashes deposited insulators to restore the integrity of suffered transmission lines.
報告書年度
2025
発行年月
2026/06
報告者
| 担当 | 氏名 | 所属 |
|---|---|---|
主 |
本間 宏也 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
三好 雅仁 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
北 直樹 |
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 |
共 |
竹内 晋吾 |
サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門 |
共 |
土志田 潔 |
サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門 |
キーワード
| 和文 | 英文 |
|---|---|
| がいし | Insulator |
| 火山灰 | Volcanic ash |
| フラッシオーバ | Flashover |
| 送電線 | Transmission line |
| リスク評価 | Risk assessment |
