電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

M20002

タイトル(和文)

メタネーションによる海外水素の発電利用時の経済性および環境性評価

タイトル(英文)

Economic and Environmental Evaluation of Power Generation with Overseas Hydrogen using Methanation

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
水素(H2)のエネルギーキャリアの一つとして、メタネーションを用いた合成メタン(合成CH4)が提案されている。合成CH4は、既設の液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)設備で使用することが可能で、設備の改造や追加を必要としない利点を持つが、燃焼後に二酸化炭素(CO2)が排出される。そのCO2排出が地球温暖化に及ぼす影響はメタネーションに用いたCO2の種類(化石燃料起源、再生可能エネルギー起源)に依存するため、それらを考慮した合成CH4の経済性および環境性の評価が求められる。

目  的
海外のカーボンフリーH2を活用し合成CH4として国内のガスタービン複合発電設備(GTCC:Gas Turbine Combined Cycle)で利用することを想定し、発電コスト、直接CO2排出原単位注1)、ならびに海外や国内におけるメタネーションに必要なCO2調達量を試算することで、有用な合成CH4サプライチェーンを明らかにする。

主な成果
メタネーションの場所(海外/国内)とメタネーションに用いるCO2の種類(天然ガス起源/木質バイオマス起源/CO2リサイクル)の組合せによる6ケース、比較のため、液化H2やLNGを直接燃料として利用するケース等を想定し、発電コスト、直接CO2排出原単位、CO2調達量の試算を行った。試算には、カーボンリサイクル技術ロードマップ等、2050年を想定した将来技術の諸元を用いた。
1. 発電コスト
各ケースについて、均等化発電原価注2)の考えに基づき発電コストを試算した。海外で調達した合成CH4(②③④)は液化H2(①)より発電コストが低い。これは、メタネーションにより輸入前の燃料コスト(H2原料、CO2原料、メタネーションの費用)が約1.6倍になる一方、輸送コスト(液化、積地、海上輸送、揚地の費用)が約1/3になるためである。国内で製造した合成CH4(⑤⑥⑦)は、液化H2(①)と比較し、液化H2の高い輸送コストに加え、国内でメタネーションを行うため発電コストが高くなる。
2. 直接CO2排出原単位
各ケースについて、化石燃料起源CO2の大気への排出量を、総発電量(メタネーションのCO2源とした火力発電と合成CH4を消費した火力発電の発電量)で除し、直接CO2排出原単位を試算した(図2)。直接CO2排出原単位について、LNG(⑧)と比較し、天然ガス起源のCO2を用いた合成CH4(②⑤)は約50%のCO2削減効果しかなく、CO2リサイクルによる合成CH4(④⑦)は回収分約90%のCO2削減効果を持つ。木質バイオマス起源のCO2を用いた合成CH4(③⑥)はカーボンニュートラルとなる。
3. CO2調達量
グリーン成長戦略を基に合成CH4の発電量割合を10%とした場合、メタネーションのCO2調達量は約5,000万t/年と試算された(②~⑦)。このCO2を大規模な発電所から調達する場合、140万kW級天然ガスGTCCで約5.0%、20万kW級木質バイオマスボイラで約1.8%しか賄うことができない。そのため、国内での全量調達は難しく、海外での調達はCO2を集約できる立地のみで可能と考えられる。CO2リサイクル(④⑦)は、回収分があるため新たなCO2調達量を500~900万t/年まで低減できると試算された。
4. 総合評価
発電コスト、直接CO2排出原単位、CO2調達量の観点から、木質バイオマス等の再生可能エネルギー起源のCO2を用いて、海外でメタネーションを行った合成CH4が有望なH2エネルギーキャリアと考えられる。そのCO2調達量に課題がある場合、CO2リサイクルを行うことでCO2調達量を約1/6にすることができる。

注1) 関係設備の建設や消費電力に応じて、間接的に化石燃料起源のCO2が排出されるが、本研究では、各ケースにおいて燃料の消費により直接発生するCO2排出量のみを考慮した。
注2) 金銭価値の将来的な不確実性を踏まえた上で、稼働年数の間の総費用を総発電量で除した数値。

概要 (英文)

Power generation cost, CO2 emission intensity from fuel use, and CO2 amount were estimated assuming carbon-free hydrogen from abroad is used as synthetic methane in a gas turbine combined cycle (GTCC) in Japan. For the estimation, the specifications of future technologies were used in 2050 when technological innovations in the technology roadmap etc. were achieved. The main findings are as follows:
The power generation cost of synthetic CH4 with methanation abroad is lower than that of liquefied H2. The power generation cost of synthetic CH4 with methanation in Japan is higher than that of liquefied H2.
Compared to the CO2 emission intensity of natural gas, synthetic CH4 using CO2 from fossil fuels has a CO2 reduction effect of about 50%, while synthetic CH4 using CO2 recycling has a CO2 reduction effect of about 90%.
Based on the Green Growth Strategy in Japan, the CO2 amount for methanation was estimated to be about 50 million tons/year. When this CO2 is procured from large-scale power plants, only about 5.0% can be covered by a 1,400 MW-class GTCC plant and only about 1.8% by a 200 MW-class wood biomass boiler.
Based on the results of the above estimations, synthetic CH4 with methanation abroad using CO2 from renewable energy sources is considered to be beneficial. If there is a problem in procuring CO2, CO2 recycling can reduce the required CO2 amount by about 1/6.

報告書年度

2020

発行年月

2021/03

報告者

担当氏名所属

泰中 一樹

エネルギー技術研究所 エネルギープラットフォーム創生領域

森 則之

エネルギー技術研究所 エネルギープラットフォーム創生領域

山本 博巳

エネルギーイノベーション創発センター テクノロジープロモーションユニット

竹井 勝仁

材料科学研究所

キーワード

和文英文
水素エネルギーキャリア Hydrogen Energy Carrier
メタネーション Methanation
合成メタン Synthetic Methane
発電コスト Power Generation Cost
CO2排出原単位 CO2 Emission Intensity
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