電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

N16011

タイトル(和文)

地下岩盤の地化学環境調査・評価技術の開発(その5)-六ヶ所サイト地下空洞周辺の酸化還元境界のドリル孔を使った原位置調査-

タイトル(英文)

Development of the investigation and evaluation method for geochemical condition of underground (part 5) In-situ investigation using drill holes at the Rokkasho site -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
低レベル放射性廃棄物の余裕深度処分の安全評価を行う上で、施設周辺の天然バリアの地化学特性の酸化還元状態は、人工バリアの長期安定性や埋設される金属類の腐食などに影響するため重要な評価項目である。当所では、六ヶ所サイトの地下空洞を利用して原位置での地化学環境の調査技術の開発を進めてきた1,2,3)。これまでの調査で、地化学環境の詳細調査に、ドリル削孔式の調査手法が有効であることがわかってきたが、酸化還元電位(Eh)等は大気混入の影響で安定した測定が困難であった1)。

目 的
地下空洞周辺の地化学環境の詳細調査技術の開発のために、ドリル削孔式水質調査法にパッカーを加えた調査法の適用性の確認を行い、空洞周辺の地化学環境を評価する。

主な成果
新第三紀の堆積性軟岩の分布する六ヶ所サイトの坑道を用い、坑壁に沿って約20箇所、水平距離約5~20 m間隔で、坑壁に深さ約0.85 m 直径25~30 mmの孔を削孔した。孔口に小型パッカーを設置して湧水をフローセルに導き、大気の混入の影響を排除した状態でEh、溶存酸素(DO)、pH、電気伝導度(EC)を測定し、また、採水の水質分析を行った。その結果、以下が明らかになった。
1)ドリル削孔式水質調査法の適用性の検証
ドリル孔にパッカーを設置することにより、Eh、DO、pH、ECの安定した測定値を得ることができた。また、透水係数が10-8~-9 m/sよりも大きい箇所で本手法が適用できた。本調査法を用いることで、ボーリング孔を用いるより簡易に高密度な調査が可能となった。
2) 調査結果から考察される地化学環境
酸化フロントの直下でpHは約7の最低値を示し、下方に向かって徐々に上昇した。Ehはマイナス側の値を持ち、DOは0 mg/Lを示した。 SO42-やT-Fe濃度は下位に向かい低下した。これらは、地表から浸透してきた酸素が酸化フロントで黄鉄鉱などを酸化し、生じたH+イオンなどが下位に浸透する化学的風化モデルで説明できた。酸化フロントの下にpHが低下した「溶解帯」が厚さ約10 mで分布することを明らかにした。

今後の展開
地化学環境の調査手法の適用性を高めるため、岩種や風化条件の異なる箇所での調査を行うとともに、長期の地化学環境変化評価に対応した調査技術の開発を行う。

概要 (英文)

For the safety assessment of the low level radioactive waste disposal site, it is necessary to evaluate the geochemical conditions of the natural barrier around facilities. In this study, geochemical investigation method using drill holes was applied to a test cavern of the Rokkasho site. The water quality from drill holes 0.85 m depth with small packers was measured using flow cells in the tunnel located near a redox boundary. As a result, the stable value of Eh, DO, and EC were obtained. The pH values were 7 at oxidation front and changed 8 to lower part. Eh values were minus side and DO values were 0 mg/L under the oxidation front. SO42- and T-Fe concentrations were changed low to deeper part. These are a process of oxidation of pyrite at oxidation front and infiltration of H+ and other ion to the rock. The low pH zone was distributed 10 m of thickness under the oxidation front.

報告書年度

2016

発行年月

2017/05

報告者

担当氏名所属

大山 隆弘

地球工学研究所 バックエンド研究センター

猪原 芳樹

地球工学研究所 バックエンド研究センター

キーワード

和文英文
低レベル放射性廃棄物処分 low level radioactive waste disposal
地化学環境 geochemical condition
酸化還元 redox
pH pH
溶存酸素 dissolved oxygen
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