電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR23005

タイトル(和文)

叙事知に重点を置いた人間信頼性解析(HRA)の定性分析ガイド(2023年度版)

タイトル(英文)

Guide for Qualitative Analysis in The Human Reliability Analysis (HRA) with Emphasis on Narratives (FY 2023 Edition)

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
確率論的リスク評価(PRA: probabilistic risk assessment)の技術向上の一環として、人間の対応失敗の評価を定量的に扱う人間信頼性解析(HRA: human reliability analysis)注1)の高度化の必要性が高まり、電力中央研究所は「叙事知注2)に重点を置いたHRAガイド」を2018年度に発行[1]、2020年度に改定[2]した。これにより、詳細に定性分析が必要なタスクの選定とそれに対する現実を適切に反映した評価が可能となった。しかし、複数ある叙事知収集手段の適切な選択方法が未整備である。また、これまで内的事象や津波事象をHRAガイドでは取り扱ってきたが、内部ハザード(内部火災事象、内部溢水事象)におけるHRA実施上の留意点は未整備である。
目  的
定性分析で重要となる叙事知収集手段の適切な選択方法を示す。また内部ハザードPRAにおけるHRA実施上の留意点を整備し、HRAガイドを改定する。
主な成果
下記(1)(2)に基づき、本報告「叙事知に重点を置いたHRAの定性分析ガイド(2023年度版)」を取りまとめた。これにより、適切な叙事知収集手段を選択し、効率的かつ現実をより適切に反映したHRAが可能となる。
(1) 叙事知収集手段の選択方法の整備
リスク重要度の高いタスクでは詳細な定性分析が必要なため、運転手順書等の資料調査を行う「プラント情報・シナリオ検討結果の精査」に加え、実態把握のための「現場調査」「訓練観察」、関係者への聞き取りのための「トークスルー注3)」「インタビューシートを用いたインタビュー」が適宜必要となる。そこで、「プラント情報・シナリオ検討結果の精査」と、最も情報収集範囲が広く、調査対象・調査範囲を柔軟に変更可能な「インタビューシートを用いたインタビュー」の実施を基本とした上で、叙事知の収集状況や重要度に応じ、それら以外の手段を柔軟に活用する現実的な叙事知収集手段の選択方法(図1)を整備した。
(2) 内部火災事象及び内部溢水事象におけるHRA実施上の留意点の整備
内部火災事象では、火災によるシステムへの影響(計器損傷等)や消火活動との輻輳、環境悪化とそれによるMCR注 4)からの退避等の特有の留意点があるため、HRAにおいて収集すべき叙事知等をまとめた(表1)(付録III)。また、内部溢水事象に特有の留意点を踏まえ、リスク評価上重要となり得る溢水停止操作のHRAについてまとめた(表2)(付録IV)。これらにより、各事象においてより適切に現実を反映したHRAを可能とした。
注 1)タスク実施の具体的状況を分析する“定性分析”、この結果をもとにして人的過誤確率を評価する“定量評価”がある。
注 2)叙事知(Narrative)とは、認知/診断(プラントの状態把握、実施すべきことの決定など)を含む人間の行動の背景に関する情報(人間がおかれている物理的環境や時間的制約条件など)。
注 3)実際または模擬された環境において運転員が実施する内容とその際の心理状態を、1アクションずつトレースしながら、運転員自身に説明させるタスク分析方法。
注 4)Main Control Room:中央制御室、または中央操作室のこと。

概要 (英文)

As a part of the technological improvement of probabilistic risk assessment (PRA) methods, it is necessary to improve human reliability analysis (HRA) that quantitatively assesses the probability of human errors. As a HRA methodology reflecting reality more appropriately, the Nuclear Risk Research Center published "The Human Reliability Analysis (HRA) Guide with Emphasis on Narratives" in FY2018 and revised it in FY2020. This enabled selecting tasks that required detailed qualitative analysis and evaluating them appropriately reflecting the reality of the tasks. The present revision organizes different techniques of collecting information for developing narratives (e.g., interviews using interview sheets, talk-throughs, on-site surveys, and training observation) and shows an example of a flow of selecting collection techniques for narratives in detailed qualitative analysis according to the range of narratives as already grasped by analysts and their importance. This is expected to facilitate efficient qualitative analysis. In addition, based on the experience of applying the HRA Guide to internal hazard PRAs, points on HRA for those PRAs are prepared as appendices. These revisions are expected to be useful for conducting more efficient HRA reflecting reality more appropriately for PRA on various events.

報告書年度

2023

発行年月

2024/05

報告者

担当氏名所属

野々瀬 晃平

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

佐相 邦英

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

武田 大介

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

桐本 順広

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

George Apostolak

原子力リスク研究センター

キーワード

和文英文
人間信頼性解析(HRA) Human Reliability Analysis (HRA)
定性分析 Qualitative Analysis
叙事知 Narrative
人的過誤事象(HFE) Human Failure Event (HFE)
事故シナリオの文脈 Accident Scenario Context
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry