電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR23007

タイトル(和文)

人的過誤確率評価モデルの構築-緊急時対策本部における意思決定-

タイトル(英文)

Construction of Human Error Probability Evaluation Model: Decision Making in Emergency Operations Facility

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
福島第一原子力発電所事故を契機に、確率論的リスク評価技術向上の一環として、人間信頼性解析(Human Reliability Analysis:HRA)には、地震や津波等への対応として行われる過酷状況下でのタスクの人的過誤確率(Human Error Probability:HEP)の評価が求められている。過酷状況下では、緊急時対策本部における意思決定が想定されるが、既往HRA手法は主に内的事象の中央制御室対応が対象であり、過酷状況下での緊急時対策本部でどのような認知失敗モード(Cognitive Failure Mode:CFM)が起きうるか、検討されていない。

目  的
過酷状況下タスクの中でも重要性の高い緊急時対策本部における意思決定を対象として、より現実を反映した評価とするために考慮すべきCFMを調査・特定した上で、特定したCFMのHEP評価モデルを構築する。

主な成果
1. 考慮すべきCFMの特定
IDHEAS-Gの考えに則りHEP評価モデルを開発すべく、過酷状況下において緊急時対策本部での意思決定が行われた実事例となる福島第一原子力発電所事故の調査報告の記述内容の調査や総合防災訓練観察の結果から、「重要なデータの収集を早期に終了する」及び「意思決定のためのデータの解釈が遅れる」を考慮すべきCFMとして特定した。
2. 特定したCFMのHEP評価モデルの構築
(1)CFMに寄与する行動影響因子(Performance Influence Factors:PIF)の設定
各CFMに寄与するPIFを設定するために、上記調査報告の記述内容の調査、総合防災訓練観察や文献調査、及びHRA実務者等の専門家判断ワークショップによる議論を実施した。その結果、「意思決定必要性の認識」等の本状況独自のものを含む合計9のPIFが整理された。
(2)ディシジョンツリーの作成とHEP推定
PIFの影響を2択(POOR/GOOD等)で評価する基準を整備した。全PIFの影響の組み合わせを表現するため、各PIFの影響(2択)を分岐とするディシジョンツリーをCFM毎に作成し、専門家判断ワークショップを再度開催し、全ての終端に対してHEPの推定を行った。

これらのディシジョンツリーを用いたHEP評価モデルを使い、PIFの分岐を評価対象の状況に合わせて評価していくことで、上記2つのCFMのHEP評価が可能となった。

概要 (英文)

Since the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident, Human Reliability Analysis (HRA) is required to estimate Human Error Probability (HEP) for tasks performed under extreme conditions such as earthquakes, tsunamis, and other events. Although important decisions can be made in an emergency operations facility under these conditions, existing HRA methods mainly focus on main control room responses to internal events, and possible Cognitive Failure Modes (CFMs) in the emergency operations facility under these conditions has not been examined.
The present study identified "delayed interpretation" and "premature termination of critical data collection" as CFMs that should be considered in decision making in the emergency operations facility through surveys and then conducted two expert workshops to develop evaluation models to estimate the HEPs of these CFMs. In the first workshop, experts discussed possible PIFs relevant to the two CFMs and then organized them as decision trees representing the presence/absence of the PIFs. In the second workshop, experts discussed the decision tree branching criteria and estimated the HEPs of each terminal value. The evaluation models developed with the decision trees are expected to contribute to estimating the HEPs of decision making in the emergency operations facility.

報告書年度

2023

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

武田 大介

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

桐本 順広

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

早瀬 賢一

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

野々瀬 晃平

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

佐相 邦英

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

キーワード

和文英文
人間信頼性解析 Human Reliability Analysis (HRA)
人的過誤確率 Human Error Probably (HEP)
専門家判断 Expert Elicitation
緊急時対策本部 Emergency Operations Facility
意思決定 Decision Making
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry