電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

NR23008

タイトル(和文)

原子力をめぐる信頼と地域対話のためのリスクコミュニケーションガイド

タイトル(英文)

Nuclear risk communication guide for trust and community dialogue

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
原子力発電所における事故や災害、トラブル後の再発防止策において、原子力事業者と地域との、あるいは組織の内部でのコミュニケーションの不足があったことが反省点にあげられてきた。リスクのより適切なマネジメントに資する、あらゆるステークホルダが多様な情報及び見方を共有するリスクコミュニケーション(以下、リスコミと略す)の方法論が示された、国内の原子力事業者向けのガイドが求められている。
目  的
原子力事業者が、ステークホルダとの双方向のやりとりを通じ、リスクのより適切なマネジメントを的確に判断できる十分な情報が共有されている、と信頼し合える関係を構築するために、リスコミの課題、目指すべき点を明らかにし、日頃の地域対話の中でリスコミに関わる担当者向けに知見を解説するガイドを作成する。
主な成果
1. 国内原子力事業とリスクコミュニケーションの課題
原子力事業者は、東京電力福島第一原子力発電所事故後の信頼回復において、リスク管理及びリスク情報活用による安全性の向上と、リスコミの推進を掲げてきた。他方で、地域との関係を規定する「地元了解」のプロセスは以前から変わらず、事業者の地域対話には、信頼構築と社会受容の二重の意味が課せられている。また、地域の関心が高い緊急時の備えに関する対話は、多様なステークホルダの参加を必要とするため制度・実践ともに課題がある。信頼の障壁となりやすい制約がある地域対話の中で、信頼を得られる手法が必要であることを明らかにした。
2. 先行知見にみる原子力のリスクコミュニケーションの目指すところ
米国での成り立ちにおいて社会的な課題解決が必要と認識されている原子力事業でのリスコミは、信頼構築の鍵となる活動に位置付けられる。さらに国際機関や英国等の事例をみると、意思決定の質を高めるため、コミュニケーションを通じて外部からの意見を積極的に取り入れ、自分たちで咀嚼した上で改善につなげるステークホルダとの関わり(エンゲージメント)を目指している。また、緊急時対応では、時間的な制約がある危機(クライシス)管理とは異なり、危機の発生を想定して備えるための合意形成(緊急時の備え)と、被害からの回復や信頼回復は平常時と同じ双方向対話の形を目指している(図1)。これらの手法は国内原子力事業者の目指すべき点として参考になる。
3.多様な想定読者に対応する形式と構成でのガイド提案
リスコミに関わる担当者(本ガイドの想定読者)は、広報・地域共生、原子力技術・安全、発電所所員、組織のマネジメント層など本業の職制や経験年数に幅がある。このため、本ガイドは、実践の場での注意点や全体像を把握できる概要版(図2)と、本編で詳しく学ぶ設計とした。本編は、実践(計画・実施する)・備え(緊急時に備える)・背景(背景を理解する)・心構えの4つで構成した。実践ではリスコミの手順と対話の要点を説明し、備えは今後充実すべき課題である緊急時の備え、背景は参照する知見と方向性、心構えは参考になる原則などを掲載した。本編も各項目を単独で読めるようにスライド形式の冊子とし、解説1枚に対して図表を2~6枚とした。ニーズに合わせて必要な項目を選択できるように仕事に役立つリストを入れるなどの工夫をした。
今後の展開
本ガイドはリスコミの取扱説明書のような位置づけであり、新人教育やベテランのスキルアップ研修などにも利用できる。これを出発点に、必要に応じ、実務的な詳細をまとめた応用編ガイドを作成する。

概要 (英文)

The electric utilities have reflected on the lack of risk communication (RC) with the local community and within their organization in their improvement measures after the accidents or the events of the nuclear power plants (NPPs). For better management of risk, an RC methodology in which all stakeholders share diverse information and perspectives is important, and a guide to be developed for Japanese nuclear operators would be useful.
Therefore, this guide describes the key aspects of RC to help the utilities to build better relationships with society and manage nuclear risks. The intended audience for this guide is public relations and community relations personnel and nuclear technology and safety personnel. The RC guide consists of two parts: the full version and the overview version that summarizes the key points of RCs that are useful in community dialogue for nuclear power plants.
This guide focuses on planning and conducting risk communication, preparing for emergencies, understanding the background of RC, and useful principles.
The guide is positioned as an instruction manual for RC and is expected to be used for skill enhancement training.

報告書年度

2023

発行年月

2024/06

報告者

担当氏名所属

桑垣 玲子

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

桐本 順広

原子力リスク研究センター リスク評価研究チーム

キーワード

和文英文
リスクコミュニケーション Risk Communication
原子力安全 Nuclear Safety
地域対話 Community Dialog
リスク管理 Risk Management
ステークホルダの関与 Stakeholder Engagement
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