電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

O18006

タイトル(和文)

多流体近似シミュレーションを用いた火砕流における粒子運動の推定-高濃度・希薄粒子流への適用-

タイトル(英文)

Estimation of particle motion in a pyroclastic flow using numerical simulation based on multi-fluid approximation - Application to dense and dilute granular flows -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
火山噴火に伴い発生する火砕流の影響評価は,電力設備の立地・運用対策の検討において重要である.火砕流の流動構造は粒子濃度等により多様に変化するため,これまでに,想定する粒子濃度や計算負荷等に応じた様々な数値解析手法が開発されてきた.しかし,粒子濃度による火砕流の流動構造の変化を精度良く再現する手法については,十分に確立されていない.一方,火山噴煙柱を対象に当所で開発を進めてきた多流体近似注1)とサブグリッドモデル注2)に基づく解析手法[1]は,高濃度・希薄粒子流の双方を想定したモデルの知見を新たに取り入れることで,多様な火砕流の高精度予測も可能にするものと期待されるが,そのような試みはこれまでに行われていない.

目 的
高濃度・希薄粒子流の双方を想定した多流体近似とサブグリッドモデルに基づく手法を用いて,火砕流の数値解析を行う.高濃度および希薄な粒子条件での既往の実験結果との対比から,火砕流における粒子運動の予測に対するその適用性を評価する.

主な成果
1. 高濃度・希薄粒子流の双方を想定した計算手法による火砕流の数値解析
当所で開発を進めてきた火山噴煙柱解析手法に高濃度・希薄粒子流の双方を想定したモデルの最新知見を反映し,これを用いて高濃度および希薄な粒子条件での火砕流の数値解析を行った.その結果,火砕流における粒子濃度に応じた渦の形成等の流動の変化を表現できることを明らかにした.
2. 火砕流現象に対する本計算結果の適用性評価
既存の実験・数値実験と本計算結果との対比から,一定の格子解像度(火砕流初期高さの1/20以下の格子解像度)等の条件下では火砕流の粒子運動予測に対する定量的信頼性を確保できることを示した.ただし,粒子流の停止過程における予測精度は低いことも明らかとなった.高濃度粒子領域における摩擦効果が適切に機能していない可能性があり,これに関わるモデルの改善が有効であるものと推察された.

今後の展開
本報において渦の形成等の確認に留まっている粒子混合過程の更なる再現性評価や,粒子流の停止過程における予測精度向上に向けた検討を行う.

注1) 気体成分と様々な粒径の粒子を複数の相に分類し,それぞれの相に対する流動や熱輸送を予測するもの.粒子相も流体(連続体)として扱われる.様々な粒径の粒子の運動の再現性に優れている.
注2) 非定常流動解析手法の一種で,計算格子のスケールより小さい流体・粒子運動のみをモデル化するもの.複雑な流動場の再現性に優れている.

関連報告書:
[1]N12003「降下火山灰影響評価のための噴煙柱の数値流体解析(その1)ー噴煙形状に及ぼす乱流モデルの影響評価ー」(2012.08)

概要 (英文)

The numerical simulation of a pyroclastic flow movement was performed using the multi-fluid approximation and sub-grid model which assume both dense and dilute granular flows. The numerical results showed that this method could express the variations of granular flows with the particle concentration and with the degree of the initial fluidization of particles. Moreover, in comparison between our simulation and the results of the existing physical and numerical experiments (Roche et al., JGR, 2008; Ishimine, JVGR, 2005), the quantitative reliability of this method was ensured under specific conditions of the grid resolution and wall condition. Since the stopping process of granular flows was predicted with lower accuracy, however, the improvements in modelling friction effects in dense granular regions are a problem to be solved in the future.

報告書年度

2018

発行年月

2019/03

報告者

担当氏名所属

須藤 仁

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

太田 一行

地球工学研究所 流体科学領域

中尾 圭佑

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

服部 康男

原子力リスク研究センター 自然外部事象研究チーム

キーワード

和文英文
火砕流 pyroclastic flow
多流体近似 multi-fluid approximation
サブグリッドモデル sub-grid model
高濃度粒子流 dense granular flow
希薄粒子流 dilute granular flow
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