電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Q16004

タイトル(和文)

高精度アトムプローブトモグラフィのための電界蒸発シミュレーション―鉄と銅の蒸発電界と表面拡散の影響―

タイトル(英文)

Field evaporation simulation for high precision atom probe tomography -Effect of field evaporation and surface diffusion of iron and copper on field evaporation-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
原子炉圧力容器鋼の中性子照射脆化においては溶質原子クラスタが照射脆化の主な要因であり、溶質原子クラスタの観察には通常、アトムプローブトモグラフィー(APT)が用いられている。APTは、原子の電界蒸発によって材料表面から放出されたイオンを位置敏感型検出器と質量分析の組み合わせにより三次元的な原子位置の再構成を行っているが、APTの像を再構成する時にアーチファクトと呼ばれる像の乱れが生じることがある。アーチファクトの原因のうち、元素毎の蒸発電界の違いにより生じる軌跡の収差や針状試験片表面における電界蒸発時の拡散など実験では検証の困難な要因によるものがあり、APTの観察データの精度の向上のためには、これらの影響を理論計算により正確に見積もる必要がある。
目 的
鉄(001)上の鉄と銅および体心立方構造の銅(001)上の銅の吸着原子を対象に電界の強さによる蒸発障壁エネルギーと蒸発電界の関係を調べる。さらに、電界が印加された状態における鉄(001)上の鉄と銅の表面の移動エネルギーを求める。
主な成果
有効媒質(ESM : Effective Screen Medium)法により電界を印加した第一原理計算(PWSCFコード)により以下の結果を得た。
1. 鉄(001)上または銅(001)上の鉄または銅の蒸発電界
鉄(001)上に鉄原子または銅原子、銅(001)上に銅原子が吸着した構造に対して電界を印加した条件で第一原理計算を行った(図1)。電界の強さによる蒸発障壁エネルギーの違いを解析することにより鉄(001)上における鉄および銅、銅(001)上の銅の蒸発電界を求めたところ(図2)、鉄の蒸発電界(32.60V/nm)は実験値(35V/nm)[1]と良い一致を示した。銅(001)上における銅の蒸発電界は鉄(001)上における鉄および銅よりも約10%小さく、電界蒸発し易いことがわかった。
2. 電界を印加した系における鉄(001)上の鉄または銅の表面拡散
鉄(001)上に鉄原子または銅原子が吸着した構造に対して電界を印加した状態における表面拡散の移動エネルギーの第一原理計算を行った。電界が大きくなるにつれて表面拡散の移動エネルギーが小さくなり、電界がない場合に比べて電界28V/nmにおいては約40%の大きさとなることがわかった(図3)。また、鉄(001)上における銅の拡散の移動エネルギーの方が鉄よりも小さく、銅の方が表面拡散し易いことがわかった。

概要 (英文)


報告書年度

2016

発行年月

2017/04

報告者

担当氏名所属

大沼 敏治

材料科学研究所 構造材料領域

西田 憲二

材料科学研究所

キーワード

和文英文
アトムプローブトモグラフィ Atom probe tomography
第一原理計算 First-principles calculation
蒸発電界 Filed evaporation
表面拡散 Surface diffusion
溶質原子クラスタ Solute cluster
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