電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Q18007

タイトル(和文)

低温での引張特性評価に向けたシアパンチ試験機構の開発

タイトル(英文)

Development of mechanism of shear punch testing for tensile property evaluation at low temperatures

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

【背 景】
発電用プラントで用いられている構造材料の機械的特性変化を標準的な試験片よりも小さい小型試験片を用いて評価することで,限られた材料から多くのデータを取得でき,また,従来法では試験の難しい材料の局所領域に対する評価が可能となるため,より高い信頼性での評価が期待できる。近年,鉄鋼材料の引張降伏応力を評価する手法として,直径約8 mmの小型円板状試験片の中央部を,これより小さな直径の円柱状の押し棒で打ち抜くシアパンチ試験注1が注目されている。同試験は主に室温での試験が実施されているが,既存の引張試験の代替技術として利用するためには,様々な温度条件で試験できる装置を開発し,これにより試験データを充実させる必要がある。
【目 的】
直径8 mm,厚さ0.5 mmの小型円板状試験片に対し,室温以下の低温から室温までの温度域でシアパンチ試験を実施できる試験機構を開発する。開発した試験機構を用いて,4種類の鉄鋼材料を対象にシアパンチ試験を行い,その結果に基づいて引張特性(降伏応力,引張強さ)を評価できることを示す。
【主な成果】
1. 汎用疲労試験機を活用したシアパンチ試験機構の開発
恒温槽を備えた汎用疲労試験機に脱着可能であり,試験機の恒温槽および単軸負荷を活用して室温以下の低温から室温までの温度域でシアパンチ試験を実施できる試験機構(図1)を開発した。本機構を備えた専用治具(図1)と汎用疲労試験機を組み合わせ,4種類の鉄鋼材料(析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼,一般構造用炭素鋼,原子炉圧力容器鋼A533B Cl.1鋼およびSQV2A鋼)を対象に,室温にてシアパンチ試験を実施した結果,応力変位関係,せん断降伏応力,最大せん断応力を取得することができた。

2. せん断降伏応力,最大せん断応力の温度依存性
SQV2Aを対象に,-120°C,-50°Cおよび-25°Cにてシアパンチ試験を実施した結果,室温での試験と同様,せん断降伏応力および最大せん断応力を取得することができた。両特性値は試験温度の低下に伴い上昇し,引張特性と同様の温度依存性を取得することができた。

3. シアパンチ特性と引張特性の相関
各材料に対して得られたせん断降伏応力は引張降伏応力との間に直線関係を示した。また,最大せん断応力と引張強さの間にも直線関係が認められ,シアパンチ試験により,様々な温度域における引張特性を評価できることを示した。

【今後の展開】
中性子照射された原子炉圧力容器鋼(照射材)に対する試験を想定し,照射材を簡便に取り付けできるシアパンチ試験機構を開発し,その性能確認を行う。

概要 (英文)

The shear punch test technique, utilized by very small specimens 8 mm in diameter and 0.5 mm thick, has recently emerged as one of the alternatives for the uniaxial tensile test. CRIEPI developed a mechanism of shear punch test, which is capable of testing not only in room temperature but also working under various temperature conditions. In this study, four kinds of steels for mechanical structures were subjected to the shear punch tests at temperatures from -120C to RT. Tests were successful for all the materials and stress-normalized displacement curves were obtained at RT. The curves behaved similarly to those in uniaxial tensile tests; namely an initial elastic region, followed by a plastic region, in which stress continues to increase with displacement, then peaks, whereupon the load declines to failure. Yield stress and maximum tensile stress could be evaluated by the shear punch results by converting the elastic limit in shear stress and the maximum shear stress assuming pure shear deformation. The Japanese RPV; SQV2A was subject to shear punch tests at low temperature conditions down to -120C and the stress-normalized displacement curves could be obtained as same as RT condition. Temperature trends in terms of shear yield stress and maximum shear stress showed decreasing trends similar to those in yield stress and tensile strength in uniaxial tensile tests. Overall, the capability of the shear punch test technique to evaluate tensile property was demonstrated.

報告書年度

2018

発行年月

2019/04

報告者

担当氏名所属

小林 知裕

材料科学研究所 構造材料領域

三浦 靖史

材料科学研究所 構造材料領域

山本 真人

材料科学研究所 構造材料領域

キーワード

和文英文
微小試験技術 Small specimen test technique
シアパンチ試験 Shear punch test
せん断降伏応力 Shear yield stress
最大せん断応力 Maximum shear stress
温度依存性 Temperature dependence
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