電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Q19005

タイトル(和文)

確率論的破壊力学を用いた健全性評価へ向けた板厚方向の破壊靭性分布評価手順の提案

タイトル(英文)

Proposal of evaluation procedure for through-wall fracture toughness distribution for structural integrity assessment by means of probabilistic fracture mechanics

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
確率論的破壊力学(PFM) 注 )は、原子炉圧力容器(RPV)の破損確率を定量的、合理的に判断できる次世代の健全性評価の方法論として国内外で注目され、わが国でもPFM解析を実施するためのガイドライン注 )が整備された。同ガイドラインでは現行の監視試験注 )データを活用してPFM解析を実施出来る。監視試験ではRPV板厚の1/4厚さ位置の破壊靭性のみが評価対象であり、板厚方向への破壊靭性分布がPFM解析の入力条件としては考慮されてこなかった。破壊靭性の板厚方向への分布を考慮しない場合、過度に保守的な解析となる可能性があるが、その考慮がPFM解析における原子炉圧力容器の破損確率に及ぼす効果は明らかでない。
目  的
板厚4mmの超小型破壊靭性試験片注 )を用いたマスターカーブ法破壊靭性評価注 )によってRPV板厚方向の破壊靭性分布を評価し、これをPFM解析の入力条件として反映する手順を提案する。また、実機の破壊靭性試験データと提案手順に従うケーススタディにより、加圧熱衝撃事象下の原子炉圧力容器の破損確率を計算し、板厚方向の破壊靭性分布が解析結果に及ぼす影響を明らかにする。
主な成果
1. 板厚方向の破壊靭性分布を考慮したPFM入力条件設定法の提案
超小型破壊靭性試験片を用いてRPV板厚各部の破壊靭性試験を実施し、関連温度注 )初期値RTNDT,0の板厚方向分布を評価する手法を提案した。監視試験の一環として落重試験で得られる値に代えて提案手法によるRTNDT,0を用いることで、板厚方向の破壊靭性分布を考慮したPFM解析のための入力条件を得ることが可能となった(図1)。
2. 加圧熱衝撃事象下のPFM評価に及ぼす破壊靭性分布の効果
米国で廃炉となった実機圧力容器Zion発電所1号機の廃炉材母材部を対象に評価した破壊靭性の板厚方向分布データ注 )に基づき、提案手法に従い板厚方向の靭性分布を考慮した入力条件と考慮しない入力条件のそれぞれ(図2)について、PFM解析を実施した。解析には日本原子力研究開発機構のPFMコードPASCAL4に破壊靭性の板厚方向分布を考慮可能な改良が施された特別版注 )を用いた。主要な13事象を考慮したRPVの破損確率は、板厚の表面近傍で高い破壊靭性が考慮されることによって、本ケースでは1オーダー程度低減し(図3)、破壊靭性の分布を考慮することの重要性が示された。

概要 (英文)

Probabilistic Fracture Mechanics (PFM) codes use fracture toughness inputs relying on existing surveillance test results, which are based on the material property at a 1/4-thickness location of an RPV wall. In fact, the possibility of through-wall toughness variation, especially high toughness in near-surface region of the actual RPV was highlighted for decades, but the variation was not considered in the input parameters of probabilistic pressurized thermal shock (PTS) evaluation. Recent developments in test techniques of the Master Curve evaluation involving 4mm-thick Mini-C(T) specimens have enabled plant-by-plant toughness evaluations. This report proposes a general procedure governing how we can determine the plant by plant through-wall toughness distribution and how we can prepare the PFM input parameter with the toughness distribution in mind. A case study with 13 selected important PTS events, with considering the through-wall toughness distribution of the decommissioned Zion Unit 1 nuclear power reactor, demonstrates that the probability of vessel failure can be reduced by around one order of magnitude by taking through-wall toughness distribution into consideration.

報告書年度

2019

発行年月

2020/03

報告者

担当氏名所属

山本 真人

材料科学研究所 構造材料領域

永井 政貴

材料科学研究所 構造材料領域

キーワード

和文英文
確率論的破壊力学 Probabilistic Fracture Mechanics
加圧熱衝撃事象 Pressurized Thermal Shock Events
マスターカーブ法 Master Curve Method
超小型C(T)試験片 Mini-C(T) Specimens
破壊靭性 Fracture Toughness
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry