電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

SE21003

タイトル(和文)

米国における送配電事業の投資動向と投資抑制策に関する考察

タイトル(英文)

Analysis of the power grid investment and non-wires alternatives in the U. S

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
わが国の送配電事業者は、再生可能エネルギーの導入に対応するための設備投資を進めながら費用の最大限の抑制が求められている。米国ではこれまで老朽化設備の更新を主な目的とする送配電投資が増加してきたが、近年は分散型エネルギー資源 (Distributed Energy Resource, DER) の普及を背景に、需要家側のDERの活用を通じて設備投資を繰延べるNon-Wires-Alternatives(NWA)が費用削減の手段の1つとして注目されている。

目  的
米国の送配電投資の動向を踏まえ、主な送配電事業者の投資と利益の関係および需要家負担の状況を把握した上で、近年のNWAへの取組みと課題について明らかにする。

主な成果
1. 米国の送配電事業者がNWAに取り組む背景
米国のカリフォルニア州およびニューヨーク州の主要な送配電事業者において、投資の増加によって固定資産に対する利益率が低下しており(図1)、家庭用需要家を中心に送配電料金単価の上昇にもつながっている(図2)。送配電事業者によるNWAの取組みには、今後も増加が予想される送配電投資を可能な限り抑制するという狙いがある。

2. 米国の送配電事業者のNWAへの取組み
NWAの実施においては、リソースとしてのDERの調達方法が送配電事業者において重要な課題となっている。例えば、表に示すように(1)DER提供検討者に対して応札価格およびプロジェクトの実効性や事業実績に関する情報を提出させて送配電事業者が総合的な観点から評価しDERを調達する方法、(2)NWAで対応しない場合の費用を予め参考情報として公表してDERを公募する方法、あるいは(3)送配電事業者がDER提供者に支払う対価(インセンティブ)を提示してDERを公募する方法などが採用されている。送配電事業者は従来型の設備投資計画の策定に加えて、NWAの経済性を評価しながら効率的に事業に取組むことが求められており、地域特性やDERの入手可能性などを考慮した費用削減のための対応が重要になってきている。

3. 米国の送配電事業者がNWAのプロジェクトで直面している課題
NWAはDERを活用しながら増大する送配電投資を抑制して、需要家負担を軽減する手段として検討する意義があるが、実際にプロジェクトに着手する過程で、既存の技術や設備では、DERが系統負荷に与える影響の計測が困難であり、実施が見送られる事例もある。この他、配電部門のNWAが送電部門の設備計画に与える影響の評価と調整、予定どおりに潮流が制御されない場合の原因解明が困難で、仮に送配電事業に損失が生じた場合にこれを補償する責任主体が不明確になる課題にも直面している。送配電事業者が、今後普及するDERを活用して費用抑制を検討する際には、これらの課題への対応も重要になる。

今後の展開
米国のDERの活用に関する制度設計が電気事業者に与える影響について考察する。

概要 (英文)

The purpose of this report is to examine the actual practices and issues of recent power grid investments in the United States, focusing on the financial burden and the customer burden.
In the U.S., investment in power grids is increasing to replace aging facilities and to expand the use of renewable energy. This report finds that in California and New York, increased investment has led to lower returns on fixed assets in the electric grid sector and higher delivery charges, especially to residential customers. To alleviate these burdens, the electric grid sector is implementing non-wire alternatives (NWAs) that utilize distributed energy resources (DERs), which are generated and managed behind the meter, to defer traditional wire investments.
Through the practice of NWA, procurement of DER has become a key issue in the power grid sector. For example, (1) DERs are solicited based on comprehensive information including the bid price and project effectiveness which are submitted by the aggregator, (2) DERs are solicited by disclosing traditional investment costs as reference information, and (3) DERs are solicited by offering purchase prices to DER providers in advance. The power grid sector needs to evaluate the cost effectiveness of NWA with consideration of various DER procurement methods.
It is expected that NWAs have potential value as a means of reducing investment. However, in actual operation, the power grid sector faces problems with existing technologies, and in some cases, NWAs are postponed. It is important to address these issues in the power grid sector in the future.

報告書年度

2021

発行年月

2022/04

報告者

担当氏名所属

澤部 まどか

社会経済研究所

服部 徹

社会経済研究所

キーワード

和文英文
米国 the United States
送配電部門 Power Grid
分散型エネルギー資源 Distributed Energy Resources
投資のスマート化 Non-Wires-Alternatives
繰延効果 Deferral Value
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry