電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

SE21004

タイトル(和文)

混雑管理に関するノーダル型市場モデルの 特徴と課題 ―ゾーン型からノーダル型市場モデルへの移行事例に基づく考察―

タイトル(英文)

The issues of reviewing of nodal scheme market model about congestion management -The Consideration based on the transition case studies from zonal to nodal scheme market model-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
電力広域的運営推進機関(OCCTO)が開催した地域内系統の混雑管理に関する勉強会では、再エネの大量導入を支援するため、先着優先ではなく、メリットオーダーに基づく混雑管理の仕組みの実現に向けた課題やその解決策における論点が抽出され、再給電からゾーン制やノーダル制といった新たな混雑管理方式の方向性が示された。ノーダル制に基づいた混雑管理方策への移行に必要な市場の仕組みや、その仕組みの変更を踏まえたノーダル型市場モデルへ至る過程を把握することは重要であるものの、具体的なノード型市場モデルへのシナリオの議論は十分になされていない。
目  的
わが国での混雑管理に関わる制度をめぐる議論に資するために、米国でのノーダル制への移行事例と欧州でのノーダル制への移行に関わる議論を踏まえつつ、ノーダル型市場モデルへの移行で留意すべき点を整理する。
主な成果
1. ノーダル制への移行期間と費用の上振れリスク踏まえた上での移行判断の必要性
米国のCalifornia Independent System Operator(CAISO)は電力危機後の市場再設計を契機として、Electric Reliability Council Of Texas(ERCOT)は価格シグナルによる供給資源の最適な誘致を理由として、それぞれノーダル制への移行が実施された。実際のノーダル型市場モデルの構築には7~8年という期間を要した。ERCOTでは複数回の延期があったこともその理由である。移行に要する費用や期間が上振れする可能性も含めて、ノーダル制への移行の判断を慎重に検討することが重要である。ERCOTでは、移行作業を中止する場合にも、すでに実施した改装を戻すなどの費用を要することが示された。ノーダル型市場モデルへの移行を開始すると、作業を中止する場合にも費用と時間を要することからも、慎重な検討が必要である。
2. 将来の不確実性を考慮した複数シナリオの検討の必要性
ノーダル型市場モデルへの移行の検討やシステム導入の期間中も流通設備と電源の構成や制度の変更が実施されるため、ノーダル制への移行の議論で実施される費用便益分析(Cost Benefit Analysis、CBA)では、将来の電源構成に関する不確実性などに十分に配慮することが重要である。また、ゾーン型市場モデルを継続する場合、流通設備の整備やゾーンの見直しでゾーン内の混雑発生に対処可能かといった、長期的な視点での分析を踏まえて、ノーダル制への移行についても適切に評価する必要がある。
3. ノーダル型市場モデルの移行範囲に関する留意点
わが国では、各一般送配電事業者の管轄ごとにノーダル制へ移行する場合や、各一般送配電事業者の管轄を超え、複数の管轄範囲を1つにまとめてノーダル制へ移行する場合など、様々な移行の過程が想定される。わが国と同様にゾーン型市場モデルを基軸とする欧州では、送電系統運用者(Transmission System Operator、TSO)の管轄範囲を変えずに、卸電力市場のみをノーダル制にする案など、ノーダル制導入の議論も緒についたところである。その場合、ゾーン型市場モデルとノーダル型市場モデルが混在する状況も想定されているが、各国で対応すべき課題や解決策は具体的に示されていない。
今後の展開
欧州でのノーダル制導入に関する議論を注視しつつ、わが国でノーダル制導入の際に再エネに対する優先給電の在り方について検討する。

概要 (英文)

Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators, Japan (OCCTO) had the technical committee about congestion management scheme with merit order in control area of Transmission System Operator (TSO) under suppressing additional investment of transmission network. In the committee, the redispatch scheme will starts in December 2022. Zonal scheme or nodal scheme market model is considered as a future option. In this report, we analyze the transition case studies from zonal to nodal scheme market model by lessons and experience from Independent System Operator (ISO)/Regional Transmission Organization (RTO), especially California ISO (CAISO) and Electric Reliability Council of Texas (ERCOT) in USA. Even when CAISO and ERCOT had been implemented nodal scheme about congestion management, they spent 7 or 8 years for introducing nodal scheme in Day-Ahead Market (DAM) and Real-Time Market (RTM). ERCOT's case study shows the potential for the increase of the transition cost and period. The unwinding cost for the implemented transition if the transition was be halted. It is important to discuss pros and cons of introducing nodal scheme. In European Network Transmission System Operator for Electricity (ENTSO-E) or UK, nodal scheme is generally considered economic efficient for congestion management. The practical issues of transition to nodal scheme market model in each country to be resolved is considering recently.

報告書年度

2021

発行年月

2022/04

報告者

担当氏名所属

古澤 健

社会経済研究所

岡田 健司

社会経済研究所

キーワード

和文英文
混雑管理 Congestion management
ノーダル型市場モデル Nodal scheme market model
ゾーン型市場モデル Zonal scheme market model
LMP Locational Marginal Price
金融的送電権 Financial Transmission Right
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry