電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

SE23001

タイトル(和文)

英国における将来の原子力発電所の廃止措置 及び廃棄物処分費用を巡る動向 -将来の不確実性への対処を中心に-

タイトル(英文)

Study on the Cost for Decommissioning and Radioactive Waste Disposal of Future Nuclear Power Plants in the United Kingdom - Focus on Preparedness for Future Uncertainties -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
原子力発電所の廃止措置及び廃棄物処分事業(以下、バックエンド事業)を円滑に遂行するためには、バックエンド事業の将来の不確実性に対する資金面での対処が求められる。英国において、2024年2月現在に建設中のHinkley Point C (HPC)を含む将来の原子力発電所(以下、将来炉)のバックエンド事業に必要な資金は、安定した収入を約束する等の事業環境整備がなされた上で、事業者自らが確保できるような制度が志向されている。そうした状況下で、バックエンド事業が有する将来の不確実性について、英国がどのような制度的枠組を構築し、それに沿って事業者がどのように対処しようとしているかを把握しておくことは、日本の今後のバックエンド事業の資金管理の検討に有益である。
目的
日本における今後のバックエンド事業の資金管理に関する検討の参考にするために、英国の将来炉のバックエンド事業の資金管理の現状を調査し、特に将来の不確実性への対処に着目して、その特徴等を明らかにする。
主な成果
1. 廃止措置資金管理プログラムの特徴
将来炉のバックエンド事業の資金については、必要な費用を事業者外部の独立した基金に確保できる見通しを示すための廃止措置基金プログラム(Funded Decommissioning Programme:FDP)を事業者が作成し、建設開始前に国務大臣から承認を得ることが求められる。FDPは、廃止措置及び廃棄物管理の費用見積を示す「廃止措置及び廃棄物管理計画」(Decommissioning and Waste Management Plan:DWMP)と、その費用をどのように確保するかの見通しを示す「資金調達計画」(Funding Arrangements Plan:FAP)の2つに分割して構成される。FDPにおいて考慮される将来の不確実性の例を図に示す。
DWMPでは、廃止措置及び廃棄物管理に関連する各工程について、「リスクと不確実性を適切に考慮した頑健な費用見積」を含むことが求められる。DWMPは、発電所全体の開発工程の中では早い段階で作成されるため、良好事例等を踏まえて、時間の経過とともに変化するものである。そうした計画の変化を反映して、DWMPに示される費用見積は、定期的に更新されることが求められる。
FAPでは、DWMPに示された費用見積を満たすのに十分な資産を蓄積するための基金について、その維持・管理等の詳細を定めるとともに、基金資産の運用等によって、基金の目標値のどの割合が各会計年度末までに蓄積されるかを示す見通しを定め、基金不足になる可能性が低いことを示さなければならない。
将来炉の使用済燃料とIntermediate Level Wasteは、廃棄物移転料金を事業者が政府に支払う契約によって、それらの所有権を国へ移転できる。政府が廃棄物処分費用の確実性を高め、将来炉への投資を促進するための制度であるが、廃棄物移転料金には相当額のリスクプレミアムが含まれる。HPCの廃棄物は早期移転(地層処分施設における想定処分日よりも前の廃棄物移転)が予定されており、事業者は、廃棄物移転料金に加えて、想定処分日までの廃棄物管理費用(リスクプレミアム込み)を政府に支払う。
2.将来の不確実性への対処の要点
(1)定期的な見直し
将来炉のDWMPとFAPは、定期的な見直しが必須(法定要件)となっている。これは、バックエンド事業が長期にわたるものであり、不確実性があることを前提として制度が設計されていることによる。費用見積の妥当性等を確認しながら、より確実性の高いものに更新するために、5年ごとに詳細かつ包括的な見直しをすることになっている。
(2)不確実性を前提とした上乗せ
DWMPでは、費用見積作成の際に、要素ごとに異なるリスクの不確実性を考慮に入れて、個別にコンティンジェンシー(将来の不確実性を考慮して、あらかじめ上乗せしておく費用部分)が設定される。DWMPで作成された費用見積は、その範囲内に収まる可能性が80%であることを示す値であり、言い換えれば、超過する可能性が20%存在する。したがって、FAPでは、超過する可能性に備えて、廃止措置及び使用済燃料管理については、総費用に対して25%のコンティンジェンシーが設定される。廃棄物移転料金のリスクプレミアムは、納税者に負担をかけないような水準(運転開始から30年後に決定される予定)に設定されることになっている。
(3)変動を想定した資金管理
不適切な運用(過度にリスクが高い投資や、事業者への利益供与が疑われる投資等)がなされないように配慮された上で、将来の費用の変動を想定した基金資産の幅広い運用(株式や不動産等への投資も含まれる)が認められている。

概要 (英文)

This report discusses the cost for decommissioning radioactive waste disposal of nuclear power plants in the United Kingdom, focusing on the preparedness for future uncertainties.
For decommissioning of the future site (including Hinkley Point C (HPC)), prior to the start of construction, the approval of "Funded Decommissioning Programme" (FDP) is required to ensure that the nuclear operator has the sufficient assets in an external, independent fund. The FDP consists of "Decommissioning and Waste Management Plan" (DWMP), which estimates the costs of decommissioning and waste management, and "Funding Arrangements Plan" (FAP), which estimates how those costs will be financed. Taking the existence of uncertainty for granted, The DWMP and FAP are to be reviewed in detail and comprehensively every five years, and the FDP is to be updated to a more certain FDP, checking the validity of cost estimates and the availability of funding as expected.
Spent fuel and Intermediate Level Waste (ILW) from future site can transfer their title to the government through the contract whereby the operator pays Waste Transfer Fee to the government. It is set out to promote investment in future site by providing certainty about the cost of waste disposal by the government, but the Waste Transfer Fee includes a risk premium to compensate the taxpayer for taking on the risk of subsequent cost escalation.

報告書年度

2023

発行年月

2024/03

報告者

担当氏名所属

稲村 智昌

社会経済研究所

キーワード

和文英文
廃止措置 Decommissioning
放射性廃棄物処分 Radioactive waste disposal
費用見積 Cost estimates
不確実性 Uncertainty
資金調達 Financing
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry