報告書番号

SE24002

タイトル（和文）

気象影響を考慮した電力需要動向把握の基礎的検討

タイトル（英文）

Basic Investigation of Electricity Demand Trends Accounting for Weather Effects

概要 （図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております）

背　　景
供給計画策定のため将来の電力需要を想定するうえで、需要の経年変化の実態を詳細に把握することは有益である。しかしながら、需要は気象の影響を強く受ける。特に最近では、気候変動の影響もあり気象条件が年々変化している。したがって、気象とそれ以外の影響を切り分けて、需要の変化を把握する必要がある。
目　　的
全国および各一般送配電事業者の供給区域で、気象が送電端電力量（需要）にもたらす影響と、気象影響を取り除いた後の需要を把握する分析基盤を構築する。
主な成果
2019年4月から2024年12月までの需要を過去30年（1991年～2020年）の平年気象条件に補正し、約6年間の気象影響以外による需要の変化を明らかにした。加えて、気温、湿度、風速、全天日射量の各気象要因が需要に与える影響を示した。
1. 分析基盤の構築
気象・カレンダーデータに基づいて、供給区域・日時別の需要を説明する重回帰モデルを構築し、需要を平年平均の気象条件に合わせて補正したうえで比較できるようにした（図1）。モデルの年度別の平均絶対パーセント誤差（学習誤差）は全国合計の需要で1%未満に収まった。
2. 気象がもたらす影響
気温の1℃上昇による夏季の冷房等での需要増加（約5%/℃）が、気温の1℃上昇による冬季の暖房等での需要減少（約－3%/℃）を上回る傾向がある（図2）。多くの供給区域で、気温、風速、全天日射量は特に夏や冬の需要に影響し、湿度は特に夏の需要に影響すると示唆された。平年平均との差と感応度の大きさを踏まえると、補正前後で需要量に最も大きな変化をもたらすのは気温である。
3. 気象補正後の電力需要の推移
曜日や時期の影響を考慮し、同時期同曜日の2019年度または前年度の需要と比較した。
(1) 年度需要の増減率
2019年度比では、多くの供給区域で需要が減少しており、平日の方が休日よりも減少幅は小さい。前年度比では、全国で2022年度と2023年度に連続して需要が減少していた（図3）ものの、九州のように減少傾向がそこまで強くない供給区域も確認された。
(2) 月別需要の増減率
全国的には、2019年度同月比では、特に端境月や夏季における需要減少が顕著である。それに対して、前年度同月比では、2022年度秋季から2023年度秋季にかけて減少が顕著な時期があった後、2024年度に入ってからは、需要が前年度とほぼ同程度の水準で推移していると明らかになった（図4）。
(3) 時刻別需要の増減率
各供給区域で時刻別需要の増減率は異なる。例えば2023年度、多くの供給区域では時間帯によらず需要が減少するものの、一部地域では昼夜の増減傾向が異なると示された（図5）。電気利用の昼間移行の傾向があらわれるかなど、今後も注視が必要である。

概要 （英文）

It is imperative to comprehend long-term electricity demand trends to ensure a balanced supply and optimized infrastructure. However, demand is significantly influenced by weather patterns, which are undergoing changes due to climate change. Consequently, it is crucial to differentiate between weather-related effects and other contributing factors. This study aims to address this critical need by estimating the impact of weather on electricity demand across Japan and developing a method to capture demand trends by removing the effects of weather.
The findings indicate that, beginning in FY2022, rising temperatures have resulted in amplified summer demand increases that have exceeded the winter demand reductions. The study indicates that temperature, wind speed, and solar radiation exert an influence on both summer and winter demand, while humidity primarily affects summer demand. Among these factors, temperature exhibited the most substantial impact for weather adjustments.
Following the implementation of weather adjustments, annual demand exhibited a decline in most regions when compared to FY2019. A decline in nationwide demand was observed in FY2022 and FY2023, with milder declines being noted in certain regions, such as Kyushu. The hourly demand trends exhibited variability across different supply regions, possibly indicating the potential influence of industrial demand changes and structural shifts. Continued demand monitoring is imperative to gain a comprehensive understanding of these phenomena.

報告者

キーワード