電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

SS25016

タイトル(和文)

直接空気回収(DAC)の技術開発とビジネスの現状

タイトル(英文)

Current Developments and Business Landscape of Direct Air Capture (DAC)

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 パリ協定や各国のネットゼロ目標により、大気中CO₂の除去技術の重要性が高まっている。中でも直接空気回収(DAC)は将来の大規模除去を担う有力技術として注目され、技術開発および事業化が進められている。電気事業においても、自社のネットゼロ達成に向けた残余排出の相殺、あるいは脱炭素電源供給者の観点からDAC事業に関与する可能性がある。

目  的
 DACに関連する世界的な技術開発および事業展開を包括的に整理し、電気事業における事業参入および脱炭素戦略検討のための基礎情報を提供することを目的とする。
主な成果
1. 技術開発の現状と課題
 DACの技術開発は各種方式を対象に進められているが、現時点では固体吸着材方式、液体吸収+カルシウムループ方式、鉱物ループ方式が商用化に最も近い技術と位置付けられる。これらの方式では、複数の企業がパイロット段階から商業規模の社会実装へと移行しつつある。
 DAC各方式に共通する課題として、処理空気量に起因する電力・熱を含むエネルギー需要が大きい点が挙げられる。また、吸着材・溶媒・膜材料等の劣化対策や長寿命化、さらには、モジュール化・大型化とそれに伴うコスト増も課題となっている。
2. DACの事業構造と具体事例
 DAC事業は、大気中からCO₂を回収し、輸送・貯留を経てクレジットを創出・販売する一連のバリューチェーンで構成される。事業を成立させるためには、まず大量のクリーン電力・熱の安定確保が不可欠である。加えて、長期的に信頼できる貯留先へのアクセスや、MRV(計測・報告・検証)に基づく厳格な除去量評価が求められる。さらに、クレジットに対する長期オフテイク契約の確保や、政策的支援の存在が事業性を支える重要な要件となる。
 DAC事業の先行企業は、クリーンエネルギーの調達、貯留アクセスの確保、公的制度・資金支援の活用といった事業展開上重要な要素に対して、それぞれ独自の戦略を有している。一方で、バリューチェーン全体にわたるアライアンス形成を通じてコスト削減や経済性の向上を図る点は、各社に共通する特徴である。
3. DACクレジットの現状と課題
 DACクレジット市場は、ネットゼロ目標を背景に拡大を続け、2024年のCDRクレジット契約量は約800万トンと前年から大幅に増加した。一方で、実際の引渡し量は約31.9万トンに留まり、契約量とのギャップが課題となっている。
 DACクレジットの供給元は先行3社が約80%を占める寡占状態で、市場拡大の制約となっている。価格は若干の低下傾向にあるものの依然として高水準に留まっており、新規購入者の参入が限定的となっている。

今後の展開
 電気事業が新たな収益源としてDAC事業に参画する選択肢は残されるが、立地条件を含め、多くの不確定要素が存在する。したがって、今後の市場動向、制度整備、主要プレイヤーの動き等を継続的に注視する。

概要 (英文)

Direct Air Capture(DAC) has emerged as a critical technology for achieving global net-zero goals, complementing emissions reduction efforts by providing durable and measurable carbon dioxide removal. This report summarize the current status of DAC technologies, their economic characteristics, business models, and supporting policy frameworks, with a focus on their relevance to future business expansion. DAC approaches include various sorbent and solvent-based systems, along with emerging electrochemical and mineralization methods, each with distinct energy requirements and maturity levels.
Commercial deployment is advancing through pioneering projects such as Climeworks, Heirloom, and 1PointFive. These projects highlight progress in modularization, storage integration, and market formation, while also revealing challenges related to cost reduction, scale-up of CO2 capture ability, and large-scale infrastructure needs.
DAC's business model centers on the scale high-quality CDR credits backed by rigorous MRV and long-term geological storage. Growing corporate demand and strong policy support are accelerating investment. However, persistently high credit prices and the gap between contracted volumes and delivered volumes are introducing uncertainty into market expansion.

報告書年度

2025

発行年月

2026/05

報告者

担当氏名所属

下田 昭郎

サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門

キーワード

和文英文
直接空気回収 Direct Air Capture (DAC)
直接空気回収・貯留 Direct Air Capture and Storage (DACS)
炭素除去 Carbon Dioxide Removal (CDR)
炭素除去クレジット CDR Credit
二酸化炭素回収 CO2 Capture
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry