電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

V08007

タイトル(和文)

環境モニタリングを目的とした抗体の開発(5) -クロム、鉛、亜鉛に特異的に結合する抗体の作製-

タイトル(英文)

Monoclonal antibodies for environmental contaminants monitoring [5] - Preparation of monoclonal antibodies directed towards chromium, lead and zinc -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

環境中のカドミウム、六価クロム、鉛などの重金属には従来から厳しい規制が設けられている。また、近年では生態系におよぼす重金属の影響も問題視されるようになり、平成15年には、水生生物保全の観点から亜鉛の環境基準が設定された。生物が持つ抗原抗体反応を利用した測定法は簡易計測技術として、様々な分野で実用化が進められているが、重金属分野では、カドミウムのみにおいて実用化に適した抗体が作製されており、他の重金属に対応する実用的な抗体は報告がなかった。
本研究で我々は、クロム、鉛、亜鉛の錯体に特異的に結合するモノクローナル抗体を作製した。クロム抗体のCr-EDTAに対する解離定数は0.6μMであった。最も高い交差反応性を示したのはFe-EDTAであり、約24%であった。還元剤によって六価クロムを三価クロムに還元し、本抗体を用いたセンサーにて測定を行ったところ、排水基準の規制値である500ppbの六価クロムが検出できることが分かった。鉛抗体のPb-DTPAに対する解離定数は0.01μMであった。0.01%以上の交差反応性を示す金属は調べた範囲では存在せず、本抗体が優れた特異性を持つことが分かった。本抗体を用いたセンサーにて鉛の測定を行ったところ、検出下限濃度は約0.6ppbであり、環境基準の規制値である10ppb以下の鉛の検出が可能であることが分かった。亜鉛抗体のZn-DTPAに対する解離定数は0.3μMであった。最も高い交差反応性を示したのはCu-DTPAであり、約21%であった。銅に対する交差反応を抑制する方法として、還元型の硫黄原子を含む分子による銅イオンのマスキング法を考案し、亜鉛と銅の混合液中で銅の影響を受けずに亜鉛の測定が出来ることを示した。本抗体を用いたセンサーにて鉛の測定を行ったところ、検出下限濃度は6.5ppbであり、環境基準の規制値である30ppb以下の鉛の検出が可能であることが分かった。

概要 (英文)

Immunoassays are remarkably quick, easily performed, reasonably portable to the contamination site. We have developed an immunochromatography for detection of cadmium using anti-Cd-EDTA monoclonal antibody. To make biosensor for other heavy metals, we prepared monoclonal antibodies directed towards chrome, lead and zinc.
The produced anti-Cr-EDTA antibody (Gb3G12) exhibited equilibrium dissociation constant (Kd) for Cr-EDTA at 6.0 x 10-7 M, which was almost 4 fold tighter than Kd for Fe-EDTA. Hexavalent chromium can be analyzed quantitatively after reduction of it. The detection limit of hexavalent chromium was 500ppb by using KinExA immunoassay system. Anti-lead antibody (Yj2H7) bound to Pb-DTPA with a Kd of 1.1 x 10-8 M. There was no DTPA complex that showed over 0.01% cross reactivity. The detection limit of hexavalent chromium was 0.6 ppb by using KinExA system. Kds for the binding of Zk23E7 antibody to Zn-DTPA and Cu-DTPA were 2.6 x 10-7 M and 1.2 x 10-6 M, respectively. Addition of DTT as a masking reagent to copper and zinc mixture, DTT could bind only copper ion, so that only zinc ion could bind to DTPA and could be detected by the antibody. The detection limit of hexavalent chromium was 6.5 ppb by using KinExA system.

報告書年度

2008

発行年月

2009/02

報告者

担当氏名所属

佐々木 和裕

環境科学研究所 バイオテクノロジー領域

俵田啓

関西電力株式会社 電力技術研究所

大村 直也

環境科学研究所 バイオテクノロジー領域

キーワード

和文英文
モノクローナル抗体 monoclonal antibody
重金属 heavy metal
簡易測定法 immunoassay
lead
六価クロム hexavalent chromium
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