電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

V19002

タイトル(和文)

化学オキソ沈殿法を用いた脱硫排水中のホウ素処理技術の検討 -模擬排水を用いたホウ素除去性能の評価-

タイトル(英文)

Boron removal from flue gas desulfurization wastewater by chemical oxo-precipitation -Evaluation of boron removal of chemical oxo-precipitation using artificial wastewater-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 石炭火力発電所では石炭中のホウ素に起因して、脱硫排水のホウ素濃度が上昇する場合がある。一部の発電所では吸着処理が導入されているものの、吸着剤が高価であることが課題となっている。また、ホウ素除去には安価な凝集剤を用いる凝集沈殿法(従来法)注 1)も適用可能であるが、処理に伴って大量の汚泥が発生するため、膨大な汚泥処理費が課題である。近年、ホウ素と過酸化水素(H2O2)およびカルシウム(Ca)の化学反応を利用する新規の凝集沈殿法(化学オキソ沈殿法注2 ))が報告されているが、脱硫排水への適用性や汚泥発生量の詳細については明らかになっていない(図1)。

目  的
 脱硫排水の主要成分を模擬した溶液(模擬排水)中のホウ素を化学オキソ沈殿法によって処理する場合の除去特性と妨害成分の影響、汚泥発生量を評価する。

主な成果
1. 模擬排水を用いた化学オキソ沈殿法のホウ素除去特性
 硫酸イオンなどを含む模擬排水を処理する場合でも、ホウ酸溶液を処理する場合と同程度のホウ素除去性能を確認した(図2)。ホウ素除去性能はpHに依存し、発電所で実施可能なpH10において、CaとH2O2の添加量が多いほど、ホウ素除去性能は高くなった。ホウ素濃度500 mg/Lの模擬排水をpH10で処理する場合、薬剤添加量を模擬排水のホウ素濃度とのモル比([Ca]/[B]および[H2O2]/[B])で1.2より多くすることで、海域の排水基準(230 mg/L)以下にできることが判明した。
2. 化学オキソ沈殿法の妨害成分の影響
 脱硫排水中に存在し、H2O2の分解を促進する触媒として作用する鉄(Fe)とマンガン(Mn)の影響を検討した。Feは50 mg/L以下では影響が小さかったが、Mnは10 mg/Lでホウ素をほとんど除去できなくなることが示された。
3.化学オキソ沈殿法と従来法との汚泥発生量の比較
 従来法と汚泥発生量を比較した結果、化学オキソ沈殿法は、汚泥発生量(乾燥重量)を従来法の5分の1以下に削減できることが示された(表1)。

今後の展開
 実排水を用いた場合のホウ素除去性能および処理コスト削減効果を評価する。また、妨害成分の影響を軽減する手法を検討する。

概要 (英文)

Low-cost technologies for the removal of boron from flue gas desulfurization wastewater are essential for environmental conservation. Chemical oxo-precipitation (COP) can directly remove boron from an aqueous solution as boron compounds. This chemical reaction has the potential to reduce the sludge and chemical dosage in chemical precipitation processes for boron removal from flue gas desulfurization wastewater. This study investigated the effect of process conditions (e.g. chemical dosage and pH) on boron removal using COP from artificial wastewater. To decrease the boron concentration from 500 mg/L to less than 230 mg/L (national effluent standards of coastal areas in Japan) by COP with calcium chloride at pH 10, the hydrogen peroxide concentration, the molar ratio of hydrogen peroxide to boron ([H2O2]/[B]), was maintained to be greater than 1.2. Boron concentration of treated water reached a constant value at the calcium concentration, the molar ratio of calcium to boron ([Ca]/[B]), greater than 1.2. Additionally, maximum boron removal was observed around pH 11.5. Although the major components in desulfurization wastewater, such as sulfate ion and chloride ion, have a small influence on the COP process, manganese significantly inhibited the process. The amount of sludge from the COP process could be reduced to less than 20% of the conventional chemical precipitation process for boron removal (aluminum sulfate + calcium salt).

報告書年度

2019

発行年月

2020/02

報告者

担当氏名所属

栗田 宗大

環境科学研究所 環境化学領域

植本 弘明

環境科学研究所 環境化学領域

キーワード

和文英文
排煙脱硫排水 Flue gas desulfurization wastewater
ホウ素 Boron
過酸化水素 Hydrogen peroxide
化学オキソ沈殿 Chemical oxo-precipitation
石炭火力発電所 Coal-fired power plant
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