電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y06007

タイトル(和文)

電力の小売全面自由化の実効性に関する検討ーメータリングシステムと需要家のスイッチングコストに伴う問題を中心としてー

タイトル(英文)

Effectiveness of Liberalizing Retail Electricity Market for Small Customers-Issues in Metering System and Customers Switching Cost-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

本報告では,電力の小売全面自由化の際,同時同量のための計量を負荷プロファイリングで代替する場合と,時間帯別メーターへ切替えた上で実施する場合の課題を整理するとともに,その経済性について分析した。同時同量のための計量を負荷プロファイリングで代替する場合,時間帯別メーターを設置する費用をかけずに競争を導入できるというメリットがある。しかしながら,推定誤差に伴うリスクを誰がどのように負担するか,という問題が生じる上,需要家にピーク需要を削減するようなインセンティブが働かないため,競争を導入しても料金の値下げの余地は限られてくる。最近では,時間帯別メーターの価格が低下してきていることもあり,海外では,時間帯別メーターを一斉に設置する動きも進んでいることも注目される。わが国で,家庭用需要家に時間帯別メーターを一斉に設置して全面自由化を実施する場合,料金の値下げによる需要家のベネフィットが費用を上回るためには,前提条件にもよるが,少なくとも年平均で約0.5%以上の値下げが10年以上続くことが必要である。時間帯別料金などの導入によってエネルギーの効率的な利用(負荷平準化)を促せるメリットはあるが,メーターを一斉に切替える費用は決して小さくはない。また,本報告では,スイッチングコスト等の存在によって,小口の需要家を対象とする市場において競争が進展しない可能性について検討した。一般に,家庭用需要家は相当の料金差がないと供給先を変更しないと推測される。これは,供給先を切替える際に生じる取引費用や心理的負担などのスイッチングコストが大きいためと考えられる。こうした傾向が続けば,需要家を他社に奪われないために料金を引き下げる必要性が薄れるため,電気料金はかえって上昇し,需要家の利益が損なわれることもあり得る。わが国の家庭用需要家が供給先を切替えるために必要な料金の値下げ率を調べた当所の意識調査結果にもとづき,全面自由化の下で,既存の電力会社が仮に利潤を最大化しようと行動した場合の経済厚生の変化を試算した。その結果,料金支払額の約10%に相当する消費者余剰が供給側に移転することが示された。

概要 (英文)

This report discusses some issues in effectiveness of introducing retail competition to small customers in Japan. In some parts of the world, every customer is allowed to choose retail electricity supplier. In so doing, a system of load profile is used to determine the generation costs associated with those individual small customers without the need to install interval meters. However, the system load profile necessarily creates problems associated with estimation errors, and it is unlikely to facilitate competition as it does not provide customers with incentive to reduce peak demand. Since the cost of interval meters has fallen in recent years, some countries, such as Italy, started to roll out those meters for all the customers. Although the benefit from retail competition and reduction in peak demand with interval meter is uncertain, our calculation for Japanese electricity market suggests that it has to be very large in order to outweigh the cost. It can also be pointed out that, because of customers switching cost, the incumbent utilities could have significant market power in residential electricity market. Our calculation based on a survey by Ariu and Goto (2006) show that it could result in reduction of 10% of consumer welfare if the incumbent utilities behave so as to maximize profit given the knowledge of customers switching cost.

報告書年度

2006

発行年月

2007/04

報告者

担当氏名所属

服部 徹

社会経済研究所 事業経営・電力政策領域

鈴木 正

システム技術研究所

キーワード

和文英文
電力小売市場 Retail Electricity Market
小口需要家 Small Customers
負荷プロファイリング Load Profiling
時間帯別メーター Interval Meters
スイッチングコスト Switching Cost
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