電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

C16010

タイトル(和文)

オフィスを対象とした執務者の便益評価手法の検討-(その2)異なる温度条件下の生理心理量と作業効率の関係 -

タイトル(英文)

Study on the method of benefit evaluation of the worker in the office environment -Part2 The relationship between the physiological-psychological responses and the work efficiency in the various thermal environment-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
省エネによるオフィスの温熱環境の変化が、疲労や作業効率に影響を及ぼすことが分かりつつあり、適切な温熱環境の調整が、疲労軽減や作業効率の向上といった執務者の便益向上に寄与すると考えられる。そこで、適切な温熱環境の調整に資するオフィスの便益評価手法の確立に向け、当所は、中温~高温側環境を対象に被験者実験を実施し、認知機能を測定することで、温熱環境が疲労時の作業効率に及ぼす影響を評価できる可能性を報告した。一方、冷房による冷えが不快感につながるとの報告もあり、低温側環境を含む作業効率の関係の分析も必要である。
目 的
異なる温度環境が疲労時の作業効率に及ぼす影響を評価する被験者実験を行い、各認知機能の温度影響の有無と、温度と生理心理量、作業効率の関係を明らかにする。
主な成果
疲労状態の47名の青年男性を、低温22℃、中低温25℃、中温28℃、高温32℃の4つの温度条件注5)に曝露し、生理心理量および作業効率を決定する主要因である認知機能を測定する被験者実験を実施した。実験では、オフィス業務に必要と考えられる4つの認知機能(「課題への適応能力(遂行機能/作業記憶機能)」、「記憶能力」、「誤った動作の抑制」、「長時間の集中力」)に着目し、課題内容をPC操作で回答させる方法をとることで、オフィス業務実態を模擬した。この結果、以下の成果を得た。
1.各認知機能の温度影響の有無
「誤った動作の抑制」と「記憶能力」に温度の影響は見られなかったが、「長時間の集中力」は、作業前半において高温ほど正答率が低い傾向にあった。一方、「課題への適応能力(遂行機能)」は、中温28℃の正答時反応速度が有意に速くなり、作業効率が高くなった。
2.温度と生理心理量および作業効率の関係
低温側条件は皮膚温の低下が見られたが、中温28℃条件は、平均皮膚温や温冷感申告が温熱中性範囲に含まれ、上記(1)の遂行機能で高い作業効率を示した。また心拍数やストレス評価指標の唾液アミラーゼ活性値が、実験後に有意に低下した。このことから、中温28℃時の生理心理量が、遂行機能の作業効率を上げたと考えられる。
以上より、認知機能の種類に応じた、疲労時の作業効率の向上に寄与する適切な温度範囲を検討できる可能性が示唆された。

概要 (英文)

The present study aimed to clarify the effect of the thermal environment on work efficiency of the fatigue condition by measuring the cognitive performance. Forty-seven Japanese healthy men participated in the experiment. Subjects were exposed to four thermal conditions (22 oC/RH50%, 25 oC/RH50%, 28 oC/RH50% and 32 oC/RH50%) at two experimental days in a climate chamber. The skin temperature, the amount of sweating, the thermal sensation, and the thermal comfort sensation were also measured as physiological and psychological responses. We examined the effects of thermal environment on working efficiency by measuring the performance of four cognitive tasks.
From the result of the cognitive performance, the task which requires sustained attention tended to be affected by high temperature. And the response time of the task which requires the adaptability to the task was significant difference among conditions, and 28oC condition had the high work efficiency at this task.
The present study suggested the possibility that it could examined the appropriate temperature range for improving the work efficiency in the fatigue condition for each type of the cognitive performance.

報告書年度

2016

発行年月

2017/07

報告者

担当氏名所属

安岡 絢子

エネルギーイノベーション創発センター 需要家サービスユニット

岩松 俊哉

エネルギーイノベーション創発センター 需要家サービスユニット

宮永 俊之

エネルギーイノベーション創発センター 需要家サービスユニット

都築 和代

豊橋技術科学大学

武田 裕司

産業技術総合研究所

キーワード

和文英文
オフィス Office
温熱環境 Thermal environment
疲労 Fatigue
生理心理量 Physiological-psychological responses
作業効率 Work efficiency
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