電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

N19005

タイトル(和文)

海塩粒子輸送シミュレーションによる塩分付着量推定に関する研究(その8)-砕波帯を起源とする飛来海塩粒子の推定手法の開発-

タイトル(英文)

Study on estimation of salt deposition with numerical simulation of sea salt particle transport (Part 8) - Development of estimation method for airborne sea salt originated from surf zone -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
広域に分布する電力設備の耐腐食設計や保守管理をより合理的に行うために,設備の主要な腐食・劣化要因の一つである飛来海塩量の空間分布を推定することは有用である.地上に飛来する海塩粒子の多くは外洋において風の作用により発生する一方で,沿岸付近に飛来する海塩粒子には,海岸線付近の浅海域(砕波帯)において水深の減少に伴い砕ける波に起因して発生する海塩粒子も少なくない.当所では,飛来海塩量を推定するための風況・海塩粒子輸送数値解析コードNuWiCC-STの開発を進めてきたが[1],これまでの計算は外洋起源の粒子のみを対象としており,地域によっては沿岸近傍での予測精度が低下する傾向が確認されている.

目 的
NuWiCC-STへ適用可能な砕波帯起源の海塩粒子濃度モデルを提案するとともに,砕波帯起源の粒子を考慮した計算の精度と,計算パラメータ(格子解像度,砕波帯幅)の持つ予測値への感度を評価する.また,得られた予測値に基づき,砕波帯起源の粒子の存在が内陸の飛来海塩量に及ぼす影響を把握する.

主な成果
1. 砕波帯起源の海塩粒子濃度モデルの開発
NuWiCC-STへ適用可能な砕波帯起源の海塩粒子濃度モデルとして,吹送距離 注1)に応じた外洋起源粒子濃度の境界層発達 注2)と砕波帯幅に応じた砕波帯起源粒子濃度の境界層発達の過程が相似となるとの仮定を基にしたモデルを提案した.砕波帯起源の粒子を考慮することにより,予測される海岸近傍の飛来海塩量は大幅に増加し,予測精度は向上した.
2. 計算パラメータの感度評価
砕波帯起源粒子の輸送特性を精度良く予測するためには,砕波帯起源粒子による海岸線近傍での濃度変化を捉え得る高い格子解像度を確保する必要があること,砕波帯幅を変化させても観測値 注3)との相関関係はほとんど変わらないことを明らかにした.
3. 砕波帯起源の粒子の存在が内陸の飛来海塩量に及ぼす影響
砕波帯起源の海塩粒子は,海岸近傍の飛来海塩量を大幅に増加させるのみならず,海岸線から5km以上離れた内陸まで到達することを把握した.

今後の展開
検証事例の蓄積を通じ,砕波帯起源の海塩粒子濃度モデルの更なる精度向上を図る.

注1)波の発達において海面上を風が吹き渡る距離.
注2)海面近傍で海塩濃度が急変する層状領域内での濃度増加・層厚さの増大等.
注3)四国電力(株)により取得された筆洗い法によるパイロットがいしへの付着海塩量データ(愛媛県大洲地区29地点,愛媛県新居浜地区14地点,設置地上高さ5~20m,1965~1998年の内の5年間の年平均値*
*Suto et al. (2017), Computational fluid dynamics simulation and statistical procedure for estimating wide-area distributions of airborne sea salt considering local ground conditions, Structure and Infrastructure Engineering, 13, 1359-1371.
関連報告書:
[1] N15007「海塩粒子輸送シミュレーションによる塩分付着量推定に関する研究(その7) -日本域を対象とした飛来海塩空間分布の評価-」(2016.02)

概要 (英文)

A model of the concentration of sea salt particles originated from the surf zone, which is applicable to the in-house simulation code NuWiCC-ST for evaluating the transport of sea salt particles, is proposed assuming the similarity between the processes through which the surf-zone- and ocean-originating particle concentrations increase with the surf-zone width and fetch, respectively. The sensitivity and validation tests reveal that (1) the consideration of the surf-produced particles can increase the simulation accuracy, (2) a fine grid resolution which can capture the variation in the concentration of the surf-produced particles near the shoreline is necessary to accurately predict the transport characteristics of the particles to inland, and (3) the surf zone width affects the absolute amount of airborne sea salt, while it hardly affects to the relative correspondence between the observed amount of the deposited sea salt and the predicted amount of the airborne sea salt. Moreover, the numerical results show that the surf-produced particles relatively increase the airborne sea salt near the coast and reach a distance of more than 5 km inland.

報告書年度

2019

発行年月

2020/02

報告者

担当氏名所属

須藤 仁

地球工学研究所 流体科学領域

木原 直人

地球工学研究所 流体科学領域

服部 康男

地球工学研究所 流体科学領域

平口 博丸

地球工学研究所

キーワード

和文英文
海塩粒子 Sea salt particle
数値流体力学 Computational fluid dynamics
統計手法 Statistical method
砕波帯 Surf zone
外洋 Open ocean
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