電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

N20002

タイトル(和文)

送電設備の巡視支援を目的とした土砂災害発生可能性の評価法の提案

タイトル(英文)

Proposal of an evaluation method of landslide risk for the purpose of supporting a patrol for power transmission equipment

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
降雨による土砂崩壊は架空送電設備における気象災害の主原因の一つである。大雨時に、鉄塔基礎周辺にて発生する土砂崩壊を早期に発見するため、電力各社の保安員が徒歩やヘリコプターによる予防(保安)巡視を行う。容易にアクセスできない山岳部で発生する災害を的確に評価できれば、巡視範囲を絞り込むために有益な情報となる。短時間大雨などの時々刻々変化する雨の降り方に対して土砂災害の発生可能性の現状把握・将来予測をリアルタイムで行うには、土砂崩壊に係わる降雨量や地理情報のデータをもとに危険度指標を簡易に評価できる方法を構築する必要がある。

目的
架空送電設備の巡視支援を目的とした土砂災害発生可能性の簡易評価法を提案する。

主な成果
1.土砂災害発生の要因分析
国土数値情報「土砂災害・雪崩メッシュデータ」(5kmメッシュ)にある2006~2009年度に発生した4228件の災害事例に対して災害の発生要因を分析した結果、降雨量について半減期1.5時間・半減期72時間の両実効雨量(R1.5、R72)と災害発生との間に関連性が見られた。一方、分析した傾斜度の影響は土地利用区分に応じて異なるため、災害発生可能性の評価には土地利用区分と傾斜度の両方を勘案する必要がある。
2.土砂災害発生可能性の簡易評価法の提案
実効雨量と傾斜度をもとに算出される土砂災害発生ポテンシャルを用いた評価法を提案した。土地利用区分の影響は、評価式中の各係数を区分別に同定することで考慮される。また、上記災害事例の約3割はR1.5が20mm以下、R72が200mm以下で発生しており、これらの場合に各係数を別途定めることで、少雨量時の見逃しを低減させた。その結果、指標値が高まると災害が発生しやすくなる傾向がいずれの土地利用区分に対しても見られ、指標値の大小で災害発生可能性を全国規模で簡易に評価できる。
3.本評価法の適用可能性
顕著な土砂災害事例に対して本評価法を適用した結果、土砂災害発生箇所と土砂災害発生ポテンシャルが高い地域の対応がよいことを確認した。発生ポテンシャルが閾値を上回る地域を参照することで、巡視活動の合理化を図れる見込みが得られた。

今後の展開
発生箇所・時刻が確かな土砂災害事例を対象に本評価法の適用性を評価し、評価法を改良するとともに、巡視支援情報を提供するためのシステム化を図る。

概要 (英文)

Heavy rainfall increases the risk of sediment-related disasters. Staffs in each power company, working to keep the safety of overhead power transmission equipment, patrol areas with possible risk by walk or by using helicopter. The present report proposes a simple method to evaluate the potential of landslide hazard. We discuss the relationship between trigger and inherent factors and the occurrence of disasters. Effective rainfall of 1.5-hour half-life and effective rainfall of 72-hour half-life are used as trigger factors. Inherent factors include land-use category and the degree of terrain slope. The analysis suggests that the sensitivity of effective rainfall indices changes as the pattern of land use. Both of inherent factors considered in this report can be useful for the evaluation of the landslide risk. Such a suggestion motivates us to use an empirical equation that uses the three trigger and inherent factors as dependent variables. The equation, of which parameters are identified for each land use category on a regression basis, estimates the degree of landslide risk at every location. The results of case studies for previous significant events indicate the potential of the method to grasp possible dangerous areas easily.

報告書年度

2020

発行年月

2020/10

報告者

担当氏名所属

野村 光春

地球工学研究所 流体科学領域

杉本 聡一郎

地球工学研究所 流体科学領域

キーワード

和文英文
土砂災害 Sediment damage
巡視支援 Patrol support
実効雨量 Effective rainfall
送電設備 Power transmission equipment
大雨 Heavy rainfall
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry